第三章 共同勉強の提案

 学校の一週間が終わり、金曜日の放課後、結衣は拓真に向かって意気揚々と話しかけた。


「拓真くん、明日の午後、時間ある? ちょっと提案があるんだけど。」結衣が期待に満ちた声で言った。


 拓真は興味津々で応じた。「うん、予定はないよ。どんな提案?」


「図書館で一緒に勉強しない? 私、次の数学のテスト、ちょっと不安で。拓真くん、数学得意だよね? 助けてもらえたら嬉しいな。」結衣が少し照れくさそうに言った。


 拓真はすぐに快諾した。「もちろん、喜んで! 結衣さんが困ってるなら、僕が全力でサポートするよ。」


「ありがとう! それじゃあ、明日の午後2時に図書館の入り口で待ち合わせしようか。」結衣が嬉しそうに提案をまとめた。


「了解だよ。それに、勉強の後で、もし時間があったら、お互いの好きな本についても話せたらいいね。」拓真が提案を追加し、結衣はそれに心から同意した。


 この提案は二人にとってただの勉強会以上の意味を持ち始めていた。それは、お互いの関係を深め、さらに多くの共通の趣味を探る機会でもあった。このような小さな一歩が、二人の友情に新たな章を刻む予感を与えていた。


 翌日、約束の時間になると、拓真と結衣は図書館の入り口で互いに笑顔で挨拶した。


「こんにちは、拓真くん。待たせてない?」結衣が元気よく尋ねた。


「いや、ちょうど来たところだよ。」拓真が返答し、二人は一緒に図書館の中へと入っていった。


 彼らは静かな勉強エリアに席を選び、数学の勉強を始めた。拓真は結衣の質問に丁寧に答え、難しい問題でもわかりやすく説明を加えた。


「この式の変形、すごくわかりやすい!拓真くん、本当にありがとう。」結衣が感謝の言葉を述べながら、拓真の説明にうなずいた。


 勉強の合間に、二人はお互いの好きな本について話を始めた。結衣が最近読んだ小説から、拓真が興味を持っている歴史書まで、様々なジャンルの話題で盛り上がった。


「ねえ、この本、結衣さんにも気に入ってもらえると思うよ。ファンタジーで、冒険がたくさんあるんだ。」拓真が一冊の本を取り出して結衣に見せた。


「おお、面白そう!次はこれ借りてみるね。」結衣が興味深げに本を眺めた。


時間が経つにつれ、二人は勉強だけでなく、お互いの人生についても深く知ることができた。結衣が家族との関係や自分の夢について語ると、拓真も自分の未来の希望について話し始めた。


「結衣さん、今日は本当に楽しかった。また一緒に勉強したいな。」勉強会が終わる頃、拓真が笑顔で言った。


「私も、拓真くん。ありがとう。次回は私が数学を教える番かな?」結衣が冗談を言いながら笑った。


 この日の図書館での時間は、二人にとって単なる勉強会ではなく、互いにとって大切な人としての絆を深める機会となった。それぞれの夢や希望を共有することで、彼らの関係はより強固なものへと変わり始めていた。

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