第3話 スケジュールを立てよう

彼がダンジョン計画の概要を話し終えた後、軽い質問タイムを経て参加者がおおよその理解をしたところで議題は今後のスケジュールへ移り変わる。


「まず6ヶ月掛けて、俺とこのコアでダンジョンのテスト環境を構築する。それから1、2ヶ月程度をアルファテスト期間とし、残りの4ヶ月をベータテスト期間として君達にはテスターになってもらいダンジョンを攻略して貰う予定だ。来月初めからスタートして1年後には各国にダンジョンを同時オープンする算段だ」


彼は白板に横線を引くと、12ヶ月分の縦線を入れ、6ヶ月までをシステム構築とテスト用ダンジョン構築。

さらにそこから2ヶ月でアルファテスト。

残り月をベータテストとして書き込んだ。

そして、大まかに分けられた3つの期間へ人員と実施内容を書いていく。


「うわぁ。これ一年でやるつもりなの?」


百々が呆れながら問い掛ける。


「勿論だ。世界情勢が良くないからな。人類同士で潰し合いが起きる前に人類対ダンジョンの構図に入れ替えたい」

「なるほどねー。確かに今の人類はタガが外れたら地球上の生物皆殺しにしかねないからなぁ」

「はい。勝手に争うのは構いませんが、同胞を巻き込むのだけは辞めていただきたいです」

「まったくだ。それに人類絶滅したら俺もお役御免だからな。ハハハ……」

「なっ!? そ、それは困る……」


苦笑いを浮かべた彼の言葉に反応した三依が困った顔をする。

無愛想に振る舞ってはいるものの、何だかんだ彼の事は認めている三依なのだ。


「大丈夫だ。そのためのダンジョン計画だからな」


彼はそう言って三依の頭を撫でる。

素直に頭を撫でられる三依。

それを見て、ニヤニヤする百々と羨ましそうな視線を向ける白姫。


「むあッ!? い、何時までやってるんだ!? 後、ニヤニヤするな。はっ倒すぞッ!」


暫くして百々のニヤニヤに気付いた三依は彼の手を振り払って威嚇する。

が、頬を赤らめていては威嚇としての効果は殆ど無く、むしろ当事者達からは可愛いなぁ。なんて思われていた。

なお、それを口にすると更に面倒な事になるため、それ以上は何も言わない彼らだった。

なんだかんだでTPOは弁えているのだ。


「話を戻すけどさぁ。半年でテスト用ダンジョン構築って無理じゃないかなー?」

「そこは大丈夫だ。好きな事をするのは苦にならない。それに人間だった頃と違って今なら24時間365日不眠不休で働けるからな!」

「流石です。お義兄様」

「いや、そこは褒めるところじゃないだろう? 流石の私も引く……」


彼の言葉にキラキラと目を輝かせる白姫と頬を引き攣らせる三依だった。


「取り敢えず、8ヶ月でアルファテストまでは終わらせるから、その後のベータテストを皆に頼みたいんだ」

「うん。了解」

「承知しましたわ」

「わかったよ。なんならアルファテストから参加しても良いけど?」

「ありがとう三依。その申し出は嬉しいが君達にはアルファテストでダンジョンに対して余計な知識と先入観を持って欲しく無いんだ。その分ベータテストでガッツリ試験してもらうから覚悟しててくれ」


三人の少女達を前にニタリと意地の悪そうな笑みを浮かべる彼。


「それなら――」


と、手を挙げたのは白姫だ。


「お義兄様。他にお手伝い出来ることはありませんか?」

「うんうんー。私も手伝うよん」

「それなら、私も」


百々と三依も続く。


「皆ありがとう。なら、コアこの子の話相手になってくれないか? そして、人類の歴史や蝕の事、君達妖怪の事。それに他の色々な事を教えてあげて欲しい。百々の人形に魂を入れてあげれば会話も可能だろう?」

「はーい。了解」

「はい。わかりました」

「わかった」


彼と彼女達の言葉に、赤子の魂がユラユラと揺れた。


「そう言えば、この子の名前は何ていうのかなー?」


百々が問いかける。


「ああ。名前はみのりと言うそうだよ」


この日、ダンジョンを管理運営するセントラルコア“minori”が誕生した。


そして、傍から見れば不眠不休の地獄のデスマーチ――当人からすれば楽しい愉しいモノ造りの時間が始まったのだ。

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