第5話 キスの相性は大事だと思う

 静花しずかの家からの帰りがけ、スマホを見ると茉莉まりからの連絡が来ていた。

 話したいことがあるらしい。


 オレも話したいので部屋に来てくれと頼む。

 茉莉まりから、オレの部屋で待ってるねと返事がきた。


 

  ※ ※ ※



 オレが自分の部屋に入ると茉莉まりローテーブルに向かって座っていた。

 服装はスウェットの上下で、いたって見慣れた茉莉まりの部屋着だ。


 オレが茉莉まりの反対側に座ると、彼女が話しはじめる。

「すごく言いにくいんだけどさ。

 その子と付き合うのに反対するわけじゃないんだけど……、気をつけた方がいいと思う」


「どういうこと?」

「アタシの友達に、その子と同じ中学の子がいるの。

 そうしたら静花しずかって子は、中学の頃からいろんな男の子とあやしいらしいんだよね。

 それも真面目な男の子に気を持たせたりするクセがあるらしいの」


「ありがとう。

 それさ、オレも今日はじめて相手から聞いた」

「そうか……。

 先に教えてあげられなくてごめんね」

 茉莉まりは本当に申し訳なさそうにしている。

「いや茉莉まりが気にすることじゃないって」



「それで、その子とはどうするの?」

「付き合うのやめた」


「そうなるよねえ……」


「今日、彼女とキスしてさ」

「そうなんだ」

 茉莉まりはちょっと悲しそうに返事する。


「それで付き合うのやめることに決めた」


「どういうこと?」

「このあいだの茉莉まりのキスと違いすぎた」


「その子が下手だったの?」

「いや相手のキスはすごく上手いと思う。

 でもオレにとって茉莉まりのキスの方がもっと良かった。

 全然よかった」


「そういう問題?」

「多分、そういう問題。

 あの子とキスしてたら、他の男のこと考えちゃってダメだった。

 付き合うの無理」

「そうかぁ。

 まぁ良かった……かな」



「それでもう一度、茉莉まりとキスしたい」

「え」


「もう一度キスして確かめてみたい」

「え、何を」


 茉莉まりに強引にキスする。

 唇はやわらかくあったかい。

 お互いの舌を舐め合い、この間よりも濃厚なキスをする。


 

  ※ ※ ※



 茉莉まりが上気した顔で恥ずかしそうにオレをにらむ。

「もう、びっくりするじゃない!」

「やっぱり茉莉まりの方がいい」

「キスの練習って、そんなに何度もするものじゃないでしょ!」

「練習じゃないよ」

「え?」

「付き合おうよオレたち」

「でも部活とかあるし」

「隣同士なんだから忙しくても大丈夫だよ。

 オレは茉莉まりのこと好きだよ」

 茉莉まりがさらに顔を赤くする。

「もう!

 つとむのくせにカッコ良すぎる」

 そして俺たちは練習じゃない本気のキスをした。



FIN



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はじめての彼女ができたので幼馴染の女の子とキスの練習をすることになりました 丘野雅治 @okanomasaharu

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