第3話 状況説明

「マジか」


「どうしたんですか?」


おじさまに声を掛けられて現実に戻る男。

男は心拍数が上がり、瞳孔が開き、手に汗を滲ませていた。

さらに顔は若干鼻の穴が開いており、若干気持ち悪かった。


つまり有体に言えば興奮していた。


「とりあえず[ステーテスオープン]と唱えてみてください」


「?よく分からんが……[ステータスオープン]」


「[ステータスオープン]」


お姉さんも同時に唱える。

すると二人とも鳩が豆鉄砲を喰らったような顔をする。

それでもかっこよく、可愛く思えるのは何故なのか。


「な、何だこれは!?」


「びっくりやわぁ……」


男はその反応から自分と同じものが見えていると悟る。

すると、ずっと黙っていた中学生くんが3人に声をかける。


「あの、ステータス弄ってたら分かったんですけど……名前、変えれるみたいです」


「マジか」


「はい……こんな風にって、見えないんですっけ?」


中学生くんは胸の高さあたりの空間で色々手を動かしている。

が、残念ながら下手なパントマイムをしているようにしか見えない。


「うん。見えないね」


「では、オープンではなくてパブリッシュと唱えればいいのではありませんか?」


「ああ、公開する、でしたっけ?」


「はい。お願いできますか?」


「分かりました![ステータスパブリッシュ]」


お姉さんの頼みとあって大声で宣言する中学生くん。

すると、3人の目にも中学生くんの目の前で浮かぶ透明な板が見えた。

内容はこうだ。


Name:入力してください|

Characteristics:未定

Race:未定

Class:未定

Skill

・未定



Name部分の文が変化しており、最後文字に縦長の棒が点滅している。

明らかに入力待ちをしていた。


「これ、どうやったの?」


「Nameの未定の文字をタップすれば出来ました。

キーボードも浮かんでます。しかもちゃんとフリック入力できます!」


どうやらキーボードも浮かんでいるようだ。

さらにフリック入力も出来ると言う。

中々、ユーザーに寄り添ったシステムだと言える。


もっとも、男はフリック派ではなくキーボード派なので、あまり恩恵はない。


「何だか、本当にVRMMOみたいだなぁ。ATKとかVITはないけど」


「ですね。名前、何にしようかなぁ」


「僕はいつもこれって決めてる名前があるんだよ」


「へぇ、どんなのですか?」


「ちょっと待ってね……よし[ステータスパブリッシュ]」


Name:ヌコ様 (ↀㅅↀ)

Characteristics:未定

Race:未定

Class:未定

Skill

・未定


「あははは!マジっすか!」


「……ヌコって何だ?」


「確か、猫って意味でしたっけ?

本当にこの名前にするんですか?」


「ゲームとかSNSのアカウントは全部これに統一してるんですよ。

猫好きなので」


「いいですね!じゃあ俺は………出来た!!」


Name:†ダークネスロード†

Characteristics:未定

Race:未定

Class:未定

Skill

・未定


「あー、成程ね。うん、まぁ丁度そのくらいの年齢か」


「あれ?かっこよくないですか?」


中学生くんは厨二病くんでもあったようだ。

とても香ばしい匂いが漂ってくる。

何だか、こちらまで恥ずかしくなってくる。


あ、お母さん机の二段目の引き出しは開けないで。

うん、だめ。理由は言わないけど。言わないけど!


「うん……君が嫌じゃなければいいと思うよ」


「あの、私たちもあんな名前にしなければいけないのですか?」


「………私たちは普通の名前にしましょう」


おじさまとお姉さんは普通の名前にするそう。

テンションが高い二人がいるせいか、おじさまとお姉さんがとても冷静だ。

男と中学生は完全に深夜テンションになっている。

まぁ全員ここは夢の中と認識しているので正しいと言えるだろう。


「あ、お二人も入力しました?」


「ええ。私はこのように。[ステータスパブリッシュ]」


「私はこうですね。[ステータスパブリッシュ]」


Name:キョウヤ

Characteristics:未定

Race:未定

Class:未定

Skill

・未定



Name:セリナ

Characteristics:未定

Race:未定

Class:未定

Skill

・未定


「キョウヤさん、セリナさんですか」


「あ、そういえば自己紹介してませんでしたね。

俺は田中小太郎って言います!」


「私は富永響也。ぜひキョウヤと呼んでください」


「私は源芹那です。セリナとお呼びください」


「僕は霧島佳です。ケイと呼んでください。

あと、お二人にお願いなんですが……」


「何ですか?」


「敬語はやめて頂けると……正直なところ、僕も敬語苦手なんです」


「ふむ……では全員、敬語を外すと言うのはどうだい?

こんな状況で出来たチームだ。せっかくならもっと仲を深めよう」


「正直ありがたいわぁ。標準語、苦手なんよ」


「あ、セリナさん京都人?」


「そおなんよ。聞き慣れへんかもやけど、我慢してなぁ」


「俺は……遠慮させてください。

まだ中学生なんで!!」


「別に気にしないでいいのに」


4人の間で和やかな空気が流れる。

ともすれば、この不可思議な夢の事を忘れるほどに。

しかし、そうは問屋が下さなかった。


『ハロー!エビリバディ!!元気かい!?

あ、何人か壊れてる。まぁいっか』


突然、頭に響く声。

それは昼間に起きた事と一緒。

だが、声は全く違う。


昼間が無機質な機械音声だとすると、今回は明るく元気な幼女ボイス。

しかし、だからといって油断できない。

もちろん発言の内容が物騒だったのもあるが、一声聞けば分かった。


あれは邪悪なものだと。

あれは恐ろしいものだと。

あれはいけないものだと。


そのことを、声を聞くだけで脳の髄にまで叩き込まれた。

ここが夢の中?

とんでもない。ここはそんな生やさしい場所じゃない。


『ここにいるみんなは救済計画に協力してもらう人たちだね。

おめでと〜パチパチパチ!それに伴って君たちには特別な役割を与えます。

え?どんな役割だって?もーせっかちだなぁ』


誰も声は上げていないが、質問されたような言動をする幼女ボイス。

不思議に思った男だが、やばいと分かっている存在に疑問を投げるのは危険だと判断する。


『あ、気づいてるかもだけど今、君たちは喋れないからね〜。その代わり私が君たちの思念を読み取って疑問に答えてあげるよ。私ってやっさし〜」


「(ってことは、この声が神様的存在?アニメに幼女な神様はいたけど、まさか現実だったとはね)」


こんな状況でも変な事を考える男、もといケイ。

日本人は平和ボケしていると言われているが、こんなところで証明されてしまった。

 

『んで、君たちの役割だけど……簡単にいえば人類の敵だね!

詳しくは、今からインプットする知識を参照してね。ほいっと』


そう幼女ボイスが言うと頭に情報が流れてくる。

あまりの情報量に激痛が………流れこなかった。


「(お約束だと相当の痛みが走るけど……まぁ都合の良い方がいいよね)」


インプットされた知識を一言でまとめるとこうだ。

“ダンジョンマスターとなって人類、ダンジョンマスターと戦ってください“

要するに孤立無援で戦い続けろと言うわけだ。


これに人々は猛反発。

特に声は聞こえないが、幼女ボイスが面倒くさそうに対応していた。

抜粋したのがこちら。


不満1:戦いたくない。


回答:じゃあ野垂れ死ね。


不満2:ふざけんな!理不尽だろ!!


回答:社会ってのは理不尽なものだよ?


不満3:何で戦わないといけないの?


回答:それが救済計画だから。


こんな風に文句を言えば、のらりくらりと躱され、冷たく両断される。

やがて文句を言ってもしょうがないと悟ったのか、真面目な質問が届くようになった。


質問1:人類の敵が役割なら何でダンジョンマスター同士で戦うんだ?


回答:君たちに与える力は強いから。勝負は公平であるべきでしょ?


質問2:もしダンジョンを攻略されたり、ダンジョンマスター同士の戦争で負けたらどうなる?


回答:基本的には勝者の判断に委ねられるよ。まぁダンジョン攻略されたら、ほぼ確実に死ぬだろうね。


質問3:携帯端末やパソコンなどの持ち込みは可能か?


回答:出来るよ。ただし閲覧は自由だけど、書き込みや連絡が取れるのはダンジョンマスター間のものだけ。ちなみにダンジョン内では人類の通信手段はSkillのみに限定されるよ。


質問4:ダンジョンはどんな場所でも展開可能とあるが、海底の奥深くや火山の火口の中などでも可能か?

回答:もちろん。ただし、その分のデメリットはあるよ。


質問5:ダンジョンマスターは例外を除いて支配領域生成から出られないとあるが、例外とは?


回答:ダンジョンマスター同士の戦争だったり、それを観戦する会場だったり。他は自分で見つけてね!


質問6:ダンジョンマスターや魔物は生物なのか?


回答:生物扱いだけど……面白い事聞くのね


など多くの質問が寄せられ、幼女ボイスは意外にも全て答えた。


「(けど、全ては喋ってないよねぇ。喋らない部分について突っ込んだ質問もあったけど、うまく躱されてたし)」


『うんうん。質問は出尽くしたかな?ま、まだ聞きたい事があるなら言ってよ。面白い質問なら答えるから。じゃ次の段階に進もうか。ほい』


幼女ボイスがそう言うとステータスが浮かび上がった。


『一部はもう知ってるみたいだけど、これはステータス。君たちの個人情報みたいなもの。

その中にClassってあるでしょ?今からそれを決めてもらうよ。Classの未定って文字を押してみて』


タップしてみると、選択肢のようなものが出てきた。


「(しかも、これ何個あるの?下にスクロールしても一向に下につかない)」


『ちゃんと吟味して選んでね?選んだものによってはダンジョンマスター生もすぐに終わっちゃうから。

あ、もう動けるから相談してもいーよ。選んだら次の段階に進むからねぇ』


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植え付けられた知識も別途アップしているので良ければご覧ください。

見なくても大丈夫なように書きますが、見て頂いた方がより楽しめると思います。

あと色々設定を考えてますが、その影響で色々穴があると思われます。


是非皆様も疑問に思ったことはコメントしてください。

物語の展開上答えられない場合もありますが、お答えします。

めっちゃいい設定を発見しますと作品に反映したいと思っています。

この作品、シャンフロに少し影響を受けておりまして……設定豊富な作品に憧れてますw

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