第四章 恋愛感情の芽生え
図書館での勉強会から数日後の放課後、拓真は教室で一人で数学の課題をしていた。すると、結衣が近づいてきた。
「拓真くん、今日も数学やってるの?さすがだね。」結衣が軽く声をかけた。
拓真は顔を上げて微笑んだ。「うん、ちょっと苦手なところがあったから復習してるんだ。結衣さんは?」
「私は、ただ話しに来ただけ。邪魔じゃないよね?」結衣が少し恥ずかしそうに聞いた。
「全然!むしろ嬉しいよ。一緒に話そう。」拓真が椅子を少し引いて、隣に座るよう促した。
二人は勉強の話から好きな音楽、最近見た面白い動画まで、どんどん話題が広がっていった。その中で、拓真は結衣の無邪気な笑顔や、些細な話でも真剣に聞いてくれる姿勢にますます心を惹かれていくのを感じた。
「結衣さん、いつも明るいよね。それに、周りのことをよく見てる。すごいなって思うよ。」拓真が少し照れながら言った。
結衣は驚いたように目を丸くして、「そんなことないよ。私、ただ普通にしてるだけ。拓真くんがそう思ってくれるのは嬉しいけどね。」と笑顔で答えた。
その笑顔を見た瞬間、拓真の胸が高鳴った。「これが、好きって気持ちなのかな。」と心の中で思った。今までただの友達だと思っていた結衣への感情が、少しずつ特別なものへと変わり始めていることに気づいた。
その日の帰り道、拓真は一人で歩きながら自問した。「結衣さんのことを、僕はどう思っているんだろう?」風が優しく頬を撫でる中で、彼の心にはっきりとした答えが浮かびつつあった。
それは、恋という名の新しい感情の芽生えだった。
翌朝、教室に入ると、結衣がすでに席に座っていて、窓の外をぼんやりと眺めていた。春の柔らかな陽光が彼女の髪に反射して、どこか神秘的な雰囲気を漂わせていた。
「おはよう、結衣さん。」拓真は少し緊張しながら声をかけた。
「おはよう、拓真くん!」結衣が明るく振り返り、その笑顔に、拓真の胸はまたドキッとした。
授業中、ふと横を見ると、結衣が真剣な表情でノートを取っている。その横顔を見つめるうちに、拓真の心の中で彼女への思いが膨らんでいった。結衣の一つひとつの仕草や、話すときの声のトーンまでが、どれも特別に思えて仕方なかった。
昼休みには、結衣が彼の席に来て声をかけた。「ねえ、拓真くん。今日の英語の課題、少し難しくない?」
「うん、たしかに。でも、一緒に考えればきっと解けるよ。」拓真は自然と答え、二人で英語のプリントを広げた。
「拓真くん、すごい!こうやって考えればよかったんだね。」結衣が嬉しそうに微笑むと、拓真は少し照れながら「いや、結衣さんだってもう少しで解けそうだったよ。」と返した。
その小さなやり取りの中でも、拓真の心は揺れ動いていた。結衣の笑顔、声、仕草、すべてが自分の心を捉えて離さない。放課後、友人から「お前、最近桜井さんとよく話してるよな。」と軽くからかわれたとき、拓真はふと自分の気持ちを再確認した。
「そうかもしれない。いや、そうだ。僕は結衣さんが好きなんだ。」
その夜、拓真はベッドの中で、結衣と過ごした何気ない瞬間を思い出していた。彼女の笑顔や声が頭に浮かび、心が温かくなるのを感じた。
結衣への憧れは、もう後戻りできないほど強くなっていた。それは、彼にとって初めての、本当に特別な感情だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます