第6話
「もしかしてお食事がまだでしたか?」
クリスのように食べ損ねたのかと勘を働かせたレーナは迷わず声をかけた。
なんでもいいから食べさせろと言われたら、調理場にいる料理人に頼みに行かなければならない。
プラチナブロンドの髪をサラサラと揺らしながら、背の高い男性がレーナのほうへ歩み寄ると、辺りに爽やかな風が吹き抜けた。
ライムのようなグリーンの透き通った瞳、高い鼻梁、凛々しい眉、形のいい唇……こんなに整った顔をした騎士がいたなんて、と間近で目にしたレーナは一瞬で見惚れてしまう。
「君は……ここで働いてるの?」
「レーナです。普段は洗濯係なんですけど、体調不良で休んでる子がいるのでこっちを手伝っています。えっと……騎士団の方ですか?」
「……ああ。ルシアンだ」
男はこの国の王太子であるオスカーだったが、咄嗟に自身の侍従の名前を名乗った。彼女をびっくりさせないためだ。
「ルシアン様。お名前、覚えました!」
愛想よくにこりと笑うレーナとは対照的に、オスカーは無表情のまま彼女の顔を凝視している。
「レーナ……レーナか……」
小さな声でオスカーがつぶやく。
見つめ続けられて恥ずかしくなってきたレーナだったが、だんだんとこの綺麗な顔に見覚えがあるような気がして記憶をたどった。
しかし以前に会っているのなら、特徴のある彼を忘れたりしないだろう。なにかおかしい。
懸命に考え込んでいたら、ふと今朝の夢を思い出した。
どこかで会ったのではない。この人は間違いなく今朝の夢に出てきていた男性だ。
レーナの頭の中でこま切れだったシーンが、まるでパズルが埋まるみたいに徐々にひとつにまとまっていく。
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