第3話 ウィスバーロの町1
「先ずはティアの服と装備を調達しましょう。そのピンク色の服、冒険には向かないし、悪目立ちするから変えたほうがいいと思うの。それに見たこともないとてもやわらかい生地だから高値で売れるわ。そのお金で装備一式を調達するのはどうかしら?それにギルドへの登録費用や宿代も必要だし」
私もパジャマで活動するのは嫌だし、お金も必要だよね。迷わずキュレネの提案に賛成した。
「この先に私の知っている服飾品店があるわ、仕立てもできるし中古品も扱っているから買取もしてくれるの」
そういうとメインストリートを進み、広場の一つ手前の道を右に入り数軒歩いた先のお店に入った。
お店の中に入ると、入口周囲はきれいに飾り付けをされており、りっぱな衣装の展示もあった。
「いらっしゃいませ、本日はどのような御用でしょうか?」
こちらに気が付いた女性の店員が話しかけてきた。
「この子の服を売って、冒険者用の装備を一式そろえたいのだけど」
と言ってキュレネは手を私のほうへ向ける。
私はポンチョを脱いで店員に着ているパジャマを見せた。
一瞬目を丸くして驚いた表情を見せた店員さんは、こちらでお待ちくださいと言って応接室へ案内された。しばらくして、店主と共に戻ってきた。
「これは、キュレネ様ではありませんか以前はお世話になりました」
店主は挨拶などしつつ、その間にお茶を出してくれた。
そこから本題に入る。
「見たことのない感じの衣装ですな、すこし触らせてもらってもよいですかな」
袖の部分を触ったり裏返しているけど同時に手も見ているように感じた。もしかして、私の手を見てなにかを判断している?
確かに、外国の人がいきなり来て着ている服を売りたいだからね。誰でも警戒するよね。
「訳アリのようですが、色々聞くのはやめておきましょう。詳しく査定したいので服をおかしするので着替えてきていただけますか?」
女性店員が更衣室へ案内してくれる、体のサイズを確認し代わりに貸してくれたのはチュニック型のワンピースだった。それに着替えてすぐに戻り商談を続ける。
「非常にやわらかで肌触りがとてもいい、縫製もすごくしっかりしていますね、
この布地はなんですか?」
私がタグを見て
「ポリエステルとレーヨンですね」
と答える
「ポリエステル?レーヨン?聞いたことがありません。それにそこに書かれているのは見たことのない文字ですがそこにそう書いてあるのですね。このボタンも......」
この町や人々の様子からすると文明レベルは中世ぐらいかしら?正直に言うと古代とか近世といわれてもわからないけど、まだ化学繊維とかプラスティックはないよね。
店主は真剣に各部を確認し、ふと何かを思い立ったように質問をしてきた。
「これはアーティファクトですか?」
アーティファクトはかつて神々が使っていたというもので、その多くは王侯貴族などの有力者が所有していると言われてい希少なもので、時々ダンジョンや遺跡などからも見つかるものだそうだとムートが耳元で教えてくれた。
私が本当の女神様だったらアーティファクトって言えるかもしれないけど、そこまでは言えない。
「いえ、私の住んでいた国の品です」
「なかなか興味深いですね。いかほどでお売りしていただけますかな?」
「この子用の冒険者の装備一式を私たちの服装レベルに併せて、それと小金貨2枚(=20万サクル)ほどでいかが?装備一式はすぐに必要なので中古でお願いします」
キュレネが答えると、店主はキュレネを見て少し困ったような表情を浮かべた。
「キュレネ様の服のレベルはかなり高いですね。少々お待ちいただけますか?」
「はい」
店主たち2人が出ていき、別の人がお茶のおかわりを持ってやってきた。しばらく時間がかかるということだろうか?
以前、ここへ来た時の話や服装の話などをしながら待っていた。15分ぐらいたっただろうか店主が戻ってきた。
「つい最近、貴族家のご令嬢向けに作ったものがありました。キャンセルされて引き取っていただけなかったので新品です。要望に合うとよろしいのですが......」
と言って豪華なブルーの服、白のズボン、ベルト、ロングブーツ、ウエストバッグ、リュック 靴下など一式を出してきた。
よろしければサイズなども確認したいのでお試着いただけますか?
これがここの冒険者の服なんだ、かなり豪華だよね ドレスとか騎士服に近い感じに見えるよ。ここでのファッションがよくわからないのでキュレネとムートの反応を見る。問題なさそうなので再び試着室へ行って着替えるとまるであつらえたようにぴったりだった。
今ぴったりだとすぐに大きさが合わなくなるんじゃないかと店員さんが心配していた
やはり子供に見えるらしい、もう成長は止まってるので大丈夫だ。
キュレネは問題ないことを確認すると
「では服装はこれでいいわ、武器も欲しいのだけど」
と要求する。
「これでもう値段分釣り合っていると思うのですが」
店主は勘弁してほしいというような顔でそうこたえる。
「装備一式とお願いしたはずです。とりあえず剣も見せてください」
そういいながらキュレネは席を立ち私たちを連れて半ば強引に中古品売り場のほうへ移動した。
武器屋ではないので大した数はなく簡単にチェックができた。
剣は3本だけ、どれも刃の部分が1m以上もあり私には長すぎる気がする。護身用のナイフは数本あったがさすがにメイン武器としては短すぎる。
ふと見ると隣の売り場に目を引くきれいな剣がおかれていた。これならちょうどよさそう。しかし。値段を見ると先ほど見たどれよりも格安だった
「これは?」
「子供の練習ように作られた模擬剣です。昔の英雄が使ったとされる魔剣グラムの縮小レプリカで子供には人気があるんすよ」
見た目が新しい服に合いそうだと思いながらさやから出す。模擬剣というだけあって刃が付いていない。エンチャントがあるからこれでいいよね。木の棒ですらあの切れ味だったんだから。
「これがいいです」
「本当によろしいのですか?」
店主は私ではなくキュレネやムートの顔を確認したが特に反対はなかった。
「それであれば、ご提示いただいた条件でかまいません」
交渉成立である。
装備一式に加え小金貨2枚をもらった。が当然冒険者装備だけで生活するわけにもいかないので普段着や下着なども追加で購入する。残金は小金貨1枚と銀貨5の15万サクル手元に残った。
着替えた後に残っていたキュレネの作ってくれた簡易ブーツと武器にしていた木の棒については処分を頼み店から出た。
店から出るともうすぐ夕方という時間になっていた。
「今日中に冒険者登録まで終わらせましょう」
思った以上によい装備がそろって満足そうなキュレネがそう言うと速足で町の広場に面したところにある冒険者ギルドへ向かった。広場周辺には冒険者ギルドのほか、この町の役場、商業ギルドなどの建物が並んでいた。これらがこの町で勢力のある団体だそうだ。
冒険者ギルドへ入ると以外にも中はきれいで、ガラの悪い人も少なく、男女比率も同じぐらいだった。ちょっと安心をしたのもつかの間、一斉に注目を浴びた。理由はすぐわかった3人とも他の人に比べ服装がとても豪華なのだ。悪目立ちしないようにといって服を買ったはずなのに......
「周りの視線が怖いよ」
小声でそういいながら顔を隠すようにうつむいて歩いていると
「冒険者なんてなめられたら負けなの、このぐらいでちょうどいいのよ
ティアも堂々とした立ち振る舞いをしてね」
キュレネはすごく強気だった、あまり目立たず生きてきた一般庶民の私としては結構きつい。
結局、注目はされているもののどこかの貴族と思われているのか皆引き気味で誰にも話しかけられずに受付に到着した。受付はカウンター形式になっており、4つの窓口があった。並んだ窓口の担当はきりっとした顔つきのおねえさんだ。
「この3人の冒険者登録のお願いします」
とキュレネが話しかけると少し緊張した顔で
「失礼ですが貴族の方でしょうか?」
「平民です」
との返事を聞いて表情が和らぐ、そして主に私を見ながら
「登録は15歳以上になりますが......」
もしかしてこの世界じゃ合う人みんなに子ども扱いされるのかな?私はため息をつきながら私肩を落とした。
皆15歳だと伝えると15歳未満だった場合ばれるとペナルティーがあるという話を聞かされてから登録の準備をするということでしばらく待たされた後別室に呼ばれた。
部屋は十畳ぐらいの大きさで、飾り気はなくすっきりとしていた。正面はカウンターで仕切られておりカウンターの前には椅子が並べられていた。
「どうぞお座りください」
といわれ席に座るとカウンターの奥には何やら機械のようなものが設置されているのが見えた。
先ほどのおねえさんがカウンター越しに話し始めた。
「自己紹介が遅くなりました受付担当のソフィアです、よろしくお願いします。まず登録作業の前に冒険者の説明をさせていただきます。
冒険社ギルドに登録するとギルドの様々な仕事の依頼を受けられるようになります。依頼された仕事を無事完了すると、その仕事の報酬が支払われ、それとは別にギルドポイントも加算されます。
依頼の種類は常時依頼、個別依頼、指名依頼の3つがあります
常時依頼は、魔物から回収した魔石や素材、薬草の収集などが主な仕事で
収集できたときにギルドへ持ってくればよいという依頼です。常時依頼掲示板に張り出されているように魔物や薬草の種類ごとに引き取り金額が異なります。時期によって引き取り額が変わることもありますので注意してください。また、掲示板にない魔物の魔石や素材はその都度査定して引き取らせていただきます。
個別依頼は個別依頼掲示板に張り出されたもので、依頼者が個別に報酬を定めた案件です。依頼を受けるためには、掲示板にはってある依頼書を受付に持ってきて受注手続きをしてもらいます。ランク設定をされているものはそのランク以上ではないと受けられませんのでご注意ください。ランクについては後で説明を致します。
また、依頼内容、納期などが守れず依頼失敗となった場合は罰金やギルドポイントマイナスなどのペナルティーが発生します。
指名依頼は依頼者またはギルドからの直接の依頼になります。報酬等はその都度相談となります。
ここまでよろしいですか?」
「次に冒険者ランクですがAからDランクまであります。最初はDランクから始めることになります。依頼をこなすともらえるギルドポイントを規定以上ためるとランクアップします。
Cランクへは一人1000ギルドポイントでランクアップします。3人パーティだとするとパーティで3000ギルドポイントをためればランクアップできます。
上位ランクの昇格はギルドポイント以外にも条件があります。詳しくは必要になった時に別途説明をいたします。
Dランクは初級者でこの町周辺の比較的簡単な依頼がメインになります
Cランクは中級者で主にこの国内の様々な案件に対応していただくことになります
Bランクは上級者で各国の重要な依頼にも対応していただきます
Aランクは最上級者で最重要案件やギルドの運営にもかかわってもらうことになります。場合によっては貴族扱いとなります。
複数人で活動する場合はパーティ登録をしてもらいます。依頼はそのパーティメンバーの上位ランク者に合わせた受注ができますが下位者に対しての保護責任なども発生しますのでご注意ください。
ランクの説明は以上です」
「登録料と年会費として一人、1万サクル(=銀貨一枚)いただきますがよろしいでしょうか?
冒険者登録をすると各国どの町の冒険者ギルドでも同様のサービスが受けられます。またギルド直営の宿も特別価格で利用可能です。
なお、年会費を納めない場合、冒険者資格が失われます。
最後に、虚偽の報告、不正な手段での依頼達成などが発覚した場合、降格や、場合によっては役人に引き渡したうえギルド追放などの処分もありますので十分ご注意ください」
キュレネは一応、ムートと私の顔を確認し、登録をお願いすると
「文字は書けますか?」
2人は「はい」と答えたが私は文字の読み書きができるかわからなかったので返事ができなかったが皆に登録用紙が配られた。それを見ると、名前、年齢、性別、種族、連絡先、活動不能時の連絡先の記入欄があった。
文字の読み書きも問題なさそうだ。
とりあえずキュレネが書き始めたのでそれを参考に記入していく。
種族ってなに?
隣のキュレネに聞いてみる。
一瞬、何を聞かれたのかわからない顔をしたが
「人でいいんじゃないかしら?」
「バーサーカーじゃないのか?」
とムートが即座に反応した。
種族ってそういう分類のことを聞いていたのか、私「人」だよね、まあ「女神」と書くわけにもいかないし。ちなみにキュレネは「人」ムートは「竜人」と書いてあった。
受付のソフィアさんが
「バーサーカーは種族ではなく、特殊能力を持った人に分類されると思いますので「人」としてください」
と言ってきたのでホッとする。
バーサーカーとは書きたくなかったからよかったよ、ムートの中で私はバーサーカー確定なの?
次の項目は連絡先か......
「連絡先ですが、私たちしばらくはギルドの宿にお世話になろうと思っているのですがその場合はどのように書けばよろしいですか?」
「決まった住居がなければ「不定」としてください」
皆「不定」と記入。
次の項目を見る
「この活動不能時の連絡先とはなんですか?」
「簡単に言うと、ギルドの仕事で意識不明の重症になったり、死亡した場合に知らせてほしい人はいますか?ってところです」
そんな仕組みもあるんだ、でも私、この世界じゃそんな人いないのよね。
2人はゴルフェ島ロコブ村のヴィート村長と記入していた。
私は「なし」と記入した。
それを見ていたソフィアさんが
「ゴルフェ島出身なんですか?呪いは大丈夫なんですか?たまに島の人が来ますが体力のありそうな人でもかなり辛そうですよ」
「いくつか例外があって大丈夫な人もいるんです」とキュレネが言い
「竜人には影響がないしな」とムートが付け加えた。
どういうことか聞くと、ゴルフェ島のダンジョンには魔王が封印されていて、その魔王によって島民全員が呪われてしまっていて常に魔力や生命力が奪われている状態になっているらしい。さらに島から離れようとすると呪いの力が強くなるため島の外で活動するのは難しいとのことだった。
この世界、魔王とかいるんだ、あんまり聞きたくなかった情報だよ。キュレネたちはその魔王が呪いをかけた島の出身なんだ、なんかいろいろありそうでちょっと怖いな。
「では登録作業に移ります。ムートさん、ここに血液をお願いします」
楕円体の魔石が差し出された。針で指先をさし、出てきた血を石につけると中に吸収されていった。それを装置のようなものにセットしなにやら操作をしていく。
「魔力パターンが登録されました、ギルドカードをお渡しします。ギルドでは以後ギルドカードと魔力により個人の識別をしますので、手続等の際はカードと魔力提示をお願いします」
魔力認証なんてすごいハイテクじゃないの、文明レベルが中世くらいと思ったけど魔法があるから一概に中世レベルとは言えないんだ。
「魔力パターン解析の結果も出てきました。火、風、光3種類の魔法に適性があります」
「今、光魔法を使える人が足りないので貴重な存在ですね」
光魔法は文字通り光に関するだけでなく回復や身体強化など生物にとってプラスに働く効果があり、逆に闇魔法は毒、麻痺など状態異常を引き起こす効果があるんだそうだ。
「次キュレネさん」
また同様に魔石が差し出され、魔力パターンの登録をする。
「すごいです。火、風、水、土、光、闇6つ全部の属性で適性があります。エレメンタルマスター候補ですね」
「エレメンタルマスター?」
「神様に認められ魔王すら倒せる力を与えられたものをエレメンタルマスターと呼びます。神様に認められる条件として6つの属性すべてにおいて優れた力を持ちかつその力にふさわしい精神を持つことと言われています。これまで、何度もエレメンタルマスターが魔王を倒して世界を救っています。かつてこの地を初めて統一した皇帝もエレメンタルマスターだったのですよ」
と教えてくれた。
「残念ながら能力すべてを高めるのは難しく、6つの属性を使えても一つ一つは他の人にかなわない器用貧乏な人も多いのですけどね」
魔王が現れるたびに勇者が現れるみたいな感じなのかな?
最後に私の番
血を出すの嫌だなと思いながら恐る恐る針で指をさす。痛みは大したことはないがなんとなく苦手だ。魔石につけて登録してもらう。
「えっあなたもですか??火、風、水、土、光、闇、? 1,2,3,4、5,6,7あれ魔力パターンの解析エラーかしら?、6属性以外にも不明な結果が混ざっています。
装置の調子が悪いですかね。
もう一度お願いします」
やだよって言いたいところを我慢する。私、普通の魔力パターンと違うのかな?面倒なことにはならないでほしいなと思いつつもう一度、登録作業を繰り返す。
「うーん、同じですね。魔力パターン自体は問題なく登録されていますし6つ全部の属性で適性があるのは間違いありません。あなたもエレメンタルマスター候補です」
この人、変な結果はなかったことにしちゃったよ。まあ変な追及されるより助かるかな。
「これで冒険者登録は終了です。この3人でパーティを組むことでいいですか?」
「はい」
「それではパーティ登録もお願いします」
といって登録用紙を出してきた。
「ところで皆さん回復魔法のヒール系魔法は使えますか?」
2人は「はい」と答えた。さっきもこんな場面があったなと思いつつ
「私は使えません」
と答える。
ソフィアさんは少しうれしそうな顔をしながら
「対応できる人がいなくて困っていた依頼があります。2人ヒールの使い手がいれば十分です。
詳しく説明をしたいので担当を呼んできますね。
ギルドからの指名依頼になるのでギルドポイントは期待できますよ。
パーティ登録用紙に記入しながら少しお待ちください」
と言って部屋から出て行った。
再びパーティ登録用紙に目をやるとパーティ名の記入欄があった。
「実は、パーティ名は二人の髪の色をもとに『赤と白の奇跡』とするつもりだったのだけど3人になったから変えたほうがいいわね」
「じゃあ、「赤と白と黒の奇跡」ってとこですか?」
「長いだろそれ。安直だな。」
「じゃあ、全部色混ぜるのはどうです?」
「それって何色だ?」
「白と黒を混ぜると灰色、それに赤を混ぜると、くすんだ濃いピンク?あってるかな?」
別の混ぜ方も考えてみる
「赤と黒を混ぜると茶色な感じ、それに白を加えると薄茶色??」
「微妙な色ね......]
「混ぜるバランスにもよるけどマイルドな赤系統の色ね。名前でいうと苺色やクラーレット辺りかしら?」
どっちの色名もいまいちわかんないよとか思っていると
「クラーレットでいいんじゃないか?
音のが響きが結構いいと思うぞ」
うわー適当な決め方だよ、でも悪くはないかな。
「では『クラーレットの奇跡』ってことで」
と言いながら書類にパーティ名を記入する。
「ところで「奇跡」の部分には意味があるの?」
「もちろんあるわ」
キュレネが説明を始めようとしたところで扉があき2人が部屋に入ってきた。一人は受付のソフィアさんもう一人は初めて見る男性だ。
「指名依頼担当のエステバンです。よろしくお願いします」
と軽く挨拶をした後、早速依頼内容の説明に入る。
「精霊教会からの依頼で施療院での、臨時の治療士募集があります」
「施療院?」
「施療院は貧しい人たちの治療を無料で行う精霊教会付属の施設なんです。ケガなどで引退した元冒険者の利用も多いことからアフターケアもかねて冒険者ギルドも運営に協力しているのです。ご存じのように5年前の流行り病で、治療に当たった光魔法士の多くがなくなったため、今は光魔法士が不足をしています。この町の精霊教会の光魔法士が引退したため、新しい光魔法士が来るまでの間、冒険者ギルドから光魔法士を派遣してほしいという依頼です。週1回の特別治療日の対応を2回実施していただきます。
「で報酬は?」
「一人につき銀貨1枚(=1万サクル)と100ギルドポイントです。もともと慈善活動的な意味合いが強いので金額は多くありませんがその分ギルドポイントを多くお付けしています。また、その日の昼食は無料で提供されます」
「100ギルドポイントか、ゴブリンなら50匹オーガなら10匹相当だな
かなりの優良案件だな、よし、引き受けよう」
「ヒールが使えるのは2人と伺いましたが、2人で実施するということで良いですか?」
「できれば3人でパーティとして依頼を受けたいのですが」
「ヒールが使えない方は普通の奉仕活動扱いでよろしければ同行も可能です、給金は出ませんが食事と2ギルドポイントは提供します」
もともとこの世界の常識も知らないし、いろいろ体験しておくのもいいよね。
「はい、それで構いません」
「急な話で申し訳ないのですが、3日後が初回になります。3日後の朝、直接、施療院へ行ってください」
もう実施間近だったんだ、どうりで急いで私たちに依頼してくるはずだ。
とか考えていると
「この受注票にパーティ名と代表者のサインをお願いします」
エステバンさんの声を聴いたソフィアさんがあわてて
「ああ、すいません、パーティ登録の途中でした」
と言ってパーティ登録用紙を受け取る。
「パーティ名は「クラーレットの奇跡」
リーダーがキュレネさん、メンバーがムートさんとティアさんですね。登録完了です」
ちょうどその時、夕刻を知らせる教会の鐘がなる。
「なんだか冒険者としてスタートを祝福してくれているみたいね」
といいつつキュレネが席を立ちみんなで冒険者ギルドを出て宿に向かった。
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