第8話 オオグモ

一息つく間もなく、巣の主であるオオグモが近づいてくる。足を開けば、3-4メートルはあろうかという巨大さだ。そのオオグモが目の前まで来ると、おしりから糸を大量に吹付気つけられ、一気にぐるぐる巻きにされてしまう。


まずい、まったく身動き取れない。やばいよやばいよどうしよう。

と思っているうちに、オオグモと目が合った気がする。まあ、目もいっぱいあるし本当はどこを見てるかわからないけど......

私が動けないことをいいことに、ゆっくり近づいてくるため恐怖も倍増だ。

口には大きな牙があり、それが首筋めがけてスローモーションで近づいてきた。


「ギャー」

怖すぎるよ。

『助けて』

と思った瞬間、オオグモの動きが急に遅く感じ、体中に力がみなぎる。

そう、この感じ、女神モード発動。


女神状態ならぐるぐる巻き状態でも体を動かすことができるけど、こんな蜘蛛の巣上でこの前みたいに拳で殴ってもダメージ半減よね。そう考えた後になんとなく頭に浮かんだのはさっきからなっている雷。ぐるぐる巻きの中から強引に右手をオオグモのほうに向けて頭に浮かんだ言葉を叫ぶ。

「ゴッドサンダー」


右手から明らかに過剰な雷撃がオオグモを突き抜け天に上り、巨大な雷鳴を引き起こす。


オオグモを見ると頭は砕け散りすでに活動を停止していた。


やりすぎだよ。と自分で起こしたことに突っ込みを入れる。


少し焦げたにおいと、ちょっとカニみたいなおいしそうなにおいが周囲を包んだ。

いいにおい、このクモ食べられるのかな。じゃなくてこの糸どうにかしたい。


とりあえず窮地は脱したものの、蜘蛛の糸でぐるぐる巻きにされて蜘蛛の巣に引っかかっている状態のままだ。先ほどのゴッドサンダーのおかげで右手だけは自由になっているのだがここから抜け出すのは容易ではなさそうだ。


「ティアー無事ー?」

という声が聞こえてきた。

どうやらキュレネたちが山の斜面を降りて来たようだ


「無事だけど身動き取れないので助けて」


周囲を見回していたムートが

「なんだこりゃ?」

と糸でぐるぐる巻きの私と、オオグモの砕けた死体に驚く


とりあえず糸を外してもらおうとしたが複雑に絡まっていて外れない。ナイフで切ろうとしてもなかなか切れない。


ムートが

「この糸かなり丈夫だな」

とつぶやくと火の魔法で糸の端を燃やし始めた


「この糸火に弱いぞ」

と言ってこっちを見る。


「私も火に弱いから無理だよ」


ムートはナイフを火であぶる。すると糸は簡単に切れた。

熱に弱いんだ。


とりあえず服や体に当たらないよう丁寧に糸を切って体からはがしていく。ただ糸の粘着成分はところどころ残ってしまった。


「うへーでろでろだよ」


「大丈夫よ洗浄魔法+(プラス)で洗ってあげる。魔物の粘液なんかを落とすために開発された魔法よ」


「ところで目が真っ赤なのだけど大丈夫?」

「えっ?特に私は何にも感じないから大丈夫じゃないかな?」

そういえば、前に女神モードになった時も目が赤いって言われた

女神モードになると目が充血するのかな?


「じゃー魔法かけるわよ」


ということできれいになって一息ついた。


「で、何があった?」


「落ちた先でオオグモの巣に引っかかり食べられそうになってるところへ雷が落ちて助かったの」

と説明した。さすがにあんな強力な魔法を私が使ったのは内緒だよね。


さっきの巨大な落雷ここに落ちたのね。よく無事だったわね。なにか不思議な雷だったけど......


ギクッ、なんか疑いのまなざし?


「まあ、無事で何よりね」


私の無事を確認したキュレネとムートはすぐにオオグモの死体に近寄る。


「こんなオオグモ見たことないぞ」

「ギルドで言っていた未確認の魔物ってこれのことかしら?」


「とりあえず魔石を回収するか」

と言って残っていた胴体から魔石を回収する。

「結構大きいな、この大きさからするとかなり強そうだな」



「新種の魔物かもしれないから参考に足一本と糸を持って帰るか。本体は持ち帰れそうにないからな」


そう言ってムートは蜘蛛の足めがけて剣を振り下ろす。


「ガキン」

「すごく硬いな」


「関節の殻の薄い部分じゃないと切れないか?」

そう言って関節部分から足を切り落とした


「次に遭遇した時は関節狙いか」


「魔法だと火魔法がよさそうよ、殻の内側にもちゃんと熱が伝わるわ」

キュレネが早速試していた。


「火魔法なら糸も燃やせるし戦いやすそうね」

初めて遭遇した魔物って倒した後にも攻略法考えるんだ。


「もう少し谷を探索したかったけど、こんな雨で足場の悪い時に

これに遭遇したくないし、急いでギルドに戻って報告しましょう」



ギルドへ到着し先ずは普通に魔石を換金するために受付に提出する。


「Cランクの魔物

オーガ11匹

メガアプルム(大イノシシ)1匹


合計12匹で12万サクル


Dランクの魔物

ホブゴブリン2匹

オーク3匹


合計5匹で2万5千サクル


Eランクの魔物

ゴブリン10匹


2万サクルです」


一通りの査定が終わった後、オオグモの魔石を受付に渡す。


「これもお願いします」


受付はどうして一緒に出さなかったという雰囲気を出しながら魔石を受け取り、鑑定作業を進めながら固まった。


「えっ?、これ何ですか?少々お待ちください」

と言って席を離れ人を呼びに行ったようだ。


すぐに上司らしき人を連れて戻ってくると、魔石の鑑定結果について相談しているようだった。


やっぱり新種の魔物かな?

少しして結論が出たようだ。


「ギルドに登録されていない魔石です。新種の魔物の可能性があります」

詳しく話を聞きたいのでこの後お時間いただけますか?


「はい」


「その前に最初にお預かりした魔石の清算をしますね。先ほどお預かりした魔石については預かり証を発行しておきます」


「全部の合計で16万5千サクルです」

金貨1枚銀貨6枚小銀貨5枚をもらう

ギルドポイントは165だ。これでCランクまでの状況は510/3000。


「では、応接室へ案内します」


飲み物を出され、しばらく待たされたあと、ノックがあり2人が入ってきた。

一人は先ほどの受付嬢の上司っぽい女性、もう一人は体格の良く立派な身なりの初老の男性だ。

こちらも立ち上がる。


先ずは初老の男性がギルドマスターのアルベルトと名乗り、次に女性が受付課長のセリシャと名乗った。


こちらも名乗り席に着いた。


先ずはギルドマスターのアルベルトが口を開く。

「時間を取らせ申し訳ない、早速だが先ほどの魔石の魔物について話を聞きたいのだが」


「足を開くと3-4mはある大型の蜘蛛の魔物です」


「今までの未確認魔物の目撃証言はどうなっている?」

「はい、確かに巨大な蜘蛛という情報もありました、他にも5mはあったとか、足がいっぱいある巨大な虫だとか。最近噂になっている魔物の可能性はあります」


「他に、特徴のようなものはないかね」


「初めて見た魔物だったので、参考までに足と糸を持ち帰りました」


「何?、それは素晴らしい、是非見せてくれ」


「その代わり、今まで得ている情報を私たちにもください」


「わかった。いいだろう」


持ってきていた、足と糸を渡す。


ギルドマスターが受け取りしばらく確認する。少し険しい顔になり呟く。


「初見ではBランクのパーティでも苦戦しそうだな」

「これは、君たちが倒したのか?」


「そうです」

キュレネは何の躊躇もなく平然と答える。

雷が落ちて死んだことにしたんだけどなぁ。

私が倒したってばれてる?それとも倒せる自信があるから私たちが倒したことにしても問題ないってことかな?


「とりあえずの攻略法としては物理攻撃なら関節狙い、魔法攻撃なら火魔法がよいでしょう。その糸も熱に弱いことを確認しております。」

「この前、冒険者になったばかりと聞いていたがずいぶんしっかりしているな。」

とギルドマスターがほめた後、実務的な内容でセリシャさんが


「この足と糸をギルドにいただきたいのですかよろしいですか?その分報酬は上乗せします」


「はい」


「あとはこの魔物との遭遇場所を教えていただきたいのですが?」


「セプバーロ大森林の地図はありますか?」


「はいお待ちください」

といって棚から地図を取り出す、大雑把な地図だがムートは迷いなく遭遇ポイントを指し示した。

ムートってGPS機能でもついてるの?


「ほう、ブランカ山の辺りか」


「それから、蜘蛛の魔物の絵を魔法絵師に描いてもらおうと思います。この後、お付き合い願えますか?」


「はい」


「今回の情報や魔石の報酬については、後日改めて清算させていただきます」


「それでは私はここで失礼する。今回の情報提供感謝する。これまでの情報については、調査しているパーティに説明してもらうので、別途、日程を調整させてもらう」

と言ってギルドマスターは出て行った。


ということで打合せは終了しセリシャさんに連れられて魔法絵師の店に行く。この前の同じ店だ。


はっきり目撃したのは私だけだったので私の記憶から絵にしてもらう。


2度目だったのでばっちりだ。セリシャさんは特急料金を払い急ぎで仕上げをお願いしていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る