第2話 病と向き合う

糖尿病の診断を受けた日、医師から告げられた言葉は想像以上に重く響いた。血糖値やHbA1cの数値は危険な領域にあり、このままでは身体が耐えられなくなると言われた。さらに、「入院も視野に入れるべきだ」と勧められた瞬間、私は現実の重さに圧倒された。


けれど、その現実を直視する気力もなく、何もかもが手につかない日々が続いた。糖尿病の診断はもちろん、これまでの挫折や孤独感が頭をよぎり、「なぜ自分だけがこんなにも苦しまなければならないのか」と思うばかりだった。


過食も止まらなかった。食べ物だけが心の隙間を埋めてくれるように思えたからだ。けれど食べるたびに体が重くなり、苦しさが増す。糖尿病について調べれば調べるほど、自分がどれだけ危険な状況にいるかを知るだけで、さらに絶望が深まった。


そんな私に変化が訪れたのは、ふとした瞬間だった。テレビで見たのは、同じように糖尿病と向き合う人の特集だった。その人は、自分の健康を取り戻すために運動を続け、食事を見直し、今では元気に働いているという内容だった。その姿を見て、「自分もこうなりたい」と思ったわけではない。ただ、「自分も何かできるかもしれない」と、小さな希望が生まれた。


それから少しずつ、自分の状況を受け入れるようになった。糖尿病は一生向き合う病気だと知ったが、「だからこそ少しでも良い方向に進めるかもしれない」と思い始めたのだ。そして、次第に行動に移す準備ができてきた。


この時の私には、まだ大きな目標や明確な計画はなかった。ただ、「今より悪くならないように」と願う気持ちが、ほんの少しの一歩を踏み出すきっかけとなった。

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