ネオン・ファイター

第2話 クロウの影

クロウの姿が闇に溶け込むように消えた後、レイは深呼吸を一つし、視線をサラ・ミノルに戻した。彼女の存在は、レイの心に暗い波紋を広げていた。サラはかつてレイの師であり、最も信頼していた友人だったが、今は復讐の象徴であり、「ブラックドラゴン」の首魁。

「お前の目的は何だ、サラ。」レイは静かに尋ねた。

「この都市を支配すること。そして、それを可能にするテクノロジー。」サラは冷たく笑った。「クロウはその一端に過ぎない。もっと大きなゲームが動いているんだよ、レイ。」

レイは彼女の言葉を反芻しながら、サイバネティック・アイを通して辺りをスキャンする。サラがここにいるということは、何か重要なことが進行中だということだ。彼は情報を求め、アキラに連絡を取った。

「サラが現れた。彼女の動きを追ってくれ。」

アキラの返事は即座だった。「分かった。彼女のデータを追跡中だ。だが、レイ、お前も気をつけて。ブラックドラゴンは今、都市の主要システムを乗っ取ろうとしているらしい。」

レイは頷き、サラから視線を外さずに、再び彼女に問うた。「そのゲームに参加する気はない。だが、クロウを追うなら、俺を止められないだろう。」

「そうか。それなら、次に会う時は、もっと面白い形で会おうじゃないか。」サラはそう言い残し、闇の中に消えた。

レイはその場を離れ、アキラの隠れ家に戻ることを決めた。情報は力だ。戦うためには、敵の全てを知る必要がある。

アキラの部屋に着くと、そこはいつも通り、電子機器とサーバーの海だった。アキラはディスプレイに集中し、指を高速に動かしている。

「サラの動きが掴めた。彼女は今、都市のセキュリティシステムにアクセスする準備を進めている。おそらく、次の標的は水道や電力供給だ。」アキラは報告した。

「それを止める方法は？」レイが尋ねる。

「簡単じゃないが、俺たちならできる。ひとまず、彼女が狙っているセキュリティノードの場所を突き止めた。これを守る必要がある。」アキラは地図を指し示した。

レイはその情報を頭に叩き込み、武器と装備を再確認する。時間との勝負だ。セキュリティノードはネオンシティの中心部にあり、そこへ向かうにはいくつもの障害を乗り越えなければならない。

「行くぞ、アキラ。お前のサポートが必要だ。」

「了解。俺はここからサポートする。気をつけて、レイ。」

レイは地下鉄に乗り、セキュリティノードのあるビルへ向かった。夜のネオンシティはいつにも増して危険に満ちていた。ギャング団や賞金稼ぎたちが街をうろつき、レイはその一挙手一投足に警戒を怠らない。

ビルに着くと、そこには既に戦闘の気配があった。クロウが再び現れたのだ。レイはサイバネティック・アイで彼の動きを解析しながら、迅速に距離を詰める。

「また来たか、レイ・キサラギ。だが、今度はそう簡単にはいかないぞ。」クロウは自信に満ちた声で言い放つ。

戦闘は一瞬で始まった。クロウのサイバネティック強化された体は、レイの予想を超える速度と力で攻撃を繰り広げる。彼の左ミドルキックが風切り音を立ててレイの腹部を狙うが、レイはそれを見切る。サイバネティック・アイがクロウの身体の動きを詳細に解析し、攻撃の軌道を予見する。

レイはここで古来の達人が作った武術、ウエイブを駆使する。肩甲骨を回転させ、体内のエネルギーを波のように伝播させる。クロウの左ミドルキックをかわしつつ、その波動を利用し、クロウの足を捕らえる。そして、相手の体勢が崩れた瞬間、ウエイブの力でクロウを投げ飛ばす。

クロウは即座に立ち上がり、今度はボクシングのジャブとフックの組み合わせでレイを圧迫する。しかし、レイはもう一つの古来の武術、影武流合気体術を活用し、クロウの拳を迎えながら、相手の力を自分の力に変換する。クロウの右ジャブを迎えると、レイは鎧通しを使い、クロウの防御を一瞬で貫き、相手の体勢を崩す。クロウが驚きから攻撃のリズムを乱すと、レイはその隙を突き、クロウを引き寄せたまま、鎧通しを再度繰り出し、クロウの動きを完全に封じる。

だが、クロウは再び立ち上がり、レイに突進する。この時、レイは電磁パルス・グレネードを取り出し、投げる。爆発と共に、周囲の電子機器が機能停止し、クロウのサイバネティック強化も一時的に無効化される。レイはその隙を逃さず、クロウを一撃で倒す。

「お前の未来はここで終わる。」レイは言い放ち、クロウが起き上がる前に、ウエイブのエネルギーを集中させるため肩甲骨を激しく動かし、エネルギーを一気に解放。強烈な右ストレートを放つ。その一撃はクロウの防御を貫き、彼を完全に戦闘不能にする。

その時、レイの耳元でアキラの声が響いた。「レイ、ビル内でサラの信号が動いている。彼女はセキュリティノードを狙っているんだ。急げ！」

レイはクロウと一時的に距離を取り、ビル内へと駆け込んだ。内部は暗く、警備システムが作動している。レイはサイバネティック・アイで敵の位置を特定しながら進む。

そして、彼はサラを見つけた。彼女はセキュリティノードの前に立ち、何かを操作していた。

「お前のゲームはここで終わりだ、サラ。」レイは言い放ち、ファミコンをとりあげた　

サラは冷笑を浮かべ、レイに向き直った。「そうか？それなら、私も本気で行くとしよう。」

二人は瞬時に距離を詰め、戦闘が始まった。レイのサイバネティック・アイがサラの動きを解析し、彼女の攻撃を防ぐ。ウエイブと影武流合気体術を組み合わせ、レイはサラの攻撃を流しつつ、自分の攻撃を効果的に当てる。サラが強力なパンチを繰り出すと、レイは鎧通しを利用し、サラの防御を打ち破り、攻撃の流れを変える。

最終的に、レイはサラを追い詰めるが、彼女は逃げる手段を持っていた。セキュリティノードを守ることはできたが、サラの全てを知るには至らなかった。

「続きは次だな、レイ・キサラギ。」サラはそう言い残し、闇に身を隠した。

レイはその場で息を整え、再びアキラに連絡を取った。「サラを止めた。だが、これは始まりに過ぎない。」

「分かってる。次のステップを考えよう。今日の勝利は大きいが、まだ長い戦いが続く。」アキラの声は確かなものだった。

レイはビルを出て、再びネオンシティの夜明けを迎えた。今日の戦闘は終わったが、彼の戦いはまだ始まったばかりだった。