勇者と聖女の召喚に巻き込まれた品質管理のおっさんなんだが
工程能力1.33
第1話 勇者と聖女の召喚に巻き込まれた
【前書き】
正月休み前のくそ忙しい時に思いついた話を書いてみました。
【本編】
俺の名前は鈴木有人(すずきあると)。因みに35歳独身だ。
日本の地方都市、具体的には北関東の飛行機が展示してある自動車メーカーのプラントのすぐ近くに住むしがないサラリーマンだった。なお、自動車部品を作る会社の品質管理課に所属している。
それが何でこの中世ヨーロッパみたいな剣と魔法のファンタジー世界にいるのかというと、勇者と聖女の召喚の儀式に巻き込まれたからだ。
ネット小説でよく見る展開なので、そういうものは知ってはいたが、まさか現実に起こるとは思ってもみなかった。
しかも、勇者や聖女ではなく、巻き込まれたとか。
目の前で召喚の儀式を取り仕切っていたらしき爺さんが色々と説明をしてくれていたので、ある程度自分の置かれた状況がわかってきたところだ。
まず、この国はナカツという王国。
魔王と戦っているが、形勢不利な状況なので、それを打開しようと勇者と聖女を召喚した。召喚したけど帰る方法は知らない。
こんなところだ。
そして、鑑定をしたところ、俺と一緒に召喚された若い男が【勇者】で、若い女が【聖女】。ついでに召喚された俺が【巻き込まれた品質管理】というわけだ。
ここまでが今の状況。
若い男がハイテンションで自己紹介をする。外見がチャラいのでこういう奴は苦手なんだよな。
「俺が勇者とかエモい。俺の名前は本田和(ほんだかず)。19歳大学生だ。いや、ここで大学生っていってもわからねーか」
エモいってなんだよ。おっさんには意味が分からんぞ。そう思ってジト目で勇者を見ていると、今度は女の方が自己紹介をした。彼女は西欧風な顔をしており、ハーフのように見える。
「私は豊田ソアラ。19歳で大学生。聖女って言われてもどうしたらいいのかわからない」
戸惑いを見せるソアラ。まあそうだよなあと思う。
次は俺かと思ったら、爺さん――まあこの国の魔法使いのトップなんだが――から
「小僧はもう出てっていいぞ」
と言われた。
「小僧ってなんだよ?俺はそんな歳じゃないぞ」
そう言い返すと、和とソアラが怪訝な顔でこちらを見た。
「何だよ。35歳がそんなに子供に見えるのか?」
そう言うと二人は驚きを見せる。
「35?どう見ても中学生にしか見えないんだけど」
「そうだぜ。鯖を読むにしてももう少し現実味のある年齢にしておけよ。キャバ嬢だってもう少し遠慮した嘘をつくぜ」
19歳でキャバ嬢という単語が会話に出てくるあたり、俺はこいつとは一生分かり合えないと思った。うん。
しかし、中学生に見えるとはどういうことだろうか?
気が付くと作業着が少し緩い。そして、自分の手を見ると瑞々しい。おや?
「鏡はあるかな?」
「ないぞ」
爺さんはきっぱりと否定した。まあなんとなくだが、若返ったような気はする。たぶんそれで正解だろう。理屈はよくわからんが、異世界召喚などという理不尽があるのだから、若返りくらいあってもいいだろう。
そんなことより、場違いな俺はすぐにでもここを立ち去ろうと思った。
魔王との戦いで窮地という割には、国王は太っていて国が疲弊している感じはない。ついでに悪人面だ。隷属の魔法でも使われたらたまったものではない。
「あ、自分手違いで召喚されたみたいなんで、出ていきます」
「うむ」
爺さんは頷いた。そして、この国で流通しているという銀貨を10枚手渡された。価値がわからないので多いのか少ないのかわからないが、兎に角この場から遠ざかるのを優先するため、質問することは諦めた。
城を出たところで気が付いたのだが、言葉が普通に通じるし、文字も読むことが出来る。そこに不自由はない。
去り際に召喚者は自分のステータスを見ることが出来ると言われたのでそれを試すことにした。
「ステータスオープン」
名前:アルト・スズキ
年齢:15
職業:巻き込まれた品質管理
レベル:1
体力:50
魔力:200
攻撃力:33
防御力:51
スキル:測定、不良にまつわるエトセトラ、現場を支えているネットストア
目の前に出現したウィンドウにそう表示された。
通行人はこちらを見ていないので、たぶん俺だけに見えているのだろう。
それにしても、スキルの不良にまつわるエトセトラってなんだよ。昼でも夜でも不良で客から私と会社の携帯電話がリンリンリンってなりそうだな。
それと、ネットストア的な何かがあるのは助かる。きっと日本で買えるものが同じく買えるはずだ。あとは、ここからなるべく遠くに行ってから確認しよう。
【後書き】
オマージュです!
勇者と聖女の召喚に巻き込まれた品質管理のおっさんなんだが 工程能力1.33 @takizawa6121
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