第12話
◇◇◇
宴がおこなわれる日がやってきた。
普段は王宮内で仕事を担っている貴族たち、騎士団の団長や部隊長たちが大広間で一堂に会し、決められた席に着いて談笑している。
しかし、少し遅れて王族たちが登場した途端、場の雰囲気が緊張感に満ちて静かになる。
最後に国王がやってくると、全員椅子から立ち上がり、右手を左胸に当てて表敬の意を込め会釈をするのがこの国の礼儀だ。
大広間の正面、少し高い位置にある席が国王と王妃の座で、向かって左脇に王太子であるオスカー、右脇には側妃やほかの王族が座を占める。
皆が再び椅子に腰を下ろしたところで、目の前に据え置かれたワイングラスにワインが注がれていく。
貴族や騎士たちは同じ等級の赤ワインだが、王族たちには特別に香りのよい上等なものが用意されている。
給仕係がボトルを手にし、オスカーのグラスにもワインを注いだ。
「待て」
オスカーは静かに言い、そばに佇む給仕係の女性の顔をじっと観察した。
女性は一瞬ポカンとしたあと、自分になにか不手際があったのかと動揺し始める。
「ルシアン、別のグラスを」
オスカーが後方に控えていた侍従のルシアンに伝えると、彼は手元で隠すように持っていた銀製の器をテーブルの上にそっと置いた。
ルシアンはこのタイミングで器を出すよう秘密裡に知らされていたので、なにも驚くことなく無駄のない動作で再び後方へ下がっていく。
国王であるブノワがそれに気づき、オスカーに視線を向けた。
「オスカー、どうしたのだ?」
「恐れながら王様に申し上げます。飲み物に毒が入っているやもしれません。乾杯はしばしお待ちを」
その言葉を聞いたブノワ王はキュッと眉をひそめた。
会話は貴族たちにも聞こえていたため、当然あちこちでザワザワとし始める。
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