クリスマス掌編『ウェイクアップ・スノゥ』

花沫雪月 (元:雪月)

ウェイクアップ・スノゥ

 最初に感じたのは浮遊感。

 身体からあらゆる支えが消えたような感覚。

 世界そのものが浮き上がるような違和感にボクは慌てて周囲を見回した。

 けれどもボクの足はちゃんと地面についていたし、ママもパパも犬のニックもちゃんと地面についている。


 ホッと胸を撫で下ろしたのも束の間。

 今度は上下左右斜めと身体が揺れた。


「地震だ!」

「ワゥワゥ!」


 叫ぶボクのマネをするようにニックが吠える。

 ママとパパは互いに支え合うように寄り添っていた。


「また地震か……この時期はよく揺れるな」

「えぇ、ホント。多いときは日に何度も」


 物凄い揺れに、けれどもママもパパも落ち着いていた。

 この辺りは地震が多くていろんな物が頑丈に造られているから、家も家具も今まで1度も地震で壊れたことは無いんだって。


 すぐに揺れは収まった。

 ボクは期待を込めて空を見上げる。


「もうすぐ雪が降るよ、ニック!」

「ワゥ!」


 透明に澄んだ空を柔らかな光に照らされ銀色に煌めきながら雪が舞っていた。


 ▽


 ▽


「ただいまー」

「お帰りなさい」

「パーティーの準備はできてる?」

「えぇ、モチロン」

「素敵な飾りつけだ。お! スノードーム飾ったのか。好きなんだよね」

「ちょっと! そんなに乱暴に揺らさないでよ」

「これくらいじゃ壊れやしないさ。それに今、外も雪が降ってるよ」

「ホント!? 飾りつけで気がつかなかった!」

「今年はホワイトクリスマスになりそうだね」




 ―Fin


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