第192話・集う色達

 窓に足をかけた状態で固まる有紀。

 ミドリと奈緒の顔を見るが、二人ともさっと顔を逸らす。


「う、裏切り者」

 と心の中で叫んだが、今はこの事態を乗り切るのが先だ。


「風が俺の背中を呼んでるぜ」

 キリッとする有紀。


「で」

 委員長には通じなかった。


「え・・・え~と・・・そのですね・・・

 誠に申し訳ございませんでした」

 その場でジャンピングスクリュー土下座を決め、床に額を擦りつけ謝罪のポーズ。


 解説しよう、ジャンピングスクリュー土下座とはジャンプすると同時に身体を回転させ、相手の方向を向いた瞬間に土下座を決める高等技である。

 土下座を極めし者のみが使える奥義なので、良い子は決して真似をしないように。


「ふむ。

 で、あんた達は?」

 ミドリと奈緒の方を見る。


「・・・ごめんなさい」

「やり過ぎでした」

 二人とも頭を下げる。


「謝るのはわたしじゃなくてヴィオによ」

 言われて二人はヴィオレットの方を向いて頭を下げる。


「いいのよ、わたしは気にしないから」

 有紀のジャンピングスクリュー土下座にドン引きしながら、ミドリと有紀に頭を上げて貰おうとする。



「本人が許すと言ってるのなら仕方ないね」

 それから土下座したままの有紀の方を向いて、

「いつまでそれやってるつもり?」

 氷より冷たい声で言う。


「・・・」

 無言で立ち上がる有紀。


 口を開くとお笑いで流してしまいそうだったが、今はそんな雰囲気ではないのでじっと口をつぐむ。



「有紀、あんたには感謝してるんだよ。

 遅れてやってきたミドリの相手をしてくれたり、海外から転入してきたヴィオの面倒を見てくれたり。

 本当は委員長のあたしがしなきゃならない事をさ、あんたがしてくれたんだから」

 委員長の言葉に、驚きの表情をする有紀。


「あの・・・その・・・」

 誉められ馴れてないのか、みるみる顔が真っ赤になる。


「ふふふ、あんたのその顔見られただけでよしとするか」

 委員長は手を振りながら自分の席に戻っていった。


「あんたに感謝しているわ」

「わたしの仕事を代わってやってくれてありがとう」

 ミドリと奈緒が早速茶化す。


「う、うっさいな」

 いつものような切れが無い。


「でも、有紀の意外な面を見た気がする」

「そうだね、わたしだってまだ半年くらいの付き合いだから、お互いに知らない面も色々あるよね」

 奈緒も有紀とはこの高校に入ってからの付き合いなのだから。



「面白いですわね、今までまるで知らない人達がこうして知り合って、仲良くなるなんて」

 ヴィオレットが嬉しそうに笑う。


「そうだよな、ヴィオなんてフランス人だぜ。

 それもお金持ちのお嬢様。

 普通だったら、一般庶民のあたしらとは住む世界が違うのにさ」

 有紀が復活した。


「この出会い、大切にしたいですね」

 ヴィオレットの言葉に、有紀達も頷く。

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