第7話

「あの……」


 笑みを消し、真っ青な顔になって唇を震わせる。

 その様子に気づいたオスカーは心配して「大丈夫?」と声をかけた。

 レーナは両手を胸に当てながら、深呼吸をしてコクリとうなずく。


「もしかして近いうちに宴がおこなわれますか?」

「宴? ああ。王様が家臣たちと絆を深めたいと仰られていて、五日後にシルヴァリオン宮殿の大広間で予定されている」


 国王は労いの気持ちを込め、重要行事として宴を時折催している。

 日持ちのする野菜が食材庫にたくさんあったのはそのせいだ。


「それがどうかした?」


 尋ねられたレーナは一瞬黙り込んだあと、意を決して口を開いた。


「今から大変無礼なことを申し上げるのですが……」

「かまわない。言ってくれ」

「お飲み物にご注意ください。毒が入っていて、ルシアン様はお倒れになります」


 なにを言うのかと、激高されるのは覚悟の上でレーナは伝えた。

 顔を真っ赤にして怒鳴られるかもしれないと想像したけれど、彼はむずかしい表情をしたまま固まっている。


「俺が毒を盛られると?」


 レーナが見た宴の夢は、王様や高貴な人々が集まっていて、その中に彼もいた。

 なので普通の騎士ではなく、彼はもっと身分の高い男性なのだろうとレーナはこのとき確信した。

 そんな高貴な人物を相手に無礼な発言をしたら、こっぴどく叱られるのは至極当然だというのもわかっている。

 だが、彼が乾杯をしたあと飲み物を口にし、血を吐いて苦しそうにしながら椅子から床へ崩れ落ちる夢が鮮明によみがえってきたのだ。それを黙っているわけにはいかない。

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