第六章 頻繁な会話
その日の放課後、拓真と結衣はいつものように隣の席で言葉を交わしていた。結衣は、ノートに落書きをしながらふと顔を上げた。
「拓真くん、最近よく話すけど、全然飽きないね。不思議。」結衣がくすっと笑いながら言った。
「僕も。結衣さんと話してると、時間があっという間に過ぎちゃう。」拓真は少し照れながら答えた。
「ねえ、これって運命の隣席なのかな?隣にならなかったら、こんなに話してなかったかもね。」結衣が冗談交じりに言うと、拓真は少しドキリとしながらも、「そうかもね。なんだかんだで、すごくラッキーだったな。」と答えた。
二人の会話は、日々の授業のことや、面白いエピソード、将来の夢など、どんどん広がっていった。特に、放課後の時間は二人にとって特別だった。教室に残る静かな時間、誰にも邪魔されずに言葉を交わすその空間が、二人の絆を深めていった。
「そういえば、今度の日曜日、特に予定ないんだけど、また一緒にどこか行かない?」拓真が思い切って提案した。
「いいね!どこ行く?前に言ってた映画、まだ見てないでしょ?」結衣がすぐに乗り気になった。
「じゃあ、映画館でどうかな?その後でどこかでお茶とかできたらいいな。」拓真が少し緊張しながら言うと、結衣は笑顔で頷いた。
「それ、最高!楽しみにしてるね。」結衣の返事に、拓真は心の中で大きく息をついた。
頻繁に交わされる会話の中で、二人の間には自然と安心感が生まれていた。それは友情だけでなく、何かもっと特別なものへと変わり始めていることを、二人とも少しずつ感じていた。拓真にとって、この次の日曜日は新たな一歩を踏み出す機会になるだろうという期待が膨らんでいた。
日曜日の約束が近づくにつれて、放課後の時間に拓真と結衣の会話はますます深まっていった。その日の放課後も、教室には二人だけが残っていた。
「拓真くんって、小さい頃はどんな子だったの?」結衣が興味深そうに尋ねた。
拓真は少し考えてから、「うーん、どちらかというと、ずっと本を読んでる静かな子だったかな。外で遊ぶより、家で何か作ったりする方が好きだった。」と答えた。
「へえ、なんか今の拓真くんっぽいね。でも、昔はもっと活発そうなイメージだったかも。」結衣が微笑みながら言った。
「それは結衣さんの影響かもしれない。小学校の頃、よく誘ってくれて外で遊んだよね。」拓真は懐かしそうに笑った。
「そうだったっけ?じゃあ、私が今の拓真くんを少しだけ変えたのかもね。」結衣が冗談めかして言うと、二人は一緒に笑った。
その後、話題は家族のことへと移った。
「結衣さんの家族って、どんな感じなの?」拓真が聞いた。
「うちはね、家族みんな明るいよ。特にお母さんが、いつも家の中心って感じで。休みの日にはみんなでハイキングに行くことが多いかな。」結衣が楽しそうに話す。
「いいね。それ、なんだか温かい家庭って感じがする。」拓真は少し羨ましそうに答えた。
「拓真くんの家族は?」結衣が逆に尋ねる。
「うちは普通かな。僕は一人っ子だから、家ではわりと静かだよ。でも両親は優しくて、何でも相談できる感じ。」拓真が穏やかに語った。
「それも素敵だね。一人っ子って、なんか憧れるかも。」結衣が真剣に言うと、拓真は少し照れくさそうに「そうかな?」と返した。
このように、お互いの家族や背景について話し合う中で、二人はさらに深く相手を知ることができた。結衣の何気ない優しさや親しみやすさに触れるたびに、拓真の心は温かくなり、彼女への思いがますます強まっていった。
この日、教室を後にする頃には、二人の間には以前よりも確かな信頼と絆が築かれていることを、互いに感じていた。そして、その感情が次の日曜日の約束へとつながっていくのだった。
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