第6話 東京朝高のリーと神奈川朝高のサイ
赤羽
「おい、こいつら知ってるか?」
襟にサンペンのバッジをつけた、如何にも不良と言われそうな風体をした男が、右手に男が映った写真を掲げながら、2人の同じ学ランを着た男たちと一緒に現れ、街中でだべっていた不良2人組に質問してきた
「なんだよ。あんたら誰?」
「朝鮮だよ」
「あ・・・」
いきなり現れた不良グループに警戒していた2人組は、その男たちが朝鮮高校だと知るとバツが悪そうな顔になり、しおらしくなった
しおらしくなった2人組の様子にも、態度は変わらず質問をリーケンタは続けた
「で、こいつら国士館の上本とかいうらしいんだが、こいつの家や行きつけの場所など知ってるか?」
「国士館っすか・・・、この写真の奴は知らないっす」
「奴は知らない?」
「ええ、まあ・・・、知り合いが国士館に行ってるもんで」
「なら、そいつからこいつの事聞き出してくれねえか?」
「ええ!?ま、まじっすか!?」
「お前名前は?」
「わ、ワキタです・・・」
「そうか、俺はリーケンタってんだ。もしチョーコー生に喧嘩売られたら俺の名前を出せ。そしたら俺たちもお前らには手をださん」
リーは、ワキタと名乗った男に、持っていた国士館上本の写真と電話番号を渡して3人組の朝高生は去っていった
「ふう、あれがチョーコーか・・・」
「ガタイやばかったな・・・」
「焼肉食ってるからか?」
「しかし、意外と話が通じそうな相手だったな」
「ああ、てっきり噂通り問答無用でいきなり鼻鉛筆やられるかと思ったぜ」
リーケンタは、東京朝高3年であり、朝高の空手部「拳道会」3段の猛者であり、全国の朝鮮学校対抗の体育大会空手の部で準優勝した男でもある。
拳道会とは、在日コリアン最強の男である中村日出夫が作り上げた拳の道を探求する最強の空手団体である。
ちなみに昭和時代は、団体に所属しているのはほとんど在日コリアンで、拳道会出身の有名な武道家をあげるとすると、倉本成春、極真空手の盧山初雄がいる。
二人とも在日コリアンでもある。
話を戻すが、激闘の末、その大会に優勝したのは、大阪朝高の七本槍と言われるナニワを仕切る大阪朝高の7人組の内の1人であった。
その話は、また別の時に・・・・・・
場所は変わり、渋谷駅前
渋谷駅前の忠犬ハチ公像があるエリアの広場に、5人の不良学生が一列に並ばされていた。
1人は、あの国士館生である。
その5人の不良の前に2m近い大男と隣に、一般人よりはでかいが2mの男と比べると小さくみえる180cmの男が並んで立っていた。
2mの男の耳は、潰れていて餃子耳になっていた。
2mの男が、その5人組に大声を張り上げる。
「おい、チョッパリども、こいつ知らねえか?」
右手に、リーケンタと同じ写真を持っていてヒラヒラと揺すりながら5人組の前にかざす。
「い、いや。知らないっす・・・・・・」
パンチパーマの不良がおどおどしながら答える。
ドカァ!
その瞬間、パンチ頭の不良学生が2mの男にぶん殴られてフッ飛ばされた。
残りの4人はあっけに取られ、内心この場をどう切り抜けようかビクビクしながら考えていた。
「次ィ!」
2mの男は、次々に同じ質問を不良学生たちにしていくが、みんな同じような答えが返ってくるので、その2mの男はだんだんイライラしながらその殴る拳にどんどん力が入っていく。
そして、最後、メインディッシュとばかりに国士館生の前に2mの男が近づき、こう告げた。
「俺は、神奈川朝高のサイってもんだ。お前らさかんはチョウチュー(朝鮮中学生)やチョウコー生を散々卑怯な手で襲撃してくれてるよなぁ!?」
サイと名乗る2mの男の襟にはサンペンがつけられキラキラと輝いていた。
ちなみに、随分芝居じみたしゃべり方をしているが、ヤクザ映画に影響されたらしい。
詰問されている国士館生は、腕を組みながら口を真一文字に結んで黙っていた。
決して仲間は売らねえ!そう決意しているような態度だった。
「右翼はこんな時だんまりか?徒党を組んでる時は随分威勢がよかったが、今日は随分静かだな」
サイの隣の同じく神奈川朝高生のブンが、国士館生を挑発する。
「・・・・・・・」
国士館生は相変わらずだんまりを決め込んで一切しゃべる気配がない。
朝高生2人と国士舘のにらみ合いが数分間続いたその時、目を見開いた国士館生がサイに向かってツバを吐き捨てた。
ペッ!
それがサイの学ランに当たる。
その瞬間、サイが国士館生の両耳を掴み膝蹴りを顔面へ連打、ブンも加勢し一緒に殴りつける。
ドカバキドコ!
渋谷駅を通行中の人間たちが足を止めてその光景を眺める。
一切抵抗せず、数分間2人の朝高生に殴られ蹴られた国士館生は、地面に横たわって気絶したのか動かなくなった。
ペッ!
殴り終えたサイは、地面にツバを吐き捨てそのままブンと共に渋谷を後にした。
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