第7話 ご挨拶

何をしたかは覚えてる。

愛し合えた実感もある。

ただ、今となれば、何をそんなに恐がっていたのか分からねぇ。


「お母さんがね、薫にご挨拶したいって言ってるんだ」


「私もご挨拶しなきゃいけねぇからな。つーか、バクレるわけねぇじゃん」


「知ってるよ。でも、お母さんが言えって言ってたから」


明日は誠の誕生日なんだから、誠のお母さんに拒否られても押しかける勢いだよ。

そんな歓迎されても困るけど、なんでそんなウェルカムモードなのか分からねぇ。


結局、何も分からねぇまま、明日を迎えた。

分かってるのは、私が誠を心から愛して、それを祝う準備をしたことだけ。


まさか持ってるとかねぇよな?

楽器はやってねぇから持ってねぇはずだけど…


でも、ファン心理的には持ってたいよな?

一杯食わしてやりてぇ精神なのに自信がねぇ。


「薫ちゃんね。誠から色々聞いてるよ。いらっしゃい」


またウイスキーでも一杯引っかけてきたいくらいだったけど、日和ながら押したインターホンに反応して出てきた誠のお母さんは、ガチでウェルカムな感じだった。


誠もすげぇロックなやつだから、お母さんもロックなのかな?


「は、初めまして。石川薫と言います」


「ずっと待ってんだよ?さあ、入って」


遺伝なのか知らねぇけど、小さくて可愛い感じのお母さんに言われるがまま、私は家に入っていく。


私が来たことに気づいた誠が駆け寄ってくる。

来るのなんて当たり前なのに、なんでそんなに嬉しそうなんだよ?

おまえの彼女だぞ?


「薫ちゃん、ずっと待ってたんだよ?」


言葉は同じだけど、雰囲気が違った。


「泥棒猫を駆除するために」












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