第3話 アタシだって…… (茉莉's side)

 アタシは部活を終えてから家に帰り、自分の部屋でのんびりしていた。


 部活は一応、10月で引退したことになっている。

 でも、大学でバレーを続ける。

 冬休みには大学の練習にも呼ばれている。

 だから、自主練みたいな形で部活に参加したり、自分で体を動かしたりしている。

 中学で始めたバレーボールとさらに4年ほど付き合うことになる。


 

  ※ ※ ※



 はじめは、特別にバレーボールに思い入れがあったわけじゃない。

 小学生の頃から背が高くて、中学ではバレー部とバスケ部から誘われた。

 バスケ部の方が練習がきついって噂を聞いて、バレー部の方にしただけ。


 でも、次第にバレー部は、アタシにとって非常にありがたいものになっていった。

 高校の受験では、県内のバレーボール強豪校の1つがセレクションに声をかけてくれて合格できた。

 全国にも数年に1度は出てる高校で、偏差値もそこそこ。

 アタシたちの世代には全国には出れなかったけど、大学からもセレクションの声をかけてもらえた。

 その大学は、バレーボール部があまり強いわけではないけれど、一般的な知名度や偏差値は高い。


 元から勉強は、好きでもなくて不得意だ。

 学力だけなら高校も大学も、もっと偏差値が低い学校に通うのが当たり前。

 つとむと同レベルの大学なんて、無理に決まってる。

 体格からいっても技術からいっても、プロなんて無理なのもわかっている。

 でも、大学からの就職にも、運動部は強いらしい。


 運動部の練習が楽なわけじゃない。

 でも、苦手な勉強を嫌々やるよりも、スポーツできつい方が百万倍いい。


 運動部以外の子が楽しそうにしてるのを見て、うらやましいこともある。

 でも運動部がなければ、そもそもアタシは、学校に入れてもらえない。


 怪我だけは困るので、怪我をせず続けてこられて感謝してる。

 あと家族からの協力にも感謝してる。


 

  ※ ※ ※



 ただ、部活を続けてて、ひとつだけ残念なのはつとむのこと。

 本音をいえば付き合いたいけど、部活と両立するのは無理。

 まわりには彼氏がいる友達もいるけど、アタシには部活だけで精一杯。

 だから無理。

 高校や大学へ入学させてもらえてるのに、ないがしろになんてできない。

 つとむにとっても、毎日ゆっくり会えない彼女なんて嬉しくないはず。

 彼氏より大事なものがある子なんて、彼女にしても楽しくないと思う。

 だから、つとむの彼女はアタシじゃなくていい。


 アタシが自分の気持ちに気づいたのは、いつかな。

 多分、中学生、中3の頃。

 それまでは、部活が楽しくて、家族も仲よくて、それでいいじゃんて思ってた。

 違う高校に通うんだなあって考えてて、つとむのことが好きなことに気づいた。

 でも付き合うのは無理。

 部活続けていたら、つとむにとって中途半端な彼女になっちゃう。

 部活辞めたら、つとむにとって釣り合わない彼女になっちゃう。

 だから、つとむとの関係はただの幼馴染でいい。


 アタシとつとむの関係は、中学でも高校でも、部活の休止期間中だけつとむの部屋で勉強教えてもらう関係。

 その間だけ勝手に、彼女気分でいる。

 つとむが彼女作るなら、応援しなきゃねって思う。

 アタシにとって幸運にも、つとむはオタクの道に進んでた。

 高校で、何人か気になった子がいたみたいだけど、付き合う関係にならないでいた。


 でも3年の2学期になって、仲良くなれそうな子がいるって教えてくれた。

 相手はつとむにお似合いらしい。

 勉強が不得意で読書が苦手なアタシより、つとむにあっていると思う。

 物静かでおとなしいその子は、つとむにお似合いの彼女になると思う。

 だからやっぱりアタシは、ただの幼馴染でいい。


 でも、やっぱり気になるから、やってみたいことがある。

 その子のSNS見てて、出身の中学がわかった。

 うちの部にも、その中学からの子がいるから、つとむの彼女がどんな子なのか聞いてみるつもり。

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