第8話 駆除

背中に感じた殺気は嘘じゃなかった。

何とも言えねぇ、グチャっとした感触が、私にガチだと教えてくれた。


「誠に這い寄る蝿は、駆除しなきゃ」


「ご挨拶…が…すぎるよ…ババア…!」


おいおい、その誠がドン引きしてんぞ?

私をハメようとしたわけじゃなさそうで良かった。


「お母…さん…なんで…?」


「なんで?当然じゃない。美香は誠のこと愛してるのよ?」


いい歳して一人称名前呼びは痛えよ。

それも息子にもかよ。

なかなか終わってんな。


「薫と仲良くするって言うから僕は…」


「仲良くするわけないじゃない!美香だって…美香だって…まだ…誠としてないのに…」


間違いなく誠はロックなやつだよ。

でも、このババアはハードロックすぎるよ。


「害獣駆除なの。誠に忍び寄る鼠は…駆除なの。ほら、ドブネズミ…死ねよ…早く死ねクソアマァっ!」


それ抜いたら溢れてくるだろ?

ガチで殺す気かよ?


見た目と随分と違うじゃねえかよ…

シンフォニックメタルってとこか…?


冗談じゃねえよ。

私は…Xより…BOOWYが好きなんだよ。


「誠…害虫は駆除したよ…?これで…美香と…」


「ハハッ…ごめんね、薫。僕のせいで…」


紅に染まる私は別にいいよ…

でもよ…なんで…おまえも…?


慰めるやつは…ここにいるぞ…?


あぁ…そうね…終わりはくるものだし…仕方ねぇ…


バカみてぇにはしゃいでた…あの日に…


じゃあな…


――終わること…感じてたわりに…ミジメだなぁ…





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