第20話 サムライ、ミミックと出会う

 古代迷宮の冷たい空気の中、宗介とライラは数時間にわたり探索を続けていた。


「……ミミックという化け物はどこにいるのだ?」


 宗介は恒次つねつぐを軽く肩に担ぎ、苛立ちを隠せない。


{宗介様、ミミックは通常、迷宮の行き止まりや隠し部屋に現れますが、その出現率は非常に低いのです}

「いつまでもこうして歩き回るのは骨が折れる」


 ライラが苦笑しながら宗介を見上げた。


「少し休憩しませんか? 簡単な料理を作りますから、元気をつけてください!」


 宗介は少し驚いた表情を浮かべながらも頷いた。


「料理もできるのか。ならば頼むとしよう」


 ライラは慣れた手つきで持参していた調理道具を取り出し、素早く準備を進めた。

 香ばしい匂いが漂い始め、宗介の顔に自然と笑みが浮かぶ。


「……旨そうだな」


 彼女が作ったのは、異世界のスパイスが効いた焼き肉と野菜のスープだった。


「これは……旨い! 料理も得意とは恐れ入った」


《ソースケのグルメ配信www》

《ライラちゃん有能すぎる》

《キャンプ飯っていいよな》


 ライラが照れたように笑いながら手を振る。


「いえいえ、生産系クラフターとしては普通のことですよ!」


 休憩を終えた後、二人は再び迷宮の探索を始めた。

 しばらく歩いた先に行き止まりの空間が現れる。


「む……あれは」


 宗介が疑問の声を上げたその瞬間、壁際の宝箱がギギギと不気味な音を立てて動き始めた。


「まさか……ミミック!」


 ライラが後ずさる中、宗介はすかさず恒次つねつぐを抜き放つ。


{宗介様、ミミックです! 硬い外殻と素早い動きに注意してください!}


《ミミックきたーー!》

《やっぱり宝箱だったwww》

《ソースケの初ミミック討伐、期待!》


 ミミックは大きく口を開け、鋭い牙をむき出しにしながら宗介に襲いかかった。

 宗介は恒次つねつぐでその攻撃をいなし、鋭い一撃を放つ。


「これが噂の……なかなかの速さ!」


 一撃はミミックの外殻に当たったものの、両断するには至らない。

 ミミックはすぐに姿勢を取り直し、素早く逃げ出そうとした。


「逃がすか!」


 宗介が追いかけようとしたその瞬間、ライラが声を張り上げた。


「ソースケさん! そのまま誘導してください!」


 ライラは懐から網の罠を取り出し、ミミックの逃走経路に素早く設置した。

 ミミックは罠に気付く間もなく足を踏み入れ、その場で絡め取られる。


「今です!」


 宗介は迷わず駆け寄り、力強い一閃を放った。

 恒次つねつぐの鋭い刃がミミックの外殻を貫き、その生命を断ち切る。


《討伐成功!》

《ライラちゃんの罠ナイス!》

《ソースケの一閃カッコよすぎwww》


 宗介は剣を収め、ライラを振り返る。


「お見事……!」

「ありがとうございます! ソースケさんのおかげで素材が手に入りました!」


 二人は笑顔を交わしながら、迷宮を出口に向かって進む。


 その帰り道、奇妙な輝きが二人の視界に飛び込んだ。


「……あれは?」


 宗介が警戒を強める中、黄金に輝く宝箱がゆっくりと動き始めた。


{宗介様、あれはゴールデンミミックです! 数年に一度しか目撃されない非常に希少な魔物です}

「ええええっ!? 初めて見ました! ソースケさん早く倒してください!」


《ゴールデンミミックきたーー!》

《これは激アツ!!》

《この配信やばすぎる!!!》

《神配信だろww》


 ミミックは宗介たちに気付くと、反対方向に素早く逃げ出した。


 宗介は重藤弓を素早く構え、矢を番えた。

 鋭い目が逃げ惑う金のミミックを捉える。


「逃がさん……!」


 放たれた矢は空気を切り裂き、ミミックの後ろ足に突き刺さった。

 金属のような硬い音が響き、ミミックの動きが鈍る。


「よし……!」


 だが、迷宮はそう簡単に彼を進ませてはくれない。

 足元の罠が微かな音を立てて作動し、宗介の行く手を阻む。


「面倒な仕掛けだ……ええい!」

「ソースケさん!」


 少し後方からライラの明るい声が響いた。

 彼女は小型の装置を手にし、熟練の手つきで罠を仕掛けている。


「この罠に誘い込めば捕まえられます! 少しだけ時間を稼いでください!」


 宗介はライラの声に応えるように再び矢筒から矢を引き抜いた。

 彼の射る矢が金のミミックの硬い体に傷を付け、逃げ道を限定していく。


「逃がすか……」


 金のミミックは足を止め、再びその巨大な大口を開けて威嚇する。

 その一瞬、ライラが最後の罠を完成させた。


「今です! 誘い込んで!」


 宗介は矢を放ちながらミミックの動きを制し、見事罠へと追い込んだ。

 罠が作動し、ミミックが絡めとられる。


「これで終わりだ――!」


 宗介は最後の一本を弓にかけた。

 その瞬間、脳裏に不思議な光景が広がる。


 荒れ狂う海原、揺れる船の上、扇の的を射るひとりの武士の姿。


「……なんだ、今のは……?」


 一瞬、手が止まる。

 しかし、ミミックが抵抗を始めたのを見て、宗介は迷いを振り払った。

 視線を定め、深く息を吸い込む。


 重藤弓を限界まで引き絞り、矢の先端が金のミミックの大口に向けられる。

 扇の的が目に浮かぶ――一射必中。


「行けぇぇぇっ!」


 矢は青白い光を帯び、空を裂くように放たれた。

 その軌跡は真っ直ぐに金のミミックの大口を貫き、崩れ落ちる。


 迷宮に静寂が戻る中、宗介は弓を降ろし、深く息をついた。

 脳裏に残る武士の姿が再び浮かび上がるが、宗介は首を振り、それを追い払う。


「先ほどのあれは……」

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