第16話 1973年4.29国士館vs朝高、新宿決戦大抗争事件 その6
「石野さん!」
サカン高番長・石野がリーケンタの飛び蹴りで線路に落ちたことで、慌てて二人のサカン坊がホームの端まで駆け寄り石野を救出しようとする。
線路上に落ちた石野は、その際、頭をレールに打ち付けた為、意識が朦朧としていて、二人の「電車が来ます!早くこっちに!」という焦った声が耳に届いていなかった。
目の前が歪んで見え、ここがどこか分からなくなっていたのだ。
(??ここはどこだ?あいつら何でおれに向かって叫んでいるんだ?)
その時・・・・・・。
プァー!
山手線外回りの電車が、運悪くホームへ大音量の警笛を鳴らしながら入ってきた。
石野が線路に落ちている時、チョーコーとサカンの戦いは、チョーコー側10名対サカン連合10名の状況になり、チョーコー有利へと変わっていた。
持っていたチェーンをリーエイシュクに奪われた門田は、逃げようとしたが、リーエイシュクに捕まり、そのまま両手で胸倉を掴まれた門田は、近くにある売店の中にそのままぶん投げられてしまう。
売店にいたおばちゃんは、悲鳴をあげながら店から逃げ出す。
無人になった売店の中には倒れた門田が1人。
何とか起き上がった門田は、売店の透明な冷蔵庫内にあったジュース瓶を取り出し、チョーコー生たちに向かって無我夢中で投げまくる。
劣勢な上に、投げられたダメージで冷静さを欠いた門田は、チョーコー生とホームに残ってこの乱闘を見ていた乗客の区別がつかず、投げたジュース瓶がチョーコー生だけでなく一般乗客にまで当たってしまう。
それに驚いた乗客たちは、急いでその場を離れるため、階段を駆け足で降りて行った。
その際、70代の老婆が一般乗客にぶつかり、階段を転げ落ちて腰の骨を折る重傷。
ジュース瓶が頭に当たった50代のサラリーマン男性も負傷してしまう。
また、その近くでは、サカン高・鳥海が、チョーコー生・カクコウジ相手に角材を振り回していた。
その際、鳥海の角材で肩に当たった女子高生が肩を負傷した。
ソンセイケンは、ホーム上で逃げる上本を追っていた。
「まてこの野郎!」
上本は逃げながら折れた木刀の代わりになる得物を探していた。
(な、何かないか・・・・・・)
上本は焦っていた。
(チョン高どもがこんな強かったなんて・・・・・・。今までボコしてきたチョンどもは何だったんだ)
今まで上本は、国士魂として日本でデカイツラをしている在日コリアンたちを「チョン高狩り」と称して、朝鮮中学生や高校生を無差別に襲撃、喧嘩してきた。
そのどの喧嘩でも連戦連勝してきた上本は、今回のチョン高狩りも楽勝だと高を括って、意気揚々と参加していたのだ。
その当てがものの見事に外れてしまい狼狽していた。
この作品を読んでいる読者の日本人の中には。
上本の様に
「チョンどもはこんな強くなかった。理想の朝鮮高校を描いてるんだろう」
みたいに思うかもしれないが、昭和の朝鮮高校は、確かに日本最強のバンカラ高校ではあったが、国士館などの関東中からごんたくれどもが集まる不良学校と違い、在日の子息が通う普通の学校である。
(日本人の中には、昭和の朝鮮高校には不良しかいないと思ってる人が多い)
だから、朝鮮高校に通ってる生徒の大半は、普通の学生であり、今でいうオタクもいればガリ勉もいる在日達にとっては普通の学校である。
当時の朝鮮中高級学校は、3000名もの在日が通っているマンモス校だったため、自ずと不良の数も多く、喧嘩に強い男たちも多かった。
チョーコーの不良学生は、身だしなみもバッチリ仕上げてきたので、喧嘩強さ以外でも目立った。
それ故に、東京中の不良から畏怖と羨望の的で見られていたのだ。
(その反動が、現代令和の時代になってきているのもかもしれない)
だが、サカン高の上本の様な日本の不良たちは、朝鮮学校の生徒と見るや、見境なく襲撃、喧嘩をふっかけてきたので、チョーチュー、チョーコーの普通の生徒やオタク、ガリ勉系も襲撃された。
さすがの天下のチョーコー生でも、オタクやガリ勉まで喧嘩が強いという訳ではない。
そういうチョーコー生を狩っていい気になった日本の不良たちが
今になって、ネットなどで
「チョン高は弱い」
「1人でチョン高数人をぼこした」
「サンペン奪ってやった」
と実情を知らず、書き込んでいるので、在日の私からして見たら
「朝鮮中学生やチョーコーのオタクや一般生徒を襲撃して喧嘩に勝った!チョン弱いとか言ってて情けな~。何もしらね~のかい」
日本人のアウトローの情けなさに墳飯モノである。
だから上本みたいな男は、本日、本当のチョーコーの恐ろしさ強さを、この新宿決戦で嫌というほど知る事になった。
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