第19話 サムライ、クラフターと潜る

 宗介はため息をつき、素早く駆け寄ると恒次つねつぐを抜き放った。

 一閃でスライムを両断し、残りの魔物たちも次々と倒していく。


「……助かった!」


 少女は驚きと安堵の表情で宗介を見上げた。


「お前、大丈夫か?」

「は、はい! 本当にありがとうございます! あ、もしかして……サムライのソースケさんですか?」


《出会いきたーー!》

《ボロボロだけど可愛いなw》


 宗介は刀を収め、少女をじっと見つめた。


「俺のことを知っているのか?」

「もちろんです! 私は生産系クラフター配信者ライバーのライラといいます。配信で見たサムライ姿のあなたに憧れて……でも、こうして直接お会いできるなんて感激です!」


《コラボ配信の予感!》

《マジックバッグ制作フラグが立った!!w》


「……で、何が目的でこんな場所に来たのだ? 戦うのが苦手のようだが……」


 宗介の問いに、ライラは少しうつむきながら答えた。

 彼女の装備は明らかに戦闘向きではない、生産系クラフターらしく作業に適したものだ。


「その……どうしても必要な素材があって。でも、一人ではとても厳しくて……」


 彼女の声が次第に小さくなり、グリモアが割り込む。


生産系クラフターの方々は、収集した素材でアイテムや装備を作るのが得意です。ライラさんも、きっとその一環でこの迷宮に来たのでしょう}


 宗介はしばらく考え込むように目を閉じた後、低く呟いた。


「なるほど……だが、あまりにも無謀だ。俺が通りかからなければ、どうなっていたか……」


 ライラは深々と頭を下げた。


「本当にありがとうございました! それで……もしよかったら、この後もご一緒させてもらえませんか?」


《コラボの予感!》

《この子、どう絡んでくるんだろう?》


 宗介は少し眉をひそめ、グリモアに視線を向けた。


「グリモア、どうする?」

{ライラさんが必要な素材を集めるのに同行するのも、配信として面白い展開になりそうですね}


 宗介は短く息をつき、軽く頷いた。


「わかった。だが、足手まといになるなよ」


 ライラは顔を輝かせながら深く頭を下げる。


「ありがとうございます! 本当に助かります!」


 その後、宗介とライラは迷宮の奥へと進むことになった。

 途中、ライラが素材について説明を始めた。


「実は、この古代迷宮にいるミミックの素材がどうしても必要なんです。それを使えば、より便利な収納アイテム――マジックバッグを作れるんです!」


 宗介は彼女の言葉に目を細めた。


「……俺と同じ目的であったな。そのミミックとやら厄介らしいが?」


 グリモアが補足する。


{ミミックの内臓は非常に貴重な素材です。逃げ足も速く入手は困難です}

「魔物の臓腑を巾着にするのか……」


《マジックバックでワンマンアーミーだな!》

《確かに内臓だと思うとな》

《加工したら全然わかんねえよ》


 宗介は少し考え込み、そして静かに頷いた。


「よし、俺がライラの分も討ち取る。そして、作ってもらう……それでいいか?」

「話が早いです! ぜひお願いします!」


 ライラは満面の笑みを浮かべた。

 その笑顔を見た視聴者たちも、画面越しに興奮を募らせる。


《ライラきゅんの笑顔が眩しい》

《んで生産系クラフターは何ができるの?》


 二人は、古代迷宮の奥深くへと足を踏み入れた。

 冷たい空気が肌を刺し、暗闇の中で足音が響く。


{宗介様、この迷宮には非常に巧妙なトラップが仕掛けられています。十分ご注意を}

「罠だらけの道を通るというのか……これは厄介だな」


 すると、ライラが自信満々に手を挙げた。


「それなら私に任せてください!」


 宗介が驚いた表情でライラを見つめると、彼女は瓶底眼鏡を軽く押し上げた。


「このマジックアイテムで罠の位置を看破できます。それに……解除用のツールも自分で作ってきたんです!」


《ライラ、頼もしい!》

《これがクラフターの力!》

《さっそく便利すぎw》


 ライラが迷宮の壁に近づき、眼鏡がわずかに光る。

 すると、床や壁に隠された罠の構造が浮かび上がったようだった。


「やっぱり……ここに隠しスイッチがありますね」


 彼女は手早く工具を取り出し、見事な手さばきで解除作業を始める。

 数分も経たないうちに、機械的な音が鳴り響き、トラップが解除された。


「これで大丈夫です! もうここを通っても安全ですよ!」


 宗介は感心したように腕を組んで頷いた。


「ふむ……戦いは不得手だと言っていたが、こうした技術には長けているようだな」


 グリモアがすかさず声を挟む。


{宗介様、古代迷宮の罠は非常に巧妙で危険とされてきました。しかし、ライラさんの技術でここまで安全に進めるとは……早くもコラボ配信が成功したと言えますね}


《たしかにトラップ無視できるのデカいw》

《ライラちゃん、めっちゃ優秀じゃん!》

《これはコンビとして最高だな!》


 ライラは恥ずかしそうに微笑む。


生産系クラフターとしての誇りですから!」


《ライラちゃん天才か!》

《こういう役割分担いいよな!》


「よし、行こう。道が開けたのならば、進むだけだ」


 ライラも元気よく頷き、二人は迷宮のさらなる奥深くへと歩を進めた。

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