第4話 問題定義 二
視点は主人公、ヒロインになります。
AM???? ビカラ神社にて。
私は、急ぎ着替えてビカラ神社を出る。
ココは古刻市の中で一番長い階段のある神社なんだけどそれを人力で上り下りするわけじゃない。
楽に登れる方法もある。
ケーブルカーがあるんですよ。
有料だけどね、ズルいとかいわないでほしい。
毎日あの階段を通学のために通うなんてできません。
もちろん、健康にはいいだろうし、体も丈夫になるだろうけど・・・
汗でベタベタの状態で朝から授業受けようなんてキツイ。
無責任にオカシイ、ズルいなんていう人は自分がその立場に立って考えてほしい所です。
どうです?
想像したらイヤでしょ。
それに私、若い女の子なんですよ。
匂いとかも気にするんです。
気合いとかで何とかしたくもないんです。
たしかに昔はこの神社のふもとに家族用の家があったんだ。
神主とその関係者は、階段の掃除も兼ねて上り下りはしていたらしいよ。
流石に今は神社で生活はしてないけど、職場は山の上になるの。
神社の仕事だけしていても生活できないからケーブルカーとつけたのよ。
でもこれが意外と好評で年配者、足の悪い人、妊婦さんとかが使ってくれます。
そうなると今度は、階段の掃除を誰がするかという話になる。
それは、近くの学校の運動部がやってくれることになった。
トレーニングで階段を使うからだそうだ。
まあ脳筋どもがやってくれるんだからいいか、なんて小さい頃は思ってた。
でも夕方にはうるさいんだよね、脳筋どもの気合いが。
大声出せばなんでも済むと思っている。
近所迷惑もいい所だよ。
ううん、違うか。近所どころか、我が家の敷地内だよ住居不法侵入だよ迷惑防止条例違反だよ。
騒音妨害だよ、最早犯罪そのものだよ。
なんて言えないところがつらい。
掃除してもらってるからね、特に面倒な所を・
でも今の時代は、根性論なんてナンセンスだよ。
オリンピックやプロになるわけじゃないんだから。
なんてぼやいてる場合じゃない。
好意でしてくれてるので文句を言わないで感謝しないといけないのよね。
話しがそれたけど、早くいかないと
遅刻してしまう、それは流石に嫌だ。
悪目立ちしてしまう、ただでさえ神社の子で目立つんだから。
これ以上はイヤだ、ゆっくり買い物も遊びもできやしない。
だから刻印の儀もボイコットしたかったんだ。
できなかったけど・・・聞いてはいたよ強制力のこと。
刻印者を選ばなかったり、見つけられなかったりするとその候補者が引き寄せられるということだ。
聞いてはいたけど、自分の番でまさか本当にそんなことが都合よく起きるなんて思わないじゃない。
起きちゃった・・・けど。
なんて考えながら学校に足早に向かう。
学校では【彼】を見つけて捕まえないといけない。
イヤでも何でも私は導き手になったんだ、何も知らない人を巻き込んだ以上何もしないなんて選択肢はないでしょ。
何か、彼に悪いことしたような気になるし・・・
AM8:00 学校にて
で、学校に着いたんだけど・・・何で?
同じクラスにいるから簡単につかまる思ったんだよ。
私だってそのくらいの打算はあったんだよ。
別クラスなら面倒なことになりやすいけど、同じクラスにいるんだよ。
話しかけるくらい簡単だと思えたんだよ。
クラスメートとして気さくになのにそれが出来ない。
彼は休憩時間になると、どこかに行ってしまうし、
かといって授業になると勉強しないと自分の成績ではえらいことになってしまう。
とにかく、捕まえないと必死になればなるほどつかまらない。
最大のチャンスの昼休みでさえつかまらない。
彼の行きそうな所なんて見当もつかない。
元々興味のない人だったし、それほど仲がいいわけでもない。
ホント、何処に言ってんだよアイツ。
もうほっておこうかしら、こっちが必死になっているのに向こうはそんなこと知らずに
ひょうひょうとしているし、一人で空回りしている自分がバカみたいじゃない。
事実何も知らないから仕方ないんだけど。
焦りと苛立ちでもう諦めようかとも思ったが大事なことなのでそうもいかない。
探して、うろついて、捕まらなくて、時間が来る。
話しかけて説明する、これだけのことが出来ないまま、どんどん時間が過ぎていく。
このまま、何も言わずに済ませてもいいんじゃないかな、何て思う。
無理して説明する必要もないだろうし、何向きになってんのかわかんない。
なんて言い訳じみたことを考えている自分が嫌になる。
まるで逃げるための言い訳ばかり考えて、誤魔化しているようで罪悪感が湧き出る。
そうこうしている間にどんどん時間は過ぎていく。
そして、放課後となった。
彼がパソコン部に入っていることは、今までの追跡(?)で手に入れた情報にあったので
今度こそ捕まえてみせると気合いを入れ直し部室に向う。
そして、そこには何やらパソコンの前で神妙な顔をしたマコトの姿があった。
普段は空気の抜けた風船のように緊張感の欠片もないに
今、見ている彼の姿は真剣な表情で少し怖く感じる。
誰かが言ったけ、真剣な表情は、かっこよくも怖くも見えるって
それは受け取る側がその人をどう見るかで変わるものだって。
じゃあ、私は彼にどう思っているのだろうと考えながらパソコン部のとびらを開く。
パソコン部の中に入ると誰も私のことにも目も向けず
ひたすら、パソコンに向かっている。
わりと不気味だなと思いながら彼の元に・・・久野マコト君のそばまで歩みよる。
「久野 マコト君。私、安村ミコです。
お話があります。少しお時間をいただけませんか」
とマコト君に話しかける。
マコト君は素知らぬ顔で何やらキーボードをたたき続ける。
そして、隣のプリンタが音を立て始めると
「どこで、話すの」
と振り向きもせずマコト君が聞き返す。
振り向きもしないでなんて失礼な奴、と思いながらも必死で堪え
「できれば今から図書室でいいかな」
と自分の内の平常心を総動員して答えると
「OK。プリントが終わったら行くから先に言っておいて」
と振りむきもせず淡々と行動しながら答える。
まるで相手にもしていない様に
何、人の顔も見ないで失礼な、と思いつつ
それをぐっと抑えて
「わかった。待ってるね」
と言うと部屋を出た。
少し気になったので部室を覗き込むと
マコト君は何もなかったかのように他の部員たちと一緒にパソコンと向き合っていた。
アイツ来る気あるのかな、返事だけってことはないよね。
と気にしてしまった。
それにしても部外者の出入りに無関心過ぎないだろうか。
ホント変な人達と思いながらその場を後にした。
PM3:30 図書室にて
図書室には図書委員が二、三名いる程度でがらんとしていた。
まあ、図書室というよりも図書館と言うべきかもしれない。
学校の図書館は比較的大きく、町の図書館として兼用しているのでその呼び方も正しい。
大学とかが博物館を兼用しているところもあるらしいから珍しいことではないらしい。
ただ学校から図書館に入るためには学生証とIDカードが必要になっており、
さらに二部屋を跨がないといけないのが面倒なんだけどね。
これも図書館から学校に不審者が入らないようにするための用心だから仕方がない。
セキュリティが割と万全である。
ココの管理は役所が行っており、警察巡回所でもある。
なので安易な学生のたまり場になりにくい所でもある。
更にここは二階建てあり、会議室も完備されていて企業とかも会議に使われることの多い所である。
その図書館の一階フリースぺースの一つに私は座ると机にほうづえをついて
窓の外をボケっと見つめる。
私、何やってんだろって改めて考える。
確かに≪刻印の儀≫について説明しないといけないのだけれど
それを説明してもあまり意味なんじゃないかな、なのに何でこんなにムキになってんだろ、私。
と自問自答し始めた。
周りに聞こえるわけでもないし問題はないだろうけど。
だって、今回の≪神事≫に参加しないつもりだったし・・・。
と、誰かに攻められているわけでもないのに言い訳を考えていると
そこにマコト君が鞄を持って現れた。
表情は読み取りにくいけどすました顔をしている。
待たせてるんだから慌てるとかしなさいよ、と心の中で悪態をついてみる。
まあ、ただの自己満なんだけど
それはさておき、やっと説明が出来る。
何か、責任を果たせるから安心感に満たされるような気がするけど・・・
なんかおかしくない?
私の目的と行動がずれてるような気がするけど・・・
気の所為かな?神事に参加したくないのに、真面目に行動してる?
分かっているけどさ、巻き込んだ手前。
何も知らない彼に迷惑が掛かるのは違うと思うけど・・・
ああもう、どうでもいい。
まず、巻き込んだ責任を取る。
それが終わってから後の事を考える!もうこれでいい。
何か考えすぎてパニクッてきた。
もう問題を順番に片付けていく。
そうしないと何かまとまらない、そうしよう。
むしろ、そうするべきだよ。
アンティーククロック~復讐を目指す非常識現実生活~ 団栗山 玄狐 @5049
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