桃髪のホムンクルス

「あ……」


「……ぐ、偶然ね! 偶然よ、私が言うのだもの。忘れた訳じゃないでしょ? 私は嗅覚に優れたホムンクルス。訓練された犬をも凌ぐ嗅覚を駆使すれば、あなたの居場所なんて手に取るようにわかるの」


「じゃあ何で驚いてるのかって? お、驚いてないわよ! ただちょっと、心の準備が出来てなかっただけで――な、何でもない! はいこれ!」


「これは何、って……プレゼントよプレゼント! 今日はクリスマスなのよ?! 喜びに震え、感涙に咽び泣きなさい!」


「え、プレゼントなのはわかってる? 中身が知りたい? さ、さっさと開ければいいじゃない! ほら、早く開けなさいよ!」


「石鹸。ボディーソープ。シャンプー。リンス。その他香水の類よ。男だから意味がない、なんて事はないわ。鋭敏な嗅覚を持つ私だからこそ言える事だけど、相手を不快にさせる臭いって言うのは存在する。怒らせたくない相手、不快にさせたくない相手、不機嫌にしたくない相手にそう言った臭いを嗅がせないエチケットは必要だと思うの。そのためのセットよ」


「同時に、好印象を与えたい相手にとっていい匂いでいたいと思うのは当然の事。だからこの私が、あの外道から貰った嗅覚で選んであげたの。相手に不快感を与えない、心地の良い匂いがする石鹸らで体、髪、顔を洗い、香水を纏って現れるのよ? いい?」


「え、今の自分は臭いのか? ……そ、そんな事、ないわ。あんたはあんたで、何と言うか、落ち着く臭いがするって言うか……あんただからこそ落ち着くって言うか……」


「と、とにかく! これからちゃんとそれで体を洗って! 清潔を保ちなさい! 誰にでも好かれるあんたでいなさい! あんたはこの私が認めた、たった一人のつがいなんだからね!」

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