第4話 同盟



「ケイくん」


「あ、キョウヤさん。大変なことになったなぁ」


「ホンマやでぇ。いきなり戦え言われてもなぁ」


「でも、あの黒幕の言ってる事は嘘ではなさそうっすね」


「そうだね。直感だけど、アレには逆らわない方がいいだろう」


ケイも同意する。

ケイに限らずだが、声を聞いただけで怖気が走ったのだ。

姿を見た日には気絶するのではないかと思ってしまうほどだ。


「相談なんだが、この4人で『同盟』を組まないか?」


『同盟』は植え付けられた知識の中に詳しくあった。

メリットもあるが、デメリットも無視できない。

微妙にデメリットが大きいように見えるのがいやらしい。

しかし。


「俺は賛成っす。

確かにデメリットは痛いけど、最初のスタートを頑張らないとしんどいと思っす」


「私も賛成や。

ダンジョンマスター間で味方が出来ると考えればデメリットなんて怖ないわ」


「僕も賛成。でも同盟ってどうやって組むの?」


「これじゃないか?ステータスを横にスクロールすると出てくる」


キョウヤがステータスを指して言う。

どうやらステータスはスクロール出来たようだ。

右にスクロールするとスマホの画面のように変化し、その中には確かに同盟と書かれたアイコンが浮かんでいる。


「私から招待を送った。届いているか?」


ステータスを見ると別のアイコン光ってる。

ケイはアイコンをタップ。どうやらメールに近い機能を持っているらしく、見慣れた画面が広がった。

差出人の欄にはキョウヤの名前があり、件名は同盟と書かれていた。


「来てるよー」


「来てるで〜」


「届いてるっす!」


「全員、届いてるようだな。

次に決めるのは追加のメリット、デメリットだが」


「要らんのちゃう?基本だけで十分や」


「俺もそう思うっす。あまり冒険しすぎるのは危ないっすから」


「だね。もし追加が必要になっても、恐らくDPを払うだけだと思うし」


「では基本で。これで同盟は締結された」


キョウヤがそう言うと、各々の体の一部が光った。

キョウヤは右手の甲が。

小太郎は顔が。


セリナは胸の辺りが。

そしてケイも顔が光っている。

どうやら顔が光っている二人はとても眩しいらしく、某ジブリ作品の大佐の様に顔を手で覆っている。


「「目が!目がー!!」」


「これは……紋様か?リコリスに似ているが」


「やねぇ。ほら仲良しお二人さん、大丈夫かいな?」


「やばいっす。まだ目の前が真っ白っすよ」


「同じく……あ、晴れてきた」


二人は突然の目潰しから復活し、目をしばしばして回復を図っている。

意図せずギャグをかました二人。それをみたキョウヤとセリナは残っていた恐怖が飛んでいってしまった。

そんなファインプレーな二人を見て苦笑し、気づいた。


「小太郎くん、目が……!」


「こらまた……小太郎くんが好きそうやなぁ」


「え、どうなってるんすか!?」


ケイもやっと慣れた目で小太郎を見る。

そこには右目に紋様を宿した、まさに厨二病の鏡の様な小太郎がいた。

明らかに狙っているとしか思えない場所への出現であった。


「ふふっ……か、鏡があったら良かったね。

キョウヤさんの手にある紋様が君の右目に宿ってる」


「マジすか!?めっちゃかっこいいじゃないですか!!」


それは無いでしょ。とケイは思う。

きっと2、3年後には悶えてるよ。とも。

キョウヤもどこか微妙な表情をしている。

もしかすると二人も過去に似たような過去があったのかもしれない。


「でもケイくんはどこにも紋様が出てないね」


「見えへんとこにあるんちゃう?顔が光ってたから、前髪の下とか」


とセリナが言うのでケイは前髪を上げてみた。


「どう?ある?」


「あらへんなぁ」


「っすね」


「ふむ……では耳の裏は?」


ええ、そんなマニアックな。と思ったケイ。

しかし耳の裏と言う自分で確認出来ない場所であるため、髪を上げて見せた。


「どうやら違うようだね」


「僕と同じように目とか?」


「やめて?」


在りし日を思い出して若干食い気味で否定するケイ。

もし瞳に宿っていたとしたら、一生瞳に光を当てない生活をしそうだ。


「それやったら一目見たら分かるからなぁ……あ、見つけた」


「え、どこ!?どこにあったの?」


「舌」


「え」


「舌」


「……え」


「舌の上」


思わぬ場所に固まる一同。

一番最初に再起動したのは小太郎だった。


「マジすか。ケイさんちょっと舌出してみてください」


もしかしたら見間違いの可能性も……?と言う希望を抱くケイ。

ほら存分に確認したまえよ。と言わんばかりに舌を突き出す。

果たして結果は。


「あるね」


「あるっすね」


「何故だあぁぁ!!!!」


本当に舌にあったようだ。

舌に紋様は本当に一部の悪役キャラにしか付かないイメージがある。

それも割と色物キャラで。

そんなあまりの仕打ちにケイが綺麗に膝から崩れ落ちる。


「まぁなんだ。普段は見えないんだし、気にしない方がいいんじゃないかな?」


「……そうだね。気にしない方向でいこう。

それより、Classを決めよう」


見事なまでの切り替えの速さである。

他の3人も苦笑をしながらも突っ込まない。

素晴らしい間柄だ。


「っすね。すごい量の選択肢があるっすから慎重に決めないとっすね」


「せやねぇ。出来るだけダンジョンにシナジーがあるClassにせんと」


「難しいね……ケイくん、小太郎くん。二人はこれに似た状況に心当たりは?」


「ゲームでの初期設定が一番近いっすよね?」


「そうだね。もしゲームなら無難に強いって言われてる職業とかスキルを取るんだけど………

それは無理だしね。そう言う場合はセリナさんと同じ様にシナジーを考えるべきだ」


「と言うことは、ダンジョンとシナジーがあるClassを選ぶべきと言うことか」


まぁそれが一番無難だよね。とケイは思う。

けど、多分それだけだとダメだとも思っていた。


「待って。確かにダンジョンとシナジーがあるClassも大事だと思うけど、それと同じくらい別のシナジーも大事だと思う」


別のシナジー、つまりステータスにあるCharacteristicsやRace、Skillとのシナジーだ。

日本語訳にしたら特徴、人種、スキルになる。

其々が何を表しているのかは不明だが、Skillに合わせた職業にすると言うのはゲームでも一般的だ。


「(ラノベでもスキルとシナジーがある職業とか、まさにチートだったしね)」


そのことをケイは3人に話す。


「言い分は分かる。しかし問題はその三つの欄が空白な事だ。

これではシナジーあるClassを探す以前で躓く」


「そこはあの神様的存在にどうにかしてもらうしかないね」


「え、それって大丈夫なんすか?何か逆らったらやばそうっすよ?」


「逆らうわけじゃないから大丈夫……だと思いたいね。

一応勝算はあるんだ」


「へぇ、聞かせてほしいわぁ」


以下がケイの語った内容だ。


まず、僕が勝算があると思った理由は質問タイムが終わった後。

面白い質問なら答えるって言ったからだね。

あ、僕が質問する内容が面白いって言ってるわけじゃないよ?


僕が言いたいのは、あの神様的存在は僕たちを対等、まではいかなくとも対話が出来る程度には認識してくれてるんだよ。

あ、セリナさん分かる?これがどれほど重要か。

こっちの事を路傍の石程度にしか考えてない存在だったら交渉以前の問題だからね。


あとは神様的存在の趣味趣向だけど、これもある程度は予想出来る。

多分、知恵を振り絞ってもがく様が大好きなんだ。

だってそうでしょ?あの植え付けられた知識。


文字化けしてたり、明らかに語っていない場所があったり、どうもこっちへ渡す情報を絞ってる。

向こうからすれば、僕らはデスゲーム世界の登場人物みたいな立ち位置なんじゃない?

そして往々にして、デスゲーム世界は知恵を振り絞る様を楽しむものだ。


ってのが僕の意見だね。


「ふむ……後半はよく分からなかったが、交渉云々は納得できる箇所があった」


「逆に俺は後半がすごく納得できたっす。確かに聞く価値はあると思うっす」


「私も色々納得、考えさせられる事があったわ」


どうやら3人とも納得したようだ。

ほっと肩を撫で下ろすケイ。

自分で推理しても、やはり人に納得してもらうと自信が付くものだ。


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まだ白い空間出てないってマジ?

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