正解のその前
~アンケート~
授業で深く学びたい時代や出来事はありますか?
……
授業で深く学びたい人物はいますか?
……
年表の暗記は得意ですか?
……
その他・自由記入
……
思ったことを言う。
「そもそもどうして明日回収しないのかな? アンケート自体一枚見るのに一分もかからない。クラス全員三十人分見たって三十分もしないよね?」
「そうだね」
ぼくに習い、杜さんも自分のアンケートに目を落とした。
「記述式だけど、だいたいのひとは時代や人物を一言だけで書くと思う。『戦国時代』『武田信玄』みたいに。実際にあやちゃん先生もそういうのを求めていると思う。誰も『ありますか?』の問いに『ある』『ない』で答えない」
ぼくは笑う。
なかなかに面白いジョークじゃないか。
「そうだね。確かに単純な有無を訊いてるわけじゃないもんね」
ぼくとしては同意のつもりで言ったんだけど、しかしわざわざ口にせずとも冗談だったのだろう。返答したぼくに杜さんは顔をしかめた。
むっとし、
「いいから考えて」
と。
「……」
そりゃあ、まあ、考えてと言うなら考えますとも。
ぼくはイスの背もたれに背をやり、アンケートを見た。
話を整理しよう。
まず、日本史の若林先生が産休に入り、今日から臨時職員が来ることとなった。
その臨時職員は授業中にアンケートを配った。
アンケートは数問で、書く方も見る方も一分とかからない。
それなのに今日の回収は受け入れず、用紙にある通りもらうのは『次の授業』。
しかしこれも蓋を開ければ『来週』にまで延びた。
そして杜さんが言うには、あやちゃん先生は校内マニュアルの勉強で忙しい。
多忙を理由に受け取らないなんていかにもありそうだけど……。
いや、ちょっと待て。
先生自体は受け取りたくても受け取れなかったとしたらどうだろう。
それも個人的な理由とかではなく、例えば他に誰かが関わっているとしたら。
そう、それはきっと……。
おや?
ふと見たプロフィールの中に興味深い一文を見つけた。
「……」
ふうん、なるほどね。わかったかもしれない。
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