第7話 散々なスキー旅行

「はぁ……」


 サクラはつい溜息を付いた。

 それも仕方が無い。

 何せあんなものを見つけてしまったんだ。


 とりあえず現場保存のために、遺体には雪を上から掛けた。

 柔らかい雪なので、掘り起こそうと思えば簡単に掘り起こせる。


 おまけにポプラとセッカの魔法で固めてある。

 警察が山に登って来る頃には、簡単に掘り起こして遺体を回収できるだろう。


「散々だったわね」

「はい」


 正直三日間個のことで一杯だった。

 そのせいでまともにスキー旅行を満喫できなかった。

 同じ気持ちなのはヒマワリとツキカも同じで、何よりもセッカに元気が無かった。


「セッカさん、大丈夫かな?」

「まさか、自分が愛した雪山で事故が起こるなんて、思わなかっただろうからね」


 セッカにとってこの雪山は、昔から慣れ親しんでいる。まさしくホームだ。

 けれど事故が起きてしまったのは仕方が無い。

 直接的に関係が無くても、スキー客は減ること間違いなしだ。


「今年、私達の後に、お客さんは来るんですかね?」

「来ると信じましょう」

「それくらいしか、できませんもんね」


 サクラとポプラには祈ることしかできない。

 しかし落ち込むのもおかしな話なので、荷物を纏めると、バス停に向かった。

 コテージの近くにバス停があるから、きっとヒマワリとツキカも待っている筈だ。


「本当、散々だったよ」


 コテージをチェックアウトすると、サクラ達は外に出る。

 バスが来るまで後十分も無い。

 これを乗り過ごしたら次は半日後だ。


「あっ、ヒマワリとツキカ。もう待ってるんだ」

「ヒマワリは温かいから、ツキカも寒さには強い。だから大丈夫なのよ」

「ううっ、気温に干渉できる魔法はやっぱり憧れます」


 サクラとポプラも二人の元に向かう。

 ここから後はバスが来るまで耐えるだけ。

 そう思ったけれど、急にコテージの扉が開き、サクラは呼び止められる。


「サクラ」

「ん? セッカさん!」


 振り返ればセッカの姿があった。

 落ち込んでいる様子は何処にも無い。

 サクラは安堵してセッカの元まで向かうと、時間も少ないから、手短に話をした。


「セッカさん、大丈夫ですか?」

「大丈夫、問題は無いよ」

「よかったです。あのセッカさん、スキー、教えてくれてありがとうございました」


 サクラは丁寧にお礼を言った。

 色々あったけど、少ない時間でセッカはサクラ達にスキーとスノボーを教えた。

 もっとも、満足教えるまでは行かなかった。


「それはいい。でも散々だった」

「そ、そんなことはなく、その……」

「気にしなくてもいい。次はちゃんと教えるから」

「は、はい……」


 一応スキーはできるようになった。

 だけど満足にレジャーを楽しむことはできなかった。

 だからなんとも言えない表情になるも、セッカは次の約束もしてくれた。


「それと、コレ」

「うわぁ、綺麗なスノードームですね!」

「私が作ったから、持っていって。一つしかできなかったら、サクラにあげる」

「いいんですか!? ありがとうございます」


 手渡されたのは綺麗なスノードームだった。

 セッカが道の駅とかハンドメイドでたまに売っている奴と同じ。

 特殊な魔法が掛かっていて、きっと細工がしてある。


「サクラ、バスが来たぞー」

「あっ、すぐ行くよ!」


 そうこうしているとバスが着てしまった。

 乗り遅れる訳には行かない。

 サクラはもう一度セッカにお辞儀をすると、走り出した。


「サクラ!」

「は、はい?」

「走ると危ない。少しなら、バスも待ってくれる」

「あ、ありがとうございます」


 サクラはセッカに注意された。

 そうだ。雪山を甘く見ちゃいけない。

 こんな浅めでも雪は完全に固まっている訳じゃないから、サクラは気を付けてバスに乗り込んだ。

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