第16話
◇◇◇
レーナは本来の洗濯係としての仕事があるため、途中で調理場の片付けから解放されて戻ってきた。
「あ、レーナ。いいところに来てくれたわ。早く取り込まないと雨が降りそう」
同僚の洗濯係が干している洗濯物を急いで取り込んでいた。
空を見上げると、たしかにどんよりと曇っている。雨が降ったらせっかく綺麗になったものが台無しだ。
「これで最後。間に合ったね」
乾いた衣類を籐の籠に入れて建物の中へ運び、同僚たちと微笑み合う。
「今日の宴、大変なことが起こったんでしょう? 毒がどうのって、みんな騒いでいたわ」
同僚が洗濯物を畳みながらレーナに尋ねた。
調理補助として洗い物や片付けを手伝っていたレーナにも、それはすぐに耳に入った。
ワインに毒が盛られていたらしい、と。
幸い、銀製の器で事前に調べたので事なきを得たということも。
あの夢のとおりになるのではないかと心配していたレーナだったが、回避できたと知ったときにはホッと胸を撫でおろした。
「オディル様を始め、みんな聴取を受けてるの。誰がやったのか、って」
「そりゃそうよね」
ワインを飲み、血を吐いて倒れるところが夢に出てきただけで、それ以外のことはレーナにもわからない。
夢の中で少しでも手がかりになることはなかったかと思い返すけれど皆無だ。
「とにかく早く落ち着くといいね」
そう声をかけられたレーナは苦笑いの笑みを返した。
作業をしている建物の外から、ザッザッザッと土を踏む足音が近づいてきた。
力強いので女性ではなく男性だ。しかもひとりではなく何人もいる。
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