第3話  一緒になるためには

 

 浴室のタイル敷きの洗い場に、美幸が静かに横たわっていた。

 彼女の体は冷たくなり、呼吸はしていない。ワンピースを着た彼女の姿は風呂場では違和感があった。しかし、今はそんなことは関係ない。


 彼女の首には、僕の手で絞めた赤黒い痣があった。索条痕さくじょうこんというのだろうか。

 青白い顔で半目を開き、顔の表情筋は緩みきっていた。


――苦しかっただろうな。


 美幸の首を絞めた時の感触を思い出し、僕はぶるりと震えた。だけど、のんびりはしていられない。

 彼女の体を腐敗させるわけにはいかないのだ。

 そう思いながら、僕は浴室の入口に置いた包丁をそっと手に取った。

 

 今から、美幸を解体する。できる限り小さくばらばらにしようと思っている。



 ***



 換気扇をまわした風呂場で、僕は美幸を解体し始めた。


 まず、美幸の衣類をすべて脱がした。そして首にまず包丁で切れ目を入れた。骨に包丁があたったのを確認してからのこぎりを使い切断した。何かの小説で、最初からののこぎりを使うと肉を巻き込み、鋸の刃が消耗してしまうと記憶にあったからだ。

 腕、足も順番に先に包丁で切れ目を入れてから、のこぎりを使った。大きくパーツごとに分別すると今度は関節ごとに小さく切り分けた。

 

 時間が経っていても動脈を切断したときには大量の血液が驚くほど流れ出てきた。


 

 美幸と行為だと思うと、むせかえるような血の匂いの中ででも、神聖で尊い行為だと感じられた。パーツごとに分けられた彼女の体は愛おしく思えてならなかった。


 


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