日本は温帯なのかと君は問うシンガポールはココよりマシと
「スミマセン、この電車、大阪城行きますか?」"excuse me, is this train going forward to Osaka castle?" と前から歩いてきた女性2人組に突然声をかけられた。しかも英語で。こんな場面は今までもあった、何故か妻と一緒にいる場面で外国人によく声をかけられる。多分安全なヒトと思われるのだろう。その度に僕はボディランゲージを駆使するハメに陥る。今回も「またか」と思いつつ、「はい、このホームから電車に乗って大阪城公園の駅で降りてください、そうすれば大阪城に行けます」と身ぶり手ぶりで単語を並べた。なんとか通じたようだ。ちょうど電車が来たので、ほっとして妻と一緒に乗り込む。心配なので横目で彼女らを追って、電車に乗り込むのを確認した。僕と妻も実は大阪城見物の目的だったので、妻もチラチラ彼女達をみていた。やがて大阪城公園駅につく。「ここ、ここ」と彼女らにも声をかけて下車した。どかっと多くの観光客と一緒に僕たちは吐き出された。外は真夏の太陽だ。
「あつ〜」「博多より暑い〜」と博多育ちの妻でさえ大阪の暑さにはまいっているようだ。なぜかわからないが大阪は暑い。僕は東京育ちなのでさらに耐性がない。そんな会話をしながら大阪城を巡っているうちに彼女らとは離れ離れになった。大勢の観光客に彼女らも紛れてしまったようだ。
しばらくして大阪城内の見物を終え、僕は妻が休憩場所を探している間にアイスクリンを買いに屋台に歩いていた。先ほどの彼女2名もアイスクリンの店にいた。何となく会釈したら笑顔が返ってきた。まあこんなもんだろう。
「ハロー」と声をかけて最後尾の彼女たちの後ろに並んだ。「どこから来たのですか?」と何となく聞いてみた。「シンガポール」何だか予想外だった、てっきり韓国か台湾かと思っていた。何だかシンガポールと聞くと賢そうなヒトたちに見える。たしかかなり前に1人あたり国民総生産は日本を超えた豊かな国だ。そこに妻が行列に加わった。英文科出の妻は僕より流暢に彼女らと会話している様子だ。
「シンガポールは大阪よりちょっと涼しい」と彼女2人が多少遠慮がちに妻に笑顔で話していた。a little bit cooler than here と何となく僕にも聞こえた。そうか、気候の話は万国共通なんだな、と思ったりして。
「ちょっとちょっと、あんたらこっちの木陰入り、涼しいで〜。」と聞こえたので声の主を探すと、見知らぬ「おっちゃん」が木陰で手招きしてくれていた。大阪はフレンドリーな人が多い、だから日本中から愛されている。そもそも声掛けからして超フレンドリーだ。こんな親切な?人好きのおっちゃんは大阪にしかいない。僕たちは、暑さをしのごうとその木陰に歩いた。おっちゃんはちゃんと僕らのスペースを開けて待っていてくた。
「どこから来はったん?」
「博多です」
「ん?関東か思うたわ。」
「よく言われますわ」
めんどくさいので博多にした。シンガポールの彼女らは大学生のようだ。異国の学生と博多の中年夫婦と大阪ネイティヴのおっちゃん、しばらく木陰の下で守られていた。木陰の力は凄い。その涼しさを名残り惜しみながらも自然に僕らはそこで解散した。それぞれの帰るべき場所があるのだ。
大阪の暑さと彼女の
Singapore is a little bit cooler than here, Osaka. という言葉だけを残して。
多分 a little bitというのは彼女達の遠慮なんだろうと思う。アジアの温帯の中でも大阪の夏は特別なんだろうと僕は今でも確信している。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。