薄暮町ーはくぼちょうー
◯
妖怪が集い、怪異を生み出すとされる
この街と真宵山の
特に夕刻。町の名にも当てられている
私の祖母・石出
「特にそう言う"目"のある異形とは視線を交えることはなるべく避けねばなりませんよ」
と。
長々と語ってきた自分語りもこれほどにして、それこそ今から語らなければならない
◯
お客としてきたのは、顧客としてきたのは。神だった。
一目でわかる程に、それこそ人目につく程わかりやすいくらいに人の形を成した
闇夜を弾く白い
可愛い。きゃわいい。ショタ、最高。まずい、まずい。本音が。そして本性が。
灰色の短髪で薄い赤が混ざる可愛らしい瞳。オーラとでも言うのか、身につけたその時代錯誤な浴衣姿はほんのり白い灯を纏っていて、なんだか神々しい。まぁそれもそうだ。なんだって、眼の前にいるのは神そのものなのだから。
人にしたって、怪異にしたって、ましてや神にしたって、此処の硝子戸に手を掛け引いたのならそれはお客人だ。いや、どちらかと言うと
配慮はすれど遠慮はしない。
これが、この私。石出幽の信念とする考えの1つなのだから。
それはそうとして。(どれはどうとして?)
まぁ、良い。そろそろ
「いらっしゃいませ、物の語り屋へ…。どうぞ、ごゆるりと。」
纏屋書店の
普段客の出入りがまず無いこの書店は、廊下を始め棚にも
けれどその男の子の歩き方なのだろうか、砂埃が立つなんてことはまるで無かった。なに?神様はそんな小さいながらも便利な小技的な何かを持ちうるのだろうか。なんとも、羨ましい。
それを言ってしまうと、うちの店主はどうだっただろう。あまり気にしたことは無かった。というより、あの人はそもそもあまり歩かない。でも、多分ではあるけれど、恐らく巻き上げることはしないだろう。どちらかと言うと、押し潰して歩いていってしまうだろう。本当に孤高、そして孤独な狼。いや、
これ以上店主について語るのはよそう。言葉で紡ぐしか無いが故に、すぐに気づかれる。感づかれる。そして少しの言葉で叱られる。それは嫌だ。あの人の言葉は…。"重い"のだ。
そんな事を思いながら、長くなった前髪を左右に
中に書かれてあるもの。描かれてあるもの。それは広がる
「これは、竹馬ヶ丘の語り伝承…、ですか。まさか氏神様でいらっしゃるとは…。」
その言葉をどう捉えたのかはわかりかねるが、その男の子の眼に
驚きはしなかった。私も此処。纏屋に入って長い事使われて来たと思う。まぁ、人の年月で数えるならだけれど。
見慣れてこそいないが、
丸眼鏡を掛け直し、その内容が少しばかり変わった巻物を手に取り、巻いて縛り直す。消えた男の子の正体はなんだったのだろうと気になる所ではもちろんあるけれど、わからなければわからないで別に支障はない。怪異なんてものは得てして、実体が霧のように判然としないことの方が多いのだから…。戻す場所は知っている。と言うより教えてくれる。それぞれの物語が。そして振り返ると両の硝子戸は開いたまま、外の闇と纏屋の黒を繋げていた。続く宵闇の先に私は見た。駆けて行く
笄ーこうがいー 褥木 縁 @yosugatari
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