ホワイトでレッドなクリスマス

赤城ハル

赤に赤を足して紅になる

 ドアが錆びていて開けるのに抵抗があった。そのため私はムカついて、蹴りでドアを吹き飛ばした。

 強く蹴ったせいか、オンボロの倉庫全体が強く揺れた。

 外から私の体温を一気に奪うような冷たい夜風が入り込む。

「寒いと思ったら雪が降ってる」

 しかも積もってる。一面雪景色。

 東京ではホワイトクリスマスなんて滅多にないと聞くけど、今日はホワイトクリスマスのようだ。

 まっさらな雪を私はヒールで踏んでいく。

 ふと白いキャンパスには紅が映えるのではと思い、私は倉庫内に戻る。そして死体をいくつかドアぐちまで置く。

 そしてまっさらなキャンパスに死体から抜き取った臓物を投げる。

 赤い腸が空に伸びる。そして雪の上に情けなく落ちた。

 ぶくぶくした胃を投げ捨てる。ご飯に添える梅干しのようになった。

 頭を投げる。腕を投げる。脚を投げる。

 胴体を木に向かって投げる。枝に深く突き刺さり、腰から流れる血が枝を伝い、幹へ流れて赤く染める。

 別の死体から腕を切り取り、限界まで雑巾搾りをする。血がボタボタとバケツに貯まる。そのバケツを大きく弧を描くように投げ飛ばす。宙に飛ばされたバケツはクルクルと回り、血が飛び跳ねる。バケツは落ちて、雪を赤く染める。

 それから子供みたいに私は無邪気に手足を投げる。

 赤に赤が混ざり紅となる。

 そして雪景色が紅に埋め尽くされた。

 これ以上は殺風景だ。そう感じて、私は手を止める。

 私はスマホで写真を撮る。

 そして知り合いのスマホに送る。

 するとすぐにメッセージがきた。

『レッドクリスマスね』

 私は『ホワイトクリスマスだよ』と返信する。

『帰りにクリスマスケーキ買ってきて。あとチキンも』

『この時間だとコンビニだけど』

『それでいい』

『待って、服が血で赤い。コンビニには行けない』

『サンタコスと言えば?』

『絶対無理』

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ホワイトでレッドなクリスマス 赤城ハル @akagi-haru

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画