第4話 実力は凄い。倫理観はない
「おっと、女装するなら髪くらい伸ばしましょうか」
サラが指を鳴らすと、途端に少年の髪が背中にまで延びた。
「え? へ? あれ?」
いきなり重くなった頭や、髪が背中に触れる感触が気になったのか少年が自分の頭や背中に手をやって――髪がいきなり伸びたことに気づいたようだ。後ろ髪の束を前にまで持ってきて、本当に伸びていることを目で確かめる。
「こ、これは方術や神仙術と呼ばれるものですか?」
「最近の流行は知らないけど、これは魔術よ」
「まじゅつ、ですか……?」
「うん、そう。欧羅の方じゃまだ残っているんじゃないかしら? この国じゃ見なくなったわねぇ。やっぱり一度教育制度が崩壊すると伝承がねぇ。難しくなるのよねぇ」
「は、はぁ……?」
「あ、そっか。いきなり女性の服を渡されても着方がわからないわよね? はい、着替えと、髪も結ってあげましょうか」
指を二回鳴らすとまずは少年の着ている服が侍女服となり、続いて髪も侍女風に纏め上げられた。
「え? え? え?」
「ふふふふふっ」
戸惑う少年の姿を存分に堪能してから、サラは近くにあった手鏡を少年に差し出した。
「これが……僕……?」
愕然としつつも、その美しさに見惚れているような少年だった。
いい仕事をしたとばかりに何度も何度も頷くクズエルフ。
「さて。じゃあ少年は今日から私の専属侍女ってことで」
「専属? いえ、そんな簡単に……」
「大丈夫。私が気に入った子をどこからか連れてきて侍女にするのは珍しくもないから」
「……誘拐犯」
「何か言った?」
「いえ、別に」
「うんうん、素直でよろしい」
満足して運うんとうなずいた私は、ふと気がついた。
「侍女の格好をしているのに『少年』という呼び方はあれよね。これからは――そうね、
意味は確か『可愛い』とかそういう系だったはず。なんてぴったりで素晴らしいとサラは自分で自分を褒め称える。
「どう? と言われましても……それ、普通は人名としては使わないのでは?」
「あらそうなの? まぁいいいじゃない。名前の流行なんて数十年で変わっちゃうんだから」
「…………」
何か言いたそうにする天真だったが、何を言っても無駄だなと諦めたのかため息をつくのだった。
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