仲間たち①
学校では体育祭の準備が始まっていた。体育委員が仕切る、役割決めのクラス会。そこで、誰もが意表を突かれる出来事が起こった。僕だ。クラスごとに作るポスターの作成リーダーの役に、僕が立候補したのだ。
皆、呆気に取られたが、ほかに候補もいないので、ポスターは僕が作ることに決まった。
その他、大事な役職が埋まっていき、何者でもない連中は、それぞれ適当な仕事に割り振られていった。僕にも三人の部下ができた。伊藤、鈴木、山下。はっきり言って冴えない男子たち。きっと話が合うに違いない。
放課後、ひっそりと静まり返った教室で四人は集まった。僕の主導で、ポスターに描くイラストのアイデアを出し合い、役割を決め、雑談なんかもした。次の日も、その次の日も集まり、少しずつだが着実に、共同で一つのものを作り上げていった。
伊藤はアイデアマンだし、鈴木は論理的で、山下は大胆な意見を言うことができた。みんな、僕を慕い、尊敬してくれた。
やがて僕がイラストを描いて持ってくるまでになった。まさに花形。最大にして、最後の大仕事である。みんなからの期待の言葉を胸に、僕は家に帰った。
その晩、僕の部屋には、遅くまで明かりが点いていた。僕は熱心に絵を描いていた。何かに没頭している瞬間は、こんなにも楽しい。「友達」がいなくても、世界は明るく、面白い。広がった世界を紙の上に描き出し、出せば出すほど、新しいアイデアとともに世界が広がる。そんな素晴らしい時間。絵は夜が明けるとともに完成し、窓の向こう、青白い建物の輪郭を覆うようにしてせりあがってくる大きな光の存在を感じつつ、僕は短い眠りに落ちた。
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