第5話 いざ、攻撃
初級魔術の特訓を開始して半年が過ぎた。
やはり攻撃、防御、回復の魔法よりは難易度が低いのだろう。半年で「基本初級魔術 その他」は一通りマスターすることが出来た。次は攻撃を習得することを目標とした。
目指すのはさらなる高みだ。
まずは攻撃魔法からだが、室内で試すのは危険すぎる。練習場所を求め、外へ出ることにした。
しかし、まだ俺は一人で村の外には行ったことがない。毎日の日課である祠への参拝も三人で行っている。
ばあちゃんはたまに一人で散歩に出かけることがあった。俺はばあちゃんに、どこか広い場所はないか聞いてみた。
「そうだねぇ、広い場所か。なら、いつもの道の反対に行くと開けた場所があるの。そこで練習するといいわよ。」
へぇーそんな場所があるのか。
反対方向には行ったことないな。
まぁ、そんなに遠くはないだろう。
「気をつけて行くんだよ。この辺りには魔物は出ないけど、暗くなる前にちゃんと帰って来なさい。」
分かったと言って、魔術書を片手に教えてもらった場所へと向かった。
言われたとおり、祠へと続く道へ来た。これを反対の方向に進む。しばらく歩いていたら開けた場所に辿り着いた。
ここがばあちゃんの言ってた場所か。
なかなかいい所じゃないか?
誰もいなさそうだし。
そこはピンク色の花の咲く花畑と小さい池があった。周りは木々で囲まれていて静かな空間だった。そこだけぽっかりと穴が空いているようだった。太陽を遮るものがなく、明るかった。
練習場所にはちょうどいい広さだった。まるで秘密基地を見つけた時のようなワクワク感が胸を満たしていた。
さて、次の魔法を試してみますか。
まずは攻撃からいくか。
魔術書に書かれていた水属性攻撃から試してみた。
木に向かって片手を突き出す。全身から掌へ生命エネルギーが集まるように、水の球を作り出し、それを木に当たるイメージで……詠唱する。
「水の精霊イシュリアよ、透明なる水晶を創り出し、その輝きを波紋と共に解き放て。アクアボール!」
他の魔法と同様、暖かい感触が触れる。しかし、他の魔法と明らかに違い、暖かい感触の後に続いて冷たい感触が触れた。掌の先にブクブクと小さい水の塊が出てきた。その水の塊が徐々に大きくなり、手の大きさぐらいになった。水の塊はどんどん大きくなり、顔の大きさくらいになった。
「やば!大きすぎる!」
思わず声を上げた。水の塊を制御出来なかった。
咄嗟に弾けろと念じた。
バンッ!
水の塊は勢いよく弾け飛び、俺の体は勢いで後ろに倒れた。全身は水でびしょ濡れになり、手はジンジンと痛む。見ると赤くなっていた。血は出てない。
「くっそー……!」
思わず悔しさが込み上げた。
「さっきのは水の大きさをイメージしていなかったな。それに、魔力量の調整もいるのかも。」
俺はその場で胡座をかき、近くに転がっていた木の棒を手に取ると、地面にイメージ図を書いた。
「まず、水の球の大きさはこのくらい……いや、手のひらに収まるくらいがいいな。それから、魔力を溜めすぎず、丁度いい量で……。」
頭の中で失敗を反芻しながら、作りたい水の球の形やサイズ、魔力の流れ方をひとつひとつ確認していく。自分がイメージする「理想のアクアボール」の輪郭が少しずつはっきりしていく感覚があった。
「よし、次だ。」
俺は立ち上がり地面に描いた図を見つめて呼吸を整える。全身から生命エネルギーを集める感覚を掴み、掌に集中させていく。そして、イメージした理想の形を思い浮かべながら、再び詠唱を唱えた。
「水の精霊イシュリアよ、透明なる水晶を創り出し、その輝きを波紋と共に解き放て! アクアボール!」
暖かさと冷たさが手のひらに再び広がる。今度は、生命エネルギーが溢れすぎないように意識を集中させた。すると、掌の中に小さな水の球が静かに形成され始める。
「……!」
今度は理想通りのサイズだ。水の球はゆっくりと安定した形を保っている。
「成功か……?」
次の瞬間、ふと手が緩み、球がふわりと形を崩した。そのまま水滴となって掌を濡らす。
「くっ……惜しい!」
完全な成功ではなかったが、さっきよりも確実に手応えを感じる結果だった。完全な成功ではなかったが、確実に手応えを感じた。少しずつ近づいている気がする。
「もう1回だ……今度こそ。」
今までの感覚を思い出しながら再度イメージを練り直す。
水の球の形と大きさ――ちょうど手のひらに収まる程度。生命エネルギーは過剰にならず、けれども力強く。狙いを定め、木に向かってそれを放つ瞬間を頭の中で繰り返し思い浮かべた。
深呼吸をして集中を高める。次こそは、絶対に成功させる。
「水の精霊イシュリアよ、透明なる水晶を創り出し、その輝きを波紋と共に解き放て! アクアボール!」
掌に暖かい感触、続いて冷たさがじわりと広がる。徐々に、水の塊が形を成していく。
イメージ通りの球体が、手のひらにしっかりと浮かんでいる。今回は形も安定しているし、大きさも狙い通り。
木を目標に定めて集中力を高める。そして、自分の手がその球を放つ動きをイメージした。水の球が木に向かってまっすぐ飛び、その表面にぶつかって弾ける――その光景を、頭の中で何度も描く。
「行け――!」
水の球が勢いよく飛び出した。一直線に木へ向かい、バシャッという音を立てて見事に命中する。水しぶきが四方に飛び散り、木の表面が濡れて輝いて見えた。
「よっしゃぁ……!」
思わず両手を突き上げる。初めての成功に、心の中が喜びで満たされる感覚があった。
「これが……攻撃魔法!」
胸の高鳴りを抑えきれず、笑みがこぼれた。この調子なら、次の魔法もきっとマスターできるはずだ。
水の球を作る際の細かな感覚や手応えはしっかり覚えた。これを反復すれば、もっと自在に操れるようになるだろう。
「よし、次は精度をもっと高めてみよう。」
俺は新しい挑戦の準備に取り掛かりながら、自分の成長を実感していた――。
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