第6話 施療院と魔物狩り1
今日から精霊教会の施療院の仕事だ。といっても一週間に一度でそれ以外の日は森で魔物狩りだ。
施療院へ着くと治療士として派遣されたキュレネとムートは紫色の神官服を私はところどころ傷んでいる緑色の神官服を渡された。
なんでも神官にも階級があり
一般的な儀式や平民への対応をする神官は紫色の服
その神官を補佐するような仕事をする神官は青色の服
神官見習など修行中のものは緑色の服
だそうだ。ちなみ緑の服を着た神官は通称若葉神官と呼ばれている。
さらに黒い服の神官もいて大きな儀式や貴族への対応をしているとても偉い人なので
出会うことがあったら貴族と同等に敬意を払って対応しなければならないとのことだった。
私、キュレネたちより2階級下のあつかいなんだとか思っているうちにキュレネとムートは丁寧に青色神官に案内されて出ていく。一方私の方は
「あんたはそっちの入り口から入って」
ととても扱いが軽い。
あっちってどこなのよと思いながら辺りを見回すと、開いている扉があった。ここでいいのかなと思いながら恐る恐る中に入ると衣類の入った籠がいくつも置いてある部屋だった。
「何だい?」
40代ぐらいの迫力のある女性の青神官が声をかけてきた。
「今日、手伝いにきたティアといいます」
「ああ、そういえば一人来るって言ってたね。私は班長のスサナよ。
今日は洗濯の日だから洗濯を手伝ってもらうよ」
「はい」
洗濯って洗濯機なんかないだろうしどうやるんだろう。洗濯機なんてないよね。
川で洗濯?
「今日は初めてだしクララと一緒に働いてもらうわ」
と紹介されたクララは見習の若葉神官で、歳は私より若そう。
「よろしくお願いします。私、隣の孤児院に住んでるのでこの施療院の事も小さいころから良く手伝っているんですなんでも聞いてくださいね」
「ティアです。こちらこそよろしく」
「では早速ですが水汲みからやりましょう」
そう言われ井戸まで一緒に行く。
「井戸からすぐ横にある貯水槽へ水を入れます」
「これどれぐらいまで入れるの」
「いっぱいです」
この貯水槽うちのお風呂よりだいぶ大きいじゃないの。井戸から汲んでいれるんだ.....
この貯水槽は少し下にある煮沸洗用の釜のある小屋とさらにその下にある洗濯場への供給用のようだ。
すでに洗濯場で数人洗濯をしているのが見えた。
「私、井戸から水を汲んだことないの。やり方教えて」
「えっ?井戸を使ったことがないんですか?今までどうしてたんですか?」
そうだよね。やっぱり井戸の使いかたを知らないなんて変だよね。なんて誤魔化そうか、面倒だから正直に言っちゃえ。
「水道っていう水が出てくるところがあったのよ」
「湧き水みたいなものですか?」
「まあそんな感じ」
本当は違うけど
とか何とか言っているうちに、釣瓶での水の汲み方を教えてもらう。こういう生活の常識早く覚えたいよ。
「ちょっと水を入れててもらえますか?私、今日の午前中は煮沸洗浄の当番なんです。さっきあの小屋でお湯を沸かしている途中だったで見てきます。」
「えっ、今ここに水入れてるのに、もう小屋でお湯沸かしてるの?」
「それ、今日2回目の補充なんです」
なんと朝一で一回使った後だったのか。大変だな。よーし、ガンガンやって終わらしちゃおう。
今の私は力持ちなので割と簡単に終わらせてしまった。
しばらくしてクララが戻ってくる。
「ずいぶん早いですね ティアさんて力持ちなんですね。私、力がなくて水汲み苦手なんで助かります」
つい最近力持ちになったんだけどね。身体強化されてなかったら私には無理だったよ。
「では煮沸小屋まで移動しましょう」
小屋に行くとクララと一緒に木の棒で釜の中の洗濯物をぐるぐる回しあと取り出して冷ましてから絞って干すという作業を繰り返した。
「クララ交代だよ。ご飯食べてきな」
と声がかかり午前の仕事は終了となった。
お昼ご飯はパンと豆の入った簡単なスープだった。
午後は交代して小屋の下のほうにある洗濯場で洗濯。水につけて足踏みして汚れを落とすのだそうだ。それをした後、絞って干していく。その後、午前中から干してあった乾いている洗濯ものを回収したところで夕刻の鐘が鳴り、今日の私の仕事終了した。
洗濯だけで1日終わっちゃったよ。施療院の中や他の施設もも見たかったんだけどな。
「次は来週ですね。同じ曜日に来るなら次回も洗濯ですよ」
「わかった。今日はありがとう」
着替えて門で待っているとげっそりしたキュレネたちが出てきた。午前中は外来患者を午後は入院患者にヒールをかけまくっていたそうで最初はペース配分がわからず丁寧にやっていたら魔力を使いすぎてしまったらしい。
次の週までの間は森で魔物狩り、それほど日数もないので近場での活動だ。とはいっても日帰りではない、この付近の人が言う森『セプバーロ大森林』は非常に広大で
1日、2日で行けるような範囲は近場らしい。
「とりあえず今回の狩りでは『オーガ』をメインターゲットにするわ。オーガはそこそこ強いし、生息数が多いから狩りの実力をつけるぼうにはちょうど良いわ。報酬は少な目だけどね。当然、他の魔物も出くわしたら狩るけどね」
携帯食料やテントなどを持ってを持って森に入る。オーガの生息地まで1日。2日間そこで狩りをして、帰りに1日、合計4日の予定
途中、ユゥバムースというたてがみのついた体長50cmぐらいある灰色の巨大ネズミの群れに出会い10匹倒す、食用になるとのことで、1体だけ解体し、肉を調理して食べる。残りの一部は魔法で加工して保存食に、残りはもったいないけど魔石だけ回収した。残念ながらこの世界にはいっぱい物が入る魔法袋みたいなものはないのだ。
1日中あるいて目的地に着くと拠点づくりとして、テントを張る。簡易結界付きで、中にいると気配を消してくれるので魔物に気づかれにくいが完ぺきではないので、運が悪いと襲われることもあるので見張りは必要ではある
食事をして、すぐに休む、見張りは交代で行った。特に何も起こらず朝を迎える。すぐ拠点を中心に周辺を探索するもオーガ、その他の魔物も見つからなかった。
次の日も、同様に朝になったらすぐに探索を開始した。しばらくしてオーガ3匹発見した。
身長2m50cmぐらい、筋肉隆々でこん棒みたいなものを持っている大きな赤色の鬼だ。
こわいよ。こんなのと戦いたくないよ。
「よし、一人1匹ずつ倒そう」
「えーっ、あんなのを一人で倒すの?」
「オーガを一人で倒せるようになって中級冒険者だ」
「私初心者なんだけど」
「お前の実力なら大丈夫だ」
そういった後、ムートがオーガへ向かっていく。それに気づいたオーガが棍棒を振り下ろすと、ムートはそれを避けながら、こん棒の上から剣を振り下ろす。こん棒が地面をたたく、そのまま剣でこん棒を押さえつけながら、なんと口からオーガの顔めがけて火炎放射し、オーガを倒してしまう。
「どうだ俺の『ドラゴンブレス』は?」
正直、驚きで声も出ませんて感じ。
キュレネの方も動き、目にも止まらぬ速度で、レイピアをオーガの腹へ突き刺す。
「ピアスファイア」
致命傷とも思えない攻撃にオーガは倒れこむ。
「今の何?」
「突き刺したレイピアの先から炎の魔法を叩き込んだのよ」
「レイピアの先から魔法?」
「そう、突き刺した剣の先から魔法を発動できるの。結構えぐいでしょ。これ導魔のレイピアといって特殊仕様なの。普通の剣ではできないわよ」
体の中から炎でやかれたらひとたまりもないよね。
「残りはあなたよ」
オーガの動き自体はそれほど早くないので攻撃をかわすのはそれほど難しくない
隙を見て切りかかるも表面だけしか切れない。
「固い」
かなり強い攻撃をたたきこまないと深手を負わせられない。
振り下ろされる棍棒を避け、カウンター攻撃でこん棒を持っている手首めがけて思い切り振り下ろす。
手首を切り落とし、そのまま畳みかける。
「お見事」
これがCランクのオーガか、このぐらいで精一杯って感じ。私、かなり強化されていると思ったんだけど中級冒険者程度?それに引き換え二人ともめちゃ強いじゃん。
やっぱり、最初に魔物を倒したあの時の力『女神モード』どうにかして使えないかなぁ。と思いながら魔石を回収する。
帰りの途中 10m近い
このヘビの毒は薬にもなって高く売れるとのことで、あっさり倒し、魔石のほかに毒袋も回収した。
このヘビが今回の魔物狩りの最後の獲物となった。
冒険者ギルドにもどり換金をする。その前に依頼掲示板を見に行く。
「あった」
といって
受付に魔石を渡すと
オーガ3匹 Cランク
ユゥバムース(タテガミネズミ)10匹 Fランク
ニーグルムセプス(黒毒蛇)1匹 Dランク
合計4万5千サクルで45ギルドポイントだった。
依頼掲示板の毒袋と合わせれば5万5千サクル55ギルドポイントだ。
前回の88ポイントに足すとCランクまでの状況は143/3000
まだまだCランクは遠い。地道に稼ぐしかないか。
ここで受付より注意のアナウンスがあった。
「ここ最近、森で見たことがない魔物を見たとかいう情報が増えているのでお気を付けください。常時依頼掲示板に張り出しましたが未確認魔物の情報が何かあればお知らせください」
「未確認の魔物がいるのね、チャンスだわ」
キュレネが小声で呟いた。
次の日、魔法絵師の店に絵を取りに行く。
しっかり色が付けられカラー写真のような出来栄えだった。
「ちょっと見せて、ティアを呼んだ人がこの人なのね」
キュレネが一瞬固まる
「金色の髪の若い女性なのね。この国の衣装ではないけれど、この服装だとかなり上級の貴族だと思うわ。どこかの国の王族かもしれないわね」
確かに
「この国をお救いください」
とか言ってたから王族の可能性もありそう。
「上級貴族や王族となると、貴族とのつながりがないと会うのは厳しいな。平民が直接訪ねて行っても門前払いされるだろうし」
そうか、どこの誰かわかっても貴族だと会うのも難しいのか......
「この神殿みたいな場所って心当たりない?」
「普通の神殿は長方形に柱が配置されてるから普通の神殿ではないわね。この円状に柱が配置されている建物は見たことがないわ。といっても、本の知識だけで他の町の神殿を直接見たことはないけどね」
とりあえず冒険者ギルドに行き。依頼票の確認のついでに魔法絵師に描いてもらった『祈りの女性』の絵を見せながら聞き込みをする。本当は聞き込みついでに依頼の確認だけどね。
しかし、何も情報は得られず。
うーん、これはなかなか厄介だね。どこの国の人かかわからない貴族に、どこにあるかわからない神殿のような建物って手掛かりがあまりないじゃない。先は長そうだな......
今度の施療院でも聞いてみよ。神殿関係ならわかるかも。
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