第5話 オっサン魔人消しちゃったってよ


「さて、それじゃ行くさね」


 さらりとそう言ってシボルとミホを促すナリア。


「ムッ、ナリアよ」

「何さね神竜様?」

「転移で行けば良いではないか」

「馬鹿かね神竜様は。アタシの魔力を使わずともこっちの部屋に転移陣があるさね。それも神竜様が設置したのが」

「おう!? そ、そうであったな!」

「さては千年前に設置したのを忘れてたさね。神竜様でも寄る年波には勝てないさね」

「わ、忘れてた訳じゃないぞ! ちょっと記憶の片隅に長く置き過ぎただけだ!」


 『何だか夫婦漫才を見せられてるようだ……』


 シボルは二人のやり取りを見てそう思っていたとか。


 部屋を移動して転移陣とやらに乗ると直ぐに景色が変わった。そこにはエルフが一人立っていた。


「巫女様、ようそこお越し下さいました」


「おや、まだあんたが担当だったのかい、ディディー?」


「はい、町では若輩者からようやく一人前と見られるようになって参りましたが、ナリア様にしてみればまだまだ若輩者でございます」


「フフフ、そんな風に言われたらアタシがお婆ちゃんに聞こえるさね」


「いえ! そのような意味では! 申し訳ございません失言でした!!」


 ババッとその場に土下座を始めるエルフのディディーさん。


「ああ、よしとくれよディディー。冗談さね。相変わらず年をとっても固いね、あんたは」


「そ、そうでしたか、冗談でしたか…… 良かった。ナリア様のご機嫌を損ねてしまったのかと気が気でなかったです」


「アタシがあの程度で機嫌が悪くなる訳ないさね。それよりも、町はどうだい? 何か異変は起こってないかい?」


「はい、ドワーフのクソ共が我らの町で商売を始めたのはちょっと問題ですがそれ以外には大した問題は起こっておりません」


 『やっぱり日本での通説通り、エルフとドワーフって仲が悪いんだなぁ〜』


 シボルはナリアとディディーの会話を聞いてそんな感想を持っていた。


「ああ、ドワーフがやって来たのかい。良く受け入れたね。今の王は誰がやっているんだい?」


「はい、我らの王はドルテ様です」


「おやおや、ドルテの坊やが王様かい! そりゃまたあんたらも思い切ったもんさね」


 『ナリアさんに坊やって言われる王様…… どんな人なんだろうな』


「ナリア様! ドルテ様は見事に王の責務を日々こなしておられます」


「フフフ、そんなに怒るんじゃないさねディディー。アタシがこう言ったからってドルテは怒ったりしないさね。さてと、それじゃ客人も連れている事だし町に行かせて貰うよ」


「ハッ! どうぞ良き旅を、神竜の花嫁様!」


 ディディーの言葉に見送られて転移陣で移動した小屋から外に出てみると森の中だった。


「二人ともこっちさね。エルフの町は歩いて五分ぐらいで着くから兄さんでも疲れないさね」


「グッ! その言葉は胸に刺さりますナリアさん……」


 思わず胸を押さえてそう言うシボル。


「フンッ、全く! もっと鍛えてミホよりも体力をつけておけよ!!」


 これまで一言も喋らなかった神竜にまでそう言われてしまう。 


「冗談さね兄さん。気にする事は無いよ。それよりも何だか騒がしいね……」


 確かに町に近づくにつれて大声で叫んでいるのが聞こえてくる。


「だから!! 私たち人を信用出来ないのも分かるけど、緊急事態なんだからちょっとぐらい手助けしてくれても良いじゃないっ!!」


「勿論、そちらの怪我をしている色手の者は手当をしよう。だがお前ともう一人の怪我人は町に入れる訳にはいかん!!」


 そんな声が聞こえてくる。


「おや、どうやら職手の者がいるようだね? けどこの声は……」


 そう言いながらも歩き続け、ようやく騒ぎの元にたどり着いた四人。そこでは門番らしいエルフが四人と、腹に怪我をしている人が二人に門番と言い争っている娘が一人いた。


「私もこのも好きで職手を授かったんじゃないわよ!!」


「それでもならんっ!! この町に入れる人は色手の者だけだ!!」


「おやおや、どうやら頭の固い者が門番をしているみたいさね。さて、兄さんにお嬢ちゃん、どうするさね?」 


 門前の諍いを見てとってシボルとミホにどうするのかと聞いてくるナリア。問われた二人は直ぐに動き出した。


「おい、嬢ちゃん。こっちの人をちょっと動かすぞ」


 シボルはそう言うと恐らく職手の持ち主だろう怪我人を動かして色手の怪我人の近くに、手で止血しながら連れていく。


「えっ!? えっ!? だ、誰!? っていうか私の仲間に勝手に触れないでっ!!」


「大丈夫ですよ、シボルさんは怪我してる人にひどいことをする人じゃありませんから。それよりも、次は私ですね」


 ミホは二人の怪我人の間に立って左右それぞれの手を怪我をしてる場所に翳した。


「う〜ん…… イメージで良いんですかね? シボルさん」


「うん、ミホちゃんのイメージで良いと思うよ」


「分かりました、それじゃ魔力を込めてやってみます!!」


 そう言うとミホの両手が白い光を発して怪我の部分を照らし出す。

 すると、先ずは傷口周りが綺麗になり血が止まり更には傷がみるみる塞がっていく。


 仲間の娘も門番も目を見開いてその光景を眺めている。


「ミホちゃん、もう大丈夫みたいだぞ。二人とも呼吸が落ち着いてるし、顔に血色が戻ってるから」


 シボルの言葉に目を瞑り集中していたミホの目が開いた。


「あっ、ホントですね。傷も綺麗に塞がってます! ヤッタ! ちゃんと自分の意思で使う事が出来ましたっ!!」


「ああ、凄いなミホちゃん!」


 シボルがミホを褒めていたら一人だけ元気だった娘が二人に謝罪と感謝を述べてきた。


「あのっ! さっきは失礼な事を言ってすみませんでしたっ! それと仲間の怪我を治してくれて有難う! その、時間はかかるかも知れないけれどちゃんとお代はお支払いするので、少しだけ待って貰えないですか? あ、私はミスト村のレリって言います」


 その言葉に門番のエルフが反応した。


「なにっ!? ミスト村だって!! 何でそれを早く言わなかったんだっ!!」


 何だか言わなかったこの娘が悪いみたいな言い方だったのでシボルは思わず反論していた。


「いやいや、仲間が怪我してるのにそんな冷静な態度ではこの年若い娘はいられないだろう。そこはあんた達が大人として冷静に話を聞けば良かったんじゃないか?」


「ムッ! 部外者は黙っていて貰おうか!!」


 シボルはその物言いにカッチーンと来たようだ。更に何かを門番に言おうとしたが、ナリアが前に出てきて門番に文句を言う。


「情けないねぇ、いつからエルフの門番はこんなに質が落ちたのさね?」


 その言葉に更に声を荒げて文句を言おうとした門番たちはナリアの顔を見て口をパクパクさせている。


「ナッ、ナッ、ナリア様!!」

「巫女様!!」

「し、神竜様の花嫁様!!」

「わ、私は文句を言ってませーんっ!!」


「フンッ、アタシだと分かった途端にその態度かい? 全く、アタシはエルフたちにも言っておいたはずさね! 色手同士が結ばれてもその子が色手を持つかどうかは分からないってね! だから人種で職手を持つ者でも出身地を確認するんだよって口を酸っぱくして先代の王に伝えていたはずさねっ!! それをあんた達は…… どうやらドルテの坊やを叱りつけなきゃならないようさね」


「あっ! いえ! 陛下は何も悪くないのです!」ひとえに私たちが間違っていただけですのでっ! どうか陛下をお叱りになるのはお止め下さい!!」


 門番の中でも少女と言い合っていた者が責任者なのか、まるで死を覚悟したみたいな表情でナリアに向かってそう叫んだ。


「馬鹿いうんじゃないよっ!!」


「ヒッ!?」


 しかしナリアの一喝いっかつで怯えたように半歩下がる。


「下の者が間違ってるのは上に立つ者の責任さね! あんたらの王はそんな事も分からないボンクラだってあんたは今アタシに向かって宣言したのかいっ!!」


 『ナリアさん正論だなぁ。でもこの手の人は追い詰めると危ないんだよなぁ』


「いえ! 決してそのような訳では…… 考えてみれば私たちも職務を遂行していただけですし、いくら巫女様といえどもそこまで言われる事は無いかと! 我らエルフはエルフで独立しております! なので神竜様の花嫁様であっても我らの事に口出しは無用にございますっ!!」


 『ほら、逆ギレしだした。そろそろ年寄りの出番かな?』


 とシボルが思ったその時であった。


「この馬鹿タレがーっ!!」


 その叱りつける声と共に門番責任者が吹っ飛んだ。


「きさん、何を言っとっとーっ!! 我らがここに住まわせてもらっとうのは神竜様の慈悲ばいっ!! それをきさんは台無しにすっとかーっ!!!」


 『すっごい訛ってるけどこれが本当のエルフ語?』


「ひぇっ、陛下ひぇいきゃ!?」


「ナリア様、ご無沙汰しておりもうす。まっこと、ワシの不足に至る所によってご不快な思いをさせてしもうて、申し訳なかとですばい」


 陛下と呼ばれたエルフはその場でナリアに向かって土下座した後に、怪我が回復して気絶から覚めた二人とレリに向かっても


「ワシの統治が至らんばかりにミスト村のもんであるお主おんしらにも迷惑をかけたばい。この通り許してくれぬか」


 そう言って謝罪した。


「いえ、あの、私たちは国王様に謝罪なんてして貰わなくても……」

「えっと、今気がついたばかりで状況が分からないんだけど、どういう事なのレリ?」

「レリ、また何かやらかしたの?」


 『うん、レリちゃんはやらかすなんだな』


「今回は私は何もやらかして無いわよ!」


「はあ〜、久しぶりさねドルテ。それで今後はどうするつもりだい?」


「はい、ナリア様。教育を徹底してし直しますばい」


「分かったよ。それを信じるさね。それと、ちょうど良いからこちらの二人を紹介しとくさね。神竜様の客人でシボルとミホさね。二人とも両手に色手を持つ者さね。今回は顔見せと買い物に来たさね。だからアタシらはもう行かせて貰うさね」


「はい、畏まりましたばい!! 二度とこのような事が起こらぬようにしますばいっ!」


「あの! ちょっと待って下さい! 治療費のお支払いについては?」 


 レリが慌てて呼び止める。しかしミホの返事は


「治療費なんていりませんよ? だって私もシボルさんもそんなつもりで治療したんじゃないですから。ねっ、シボルさん」


 だった。ミホにふられたシボルも言う。


「あ〜、たまたまオっサンたちが通りかかって、困ってるようだったから出来る事をしたって事で良いんじゃないか。レリちゃんも、君たちも運が良かったって事で。それじゃ、また何処かで会おうな」


 そう言ってナリアたちと共にエルフの町に入っていった。それを呆然と見ていたレリたちだったが、そこにエルフの王であるドルテが声をかける。


「改めて我が部下が失礼を働いた。ミスト村の同胞よ。村長には私の方から詫びをいれておく。その前にそなたたちは何故に大怪我をしておったのか教えてくれぬか? わが町の近くで脅威が出たのならば対処せねばならぬ故に」


 話し方も訛りが消えて一国を預かる王としての口調になっている。ドルテに言われてハッとする三人。


「そうでした! 陛下、実は魔人族が!!」

「その魔人族はどうやったのか神竜様の結界を破って入ってきて!」

「先ずは獣人族の町を破壊するって!!」

「見たからにはって私たちに攻撃をしてきて!」

「マリとシュリがお腹に怪我を負わされちゃって!」

「でもレリが何とか職手のスキルで逃がしてくれて!」 


「ムウッ! 神竜様の結界を破って入って来ただと! どうやって? 取り敢えず話は分かった。直ぐにナリア様にお知らせせねば!! それにそなたらは町に入り私について来ると良い。まだその魔人に狙われておるやも知れぬ。私と共に居たならば守る事も出来よう!」


 ドルテがそう言った瞬間であった。ドルテの背後に人影が立ち


「ほほう? エルフの王は自惚れが強いようだな」


 その言葉と共にドルテの背から腹に向けて手が生えてきた。いや、背後に立った人物が素手でドルテを貫いたのだ。


「グハッ! ガハッ!! き、きさん!!」


 それはドルテに殴り飛ばされた門番の責任者であった。


「グフフフ、小娘たちに逃げられて先回りしておいたのだが、まさか王が釣れるとは我も思わなんだ。さて、順番が変わったがまあ良いだろう。先ずはエルフ共を皆殺しだ。グフフフ」


「そうはいかぬな」


「ムッ、我が気づかぬとは? さては神竜の眷属か?」


 そこに居たのは神竜本人であったがそうとは気づかない魔人。


「どうやって結界を越えたのか聞かねばならぬので貴様は生かしておくか……」


「クックックッ、神竜本人であるならともかく眷属ごときが言いよるわ! 貴様もここで殺しておくとしよう」


 そう言うと魔人はドルテから離れて神竜に対峙たいじする。


 その場に残されたドルテに近づく人影。ナリアとシボルとミホであった。町に入った途端に神竜が異変を感じ取りそっと戻ってきたのだった。


 ミホはドルテを癒し、そのミホを守るようにシボルが魔人との間に立っている。ナリアはレリ、マリ、シュリの元に行き結界を張った。


「最近の魔人は大言壮語を吐くのだな」

「抜かせ! 先ずは貴様からだ! ダブルの色手持ち!!」


 最初から狙いはシボルたちであったかのように神竜に背を向けてシボルに向かってくる魔人。


「えっと、殺すとマズいんですよね?」


 だが魔人は何故かシボルの五メートル手前で止まってしまう。その様子を見ながら神竜に問うシボル。


「ウム、出来れば生かして捕らえて貰いたいが出来るか?」


「善処します……」


 それ会社関係だと出来ない時の言葉です……


 案の定……


「あっ!? 加減間違えたか!?」


 シボルが右手を軽く振った瞬間に魔人の上半身が消し飛んだのであった……

 下半身だけで暫く立っていたが、それもやがてサラサラと砂のようになり消え去った。


「生かして捕らえて欲しいと言ったと思うが……」


 被ったフードの奥からジト目でシボルを見る神竜。


「アハ、アハ、アハハ…… いや、初めて使うから加減が分からなくて、かなり手加減したつもりだったんですけど…… ごめんなさいっ!!」


 シボルが使ったのは虹手こうしゅせきで一瞬で狙った場所を燃やし尽くすというものであった。シボルとしては魔人の右の肩口を狙ったつもりであったが、範囲設定が甘くて上半身を燃やし尽くしてしまったのだ。


「ムウ! まあ今回は大目に見るとしよう……」

「有難うございます!」


 そしてミホに癒されたドルテはシボルを見て、


「魔人を苦も無く…… 貴方はもしかして伝説のヤマト様のご子孫なのか?」


 と聞いてくる。


「いやいや、違いますよ。俺はしがないオっサンです」


 そんなやり取りをしていると神竜がナリアの元に行き、


「ナリア、結界を見てくる。私が居なくても大丈夫か?」


「大丈夫さね。しっかりと確認をして来て欲しいさね」


 ナリアの返事を聞いて「勿論だ」と言うと神竜は消えた。転移したようだ。


「さてと…… 悪かったさね。私も警戒を怠っていたさね。ドルテも大丈夫かい?」


「はい、ナリア様。ミホ殿によりすっかり良くなりましたばい」


「そうかい。それで、この三人はちょっとアタシが預かるさね。まだ他にも魔人が入り込んでいるかも知れないさね。一度魔人に狙われたなら、その魔人が消えても他の魔人に狙われやすくなるからね」


「えっ、そうなのナリアさん?」


 シボルとしては原因を排除したからもうこの娘たちは大丈夫だろうと思っていたのだが、


「兄さん、アタシらには分からないけれど、魔人たちは自分たちだけに分かる印を狙った者に付けるらしいさね。だからもしも他にも神竜様の結界を越えた魔人がいたならこの娘たちは狙われるさね」


「う〜ん…… それって呪いみたいな物かな?」


「そうさね。魔人の呪だろうね」


「分かった、それなら」


 そう言うとシボルは右手をレリ、マリ、シュリに向けた。


「ヒィッ!」

「わ、私たち消されるっ!」

「せっかく助かった命なのにっ!!」


「消すかーっ!! ジッとしてろよ、三人とも」


 シボルは虹手こうしゅとうを使用すれば呪いが解けると何故か理解していた。

 なので彼女たちに使用したのだが、先ほどと同じで加減が分からずに使用したので……


「はわわ〜! き、気持ち良いれしゅ!」

「うきゅうーっ、いけない場所が疼くれしゅ!」

「うみゅう〜、ダメれすーっ!」


 三人娘はしゃがみ込み、その下には恥ずかしい染みが……


「あれ? これにも加減が必要だったのか? うわー、ゴメン!!」


「シボルさん! 破廉恥です!!」

「兄さん、何事にも塩梅っていうのが必要さね……」


「ご、誤解だぁ〜、そんなつもりは一切無かったんだよ、ミホちゃん、ナリアさん!」


 しかし二人からの目線は冷たい。そこでシボルは今度こそと更に右手を三人に向けた。懲りずに使用したのは、らんである。


『これにはどんな状態異常であれ正常に戻す効果があるって説明書きにあったからな! それに清浄効果もあるらしいから、完璧だっ!!』


 そして説明書きの通りに正常に戻った三人は


「もうお嫁にいけない〜……」

「うう、ううっ、辱めを受けました〜」

「こうなったら責任を取って貰わないと!」


 泣きながらシボルに責任を取って三人とも娶れと言ってきたのであった。


「いや、待て! 早めるな、こんなオっサンが相手なんて嫌だろ? それにさっきの事は無かった事になってるから! 俺も記憶から消去するから!!」


 レリもマリもシュリも見た目からしてミホより若い。恐らくだが十五〜六才だろう。そんな子供に泣かれて娶れと言われて焦りまくるシボル。

 そしてそれを氷の微笑で見るミホ……


 そこに呆れたようにナリアが三人に言った。


「はあ〜、アンタら、その辺にしておきな。ミスト村出身って事はご先祖様たちの話は知ってるんだろう? それでこの兄さんが優良物件だと踏んで無理やり契りを結ぼうとしてるようだけど、アタシの目の前では許さないよ」


「うっ、神竜の巫女様にそう言われたら……」

「今のうちに唾つけときたかったのに……」

「巫女様が居なければオーケーって事よね」


 どうやら三人は確信犯だったようだ。シボルは幼くても女性は怖いなと思ったとか……


「駄目ですよ。シボルさんには先約が居ますから」


 怪我を治してくれたミホにも言われて三人娘はその場は諦めたようだ。

 だがシボルとしてはミホの言葉が気になっていた。


『先約なんて居たか? いや、この場を上手く乗り切る為に咄嗟にミホちゃんがそう言ってくれただけだよな』


 日本でも女性とお付合いなどした事が無いシボルは何処までも鈍感であった……


「でもシボルさん、お妾でも良いからその気になったらお願いしま〜す!」

「あ、私も三号でも構いませんから!」

「私は表向きは四号で寵愛は一番が良いです!」


 などと三人から言われてシボルは


「あのな、せめてもう少し成長してからにしてくれ。君らは俺にしてみればまだまだ子供に見えるんだよ」


 と本音で諭した。


「さっ、取り敢えずあんたらも一緒に行動するよ。魔人の呪いは解けただろうけど、ミスト村までは送ってやるさね。但しこっちの用事が済んだらになるさね」


「「「はい! よろしくお願いします! 巫女様、シボル小父様、ミホお姉さん!!」」」


 何とも調子の良い三人娘に出会ったとシボルたちは思った。


 それからようやっとエルフの町に入り、ドルテとも入った場所で別れた。その際にナリアがドルテに「神竜様の結界には劣るけれどもアタシの結界を重ねがけしておいたさね。魔人相手でも持つ筈さね」と告げていた。「ナリア様、有難うございます。我らの方でも町の結界を強化して警戒をしておきます」ドルテも礼と共にそう言って城へと戻っていった。



 それから買い物に向かい、この町では野菜、果物の種や苗を購入したシボルたち。


「さて、それじゃ次はハーフリングの町に向かうさね」


 ナリアのその言葉と同時にシボルたちは転移してハーフリングの町の門前に立っていた。


「うわっ!! 凄いな! 日本に居た頃にこの魔法を使えたなら……」


 シボルの言葉にはミホもウンウンと頷いていたとか……


「この町では食器や調理用の小物なんかが揃っているさね。お嬢ちゃんが要る物を買うといいさね」


 聞けばハーフリングは手先が器用なのだがドワーフほど鍛冶に長けている訳ではないので、主に陶器で作った食器やコップ類、それにシボルやミホには嬉しいことに箸なんかも作っているらしい。


 そう聞いて二人はワクワクしながら町に入った。


 



 

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