第2話 冬の魔法なんてきっと
※名前の読みについて※
雨谷虹実(あめやななみ)
深坂幸司(みさかこうじ)
雨谷さんが我が高校に来て、お隣さんとしての信頼は得られたと思う。自分自身の至らない点が多すぎる。考えていたことの一割も実行できず雨谷さんに先を取られる。
今日だって二十四日の予定をうやむやにして帰ってきたから。心配ではある。顔赤かったしいつもと違って話しかけたらびっくりしてたし本当に体調崩してしまってるかもしれない。心配だし一通送ってみよう。
『体調どう?』
送った。…既読ついた、はや。
「体調は大丈夫! ご飯も食べれたし万全よ」
『それならよかった』
「心配かけてごめんね」
『雨谷さんそこはごめんじゃなくて心配してくれてありがとうだよ』
「そうだよね、ありがとう
あ、それと二十四日はかわいい虹実ちゃんと会える日だからちゃんと空けといてね約束だから
クリスマスプレゼントは幸司くんと会えることがプレゼントだからモノはなしでお願いね」
『わかった、空けておくよ』
「よっしゃ、それが聞けて安心した」
『安心したならよかった』
「うん! それじゃまた明日学校でねおやすみ」
『また明日学校でおやすみ』
そうして僕はスマホを消灯させベッドに放り投げた。おやすみ、か。
今日はいい眠りができそうだ。
そんなわけで次の日になり、雨谷さんは学校に来て早々メッセージ嬉しかったと言ってきた。
何気ないことにもありがとうをくれるなんてこっちも嬉しいなと思った。ありがとうでこんなに心があたたかくなるのはいつぶりだろうか。
今日の虹実さんは普段の虹実さんだ。元気になってよかったよ。元気がない虹実さんは静かすぎて緊張しちゃうし、
『やっぱり笑顔が似合うから』
「ん?誰がやっぱり笑顔が似合うからなの?」
『え、なにが?』
「なにが?なのはこっちのセリフなんだけど」
なんか雨谷さん怒ってない?なんで。
「だから、誰がやっぱり笑顔が似合うからなの?」
なんと、心の中でつぶやいた言葉が口からもれていたらしい。なんと不覚…。
『あぁ、それはね雨谷さんのことだよ』
僕は緊張を悟られないように雨谷さんの目を見て宣言するかのように言った。
「え。はぁ〜〜〜〜〜〜!?」
教室に響き渡った。声。なんなら反響してた。
ほわんほわんしてる。
雨谷さんの声が教室内の全員の視線を集めた。
雨谷さんは僕を見ているので必然的に僕も見られるわけだが。なんとも恥ずかしいなこれ。こんなこと僕が経験するとは思わなかったからどんな顔をしたらいいか分からずとりあえず笑っておいた。
ゆっくりと意識を取り戻した雨谷さんが一言呟いた。
「ズルい」と。
なにがズルいのか分からずに考えていたら朝のチャイムが鳴って僕の思考は一旦中断された。
そうして考えることから逃げた一日だった。
数日後にクリスマスイヴが迫っていたことに気づかないまま日々を過ごしていたことに。
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