第191話・集う色達
「おはようございます」
教室に入ると、ヴィオレットが有紀達に挨拶する。
「おは~」
「おはよー」
「おはよう」
有紀達三人が返事を返す。
「ミドリ、はやいのね」
ヴィオレットの屋敷から学校まで、車で10分かからない。
フランスにいた頃から早寝早起きだったので、屋敷を出てきたのも割りと早めだ。
それでもミドリ達が既に教室にいたので驚いたのだった。
「アカネちゃんにご飯食べさせて、会社に送り出さないとならないから朝は早くから起きなきゃならないからね」
えへへと笑うミドリ。
生活能力ゼロのアカネの面倒をミドリが見ているのだ。
体力の限界まで使い切って帰ってくるアカネを、風呂に叩き込んで寝かしつけ、更に朝も強引に叩き起こして、朝食をなんとか食べさせてから会社に送り出すのが日課だった。
「お前も面倒見がいいなミドリ」
話を聞いた有紀がミドリの肩をポンポンと叩く。
「ふっ、俺に惚れると火傷をするぜ、お嬢さん」
ニヒルに笑うミドリ。
「ひ、ひどい!
わたしというモノがありながら!
ミドリは、わたしの事は遊びだったのね!」
いつもは突っ込み役の奈緒が乗っかってきた。
そして、三人はヴィオレットの方を見る。
「えっ?
えっ?
えっ?」
訳が判らず、三人の顔を見回すヴィオレット。
「ヴィオ、ボケにはツッコミで返すのが日本の礼儀だぞ」
有紀がボケとツッコミについて語る。
「そうそう、それが日本の常識だから」
ミドリがウンウンと頷く。
「ヴィオがいるから、わたしもボケに回れるわ」
今まで突っ込み役だった奈緒も、ボケ役宣言をする。
「ボケって何ですの?
ツッコミって?」
フランスのお笑いには、日本のように明確なボケとツッコミは存在しない。
人によっては、ツッコミは相手の意見の否定と捉えられるからだ。
それにお嬢様なので、お笑い番組など見ない。
ボケとツッコミが判らなくて当然。
「どうするよ」
「ツッコミなしでボケるのは辛い」
「そうだよね、ツッコミ有ってのボケだもんね」
三人が頭を付き合わせてヒソヒソと話し合う。
「よし、ヴィオ。
これから日本の伝統芸能、ボケとツッコミについて教えよう」
「これを習得すれば、より日本の文化に精通出来る」
「日本で暮らしていく上で、必須技能よ」
有紀、ミドリ、奈緒がヴィオレットにボケに対してのツッコミの大切さを語り始めた。
「いいかげんにしなさい」
三人の頭をハリセンがスパコーンと張り倒す。
「いたたた」
頭を抱える三人。
「何をするのだ・・・」
有紀が振り返ると、ハリセンを持った委員長が立っていた。
「何をするの、と言うのはこっちの台詞。
外国から来たばかりの転校生に、変な事教えるな」
「へ、変な事だと!」
有紀が椅子を蹴って立ち上がる。
「表へ出ろ!」
と言いつつ、窓から出て行こうとする。
「で、それからどうする?」
委員長は覚めた目で有紀を見た。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます