間話:ラッキーガール

 私は何をするにも運が良かった。

 今日は雨がいいと思えばほとんど雨になるし、ソシャゲのガチャでも単発で限定キャラが出た。推しのライブチケットも当たり、テストの記号問題を勘で解いた時も合っていることが多かった。

 受験勉強も他の人に比べるとあまりしていなかったのに、獅子高校に入学することができた。多分記号問題のおかげ。

 ここまで運がいいけど、世界は私中心に回っていると思ったことがなかった。

 そんな勘違いをして痛い目に遭いたくなかったから。

 

「ラッキー!アイス当たり〜」


「今年で何本目だよ」


「ん〜、20本ぐらい?」


「俺なんて当たりとか引いたことないわ」


「俺もだわ、こんなにもアイスを愛しているってのに」


「アイスを愛s…」


 こいつらは私の友達の三人、私含めて四天王。そして私は四天王の中で最強。

 最初のレクリエーションで気が合って学校ではこの三人とつるむことが多い。

 私以外全員男子だけど、逆ハーレム主人公としてイキったことはなかった。下僕として扱うことはあるけどね…あれ。


 私は小さい頃から恋愛というものを経験してみたかった。小学校、中学校に上がるにつれてその思いは強くなっていった。

 けど、運命に人なんて現れたことがなかった。イケメンとは思っても一目惚れしたことはなかった。そんな尻軽じゃありません。

 獅子高校を選んだのは、なんとなくだけど何かが変わると思ったから。制服もイケてるし、偏差値もそこそこ。本当は家から近いってだけだけど、確実に何かが変わる、何かを変えようと思った。

 受験当日、私の両隣の席は男子だった。ふつーの男子。

 そして後ろの席はヤンキーだった。多分、金髪だし。

 前の席には女子がいた。いい体をしていたよ、むふ。

 が、特にイベントは起こらなかった。試験も順調ではなかったけど、記号問題が多くて助かった。


「君、リュックのチャック全開だけど」


「えっ!?」


 途端に私のリュックの中から持ち物が全部落ちた。持ち込み禁止だった飴ちゃんも落ちてしまった。

 初めてではないけど、受験が終わって一安心している時にアンラッキーなことが起こるとはとてもついていなかった。

 でも、アンラッキーではなかった、むしろラッキー。

 教えてくれた男子が飴に気付き、何も言わずに一個奪った。


「あ、それ」


「コラボ限定の包装紙だったからつい」


 これが、宇尾火月との出会いだった。


「つい、じゃないでしょ!吐き出せおら!」


「や、包装紙ここだし!飴の味は全部一緒だろ!」


「そういう問題じゃないんだって!」


「お、落ち着けって!」


 正直、コラボしているVtuberグループ『じゃぴーす』を知っている人がいるとは思ってなかった。まだ、マイナーなグループだし。

 それよりも、初対面でここまで言い合ったことはなかった。自分の中で何かが変わった気がしたが、気のせいだと思った。

 この直後は特に何もなく、春休みも特にやることがなく、ただただ高校生活が始まることを待っていた。


「この獅子高校に入学した第27期の新入生の皆さん、おめでとうございます」


 入学式当日。校長のありがた〜い長時間のお話も終わり、クラス発表されている紙を見に行った。でも、知っている名前があまりなかった。これ以上見ても意味ないと思い、早めに教室に向かった。


「あ、君」


「あ、飴泥棒」


 隣の席は飴泥棒だった。最初の感想は最悪、これに限る。

 それから一週間、火月、八重原、瀬戸馬と意気投合。四天王を築き上げた。もう一度説明するけど、最強は私。私は最強。

 四天王の中でも特に火月と会話することが多かった。彼だけを名前で呼んでいるのも二人と区別がしたいから。

 この時からなのか、私は段々彼に惹かれていっていた。一目惚れじゃない、ゆっくりと。

 そして現在。


「は?なんで頼が居るんだよ」


「あ、やっほ」


 こうなった理由は私が原因だ。

 帰宅途中、公園に寄っていた。理由はなんとなく。

 そこで、とあるショt…男の子に出会った。名前は知らないけど。


「お姉ちゃん、このボタン押したらね、自分の願いが可能な限り実現するんだよ!しかもね!二つ!」


「へぇ〜、それはいいね?」


「試しに押してみてよ!あ、でもちょっと待って?」


「ん?何かな」


「願い事は叶うかもしれないけど、みんなここの記憶は持ったままなんだ。記憶を持っていない人は新しい人たち!だから色々気をつけてね?じゃあ願いをこめながら押してみて!」


「どーいうこと?ちょっとお姉ちゃん怖いなぁ…」


「いいからいいから、お姉ちゃんならきっと叶うよ!」


「まぁ、いっか。ん、じゃあポチッと…」


 その瞬間強い何かに襲われた。でも、すぐに立ち直った。


「え、何ここ」


 全く知らない家に居た。


「初めまして、泉道頼様。私は執事のディオと申します」


「ひっ」


 普通に怖かった。知らないジェントルマンがいるんだ。


「頼様、手配が完了致しました」


「て、手配?」


「はい、火月様を連れてきますね」

 

「火月?え?」


 その名前を聞いた瞬間もしかして、と思った。


「ここは火月様の家ですので、連れてきますね」


「火月はもっと、あ、少しボロボロのアパートに」


「頼様、あなたがした願い事は?」


「私がした願い事は…はい、お願いします」


「では、連れて来ますね」


「あの、サポートしてくれるんですか?」


「もちろん、真のご主人様、頼様の執事でございますから」


 そう言って部屋から出て行った。

 私がした願い事の二つ。

 一つは、現実だけど違う世界で生活してみたい、というもの。

 そして、もう一つは…。


「火月と関係を進めること…」


 これがいい事かどうかは分からない。

 けど、これも運命だと思う。

 私はラッキーガールだ。

———————————————————————————

間違っている箇所等あれば教えてください。

感想お待ちしております!

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

俺のいつも通りはどこいった! 上下点 @ocamelaz5

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画