第一章 ~『命乞い ★美蘭視点』~
~『
夜の闇が深まり、静まり返った街を、
酒の匂いを漂わせる
「私はお金持ちになれるはずだったのに……」
だが
「誰か私を幸せにしなさいよ~」
酔っ払いながら、
月明かりに照らされた姿は、どこか妖しげだが、服装から上流階級の出自だと推察できる。護衛も連れずに路地裏に一人でいることに疑問を抱いていると、彼女は音もなく
「ここにいたのね」
「……あんた、誰よ?」
「私は
「反省の色がないようね」
「私は悪くないもの! 悪いのはぜ~んぶ、
「でも
「だったらどうだって言うのよ! 私を警吏にでも突き出すつもり?」
「歯には歯を。目には目を。命を奪おうとしたあなたには、死を以て報いとするわ」
「わ、私はね、戦場で娼婦をしていたのよ。命の危機にもその都度、対処してきた。そんな私をやれるとでも?」
「ふふ、声が震えているわよ」
「――ッ……私は……怯えてなんて……」
冷静に考えれば、負ける理由はない。二人の体格に大きな違いはなく、
だが理屈ではなく、動物的な直感が
「この姿に戻るのは何年ぶりかしらね……」
「――――ッ」
「わ、私が悪かったわ。謝るから。どうか許して……」
「
「冥土の土産に面白い話を聞かせてあげる。私には一人娘がいてね。先代皇帝との間に生まれた愛娘なの……もっとも後宮の権力争いから遠ざけるために秘密裏に養子にしたから私が母だと知らないけどね」
「一人娘……」
「あ、もちろん狐じゃないのよ。私より夫の血の方が濃かったのか、動物と話せる力以外は普通の人間と変わらないから。でもね、世界でたった一人の私の大切な家族なの」
「その娘は……まさか……」
「言わなくても、もう分かるわよね。だから私はあなたを許さないの」
巨大な九尾の狐が足を振り上げる。
「待って! 許してください! 何でもしますから!」
このままでは命がない。そう察した
「わ、私は
「せ、
「どうして、あなたが知っているの?」
「偶然、戦場で知り合ったの。事故に遭い、記憶を失っていたけれど、あの男が
「本人に
「彼がもし領地に戻れば、次の
自己中心的な
「価値ある情報に免じて、命だけは助けてあげる」
「あ、ありがとうございます! 本当に……ありがとうございます!」
命を拾った安堵で
「私なら失った記憶を取り戻せるわ。そうすれば、
独り言のように呟くと、その言葉に希望を感じ取ったのか、
「それじゃあ、私はこれで……」
「待ちなさい」
「まだなにか?」
「私は命を救うと約束したわ。でも罰を下さないとは一言も口にしてないわよね」
「な、なに……!? 顔が……熱い!」
美蘭は絶叫し、両手で顔を押さえる。しかし、触れた皮膚の感触は滑らかさを失い、粗く歪んだものへと変貌していく。これまで彼女が誇っていた美貌は跡形もなく消え失せ、醜悪な皺が深く刻まれたのだ。
「女を武器にして生きてきたあなたには、これほど重い罰はないでしょう」
「こんな……こんなの、酷すぎる……!」
「後悔しながら生きなさい」
その言葉を最後に、
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