第4話 宣言
家に帰っても、私のビートは高鳴ったままだった。
本当に頭から湯気でも出てたのかも。
帰るなりお母さんが私に近づいてきた。
「何かいいことでもあった?」
16年も私を見てただけのことはある。
娘の異変くらいお見通しってわけか。
「うん。最高だよ。彼氏できた」
「えっ?断らなかったの?」
「断る理由がねぇもん」
「お父さんには内緒にしててあげるね」
含みのある笑いをするじゃねぇか。
なんか知らねぇけど、父親は娘に彼氏ができると面白くねぇらしいからな。
今まで彼氏いたことねぇから知らねぇけど。
お父さんもそうなんだろうな。
お母さんはそれを分かってそう言ったんだと思うけど、誠に覚醒させられた私には、いらねぇ心配だよ。
私はお父さんが帰ってくるのをリビングでずっと待った。
そして、仕事から帰ってくるなり私は言った。
「彼氏できた」
お父さんは何も言わなかった。
ただ、ちょっと悲しそうに見えた。
同級生から告白されて断ったのを話した時は、そんな顔してなかったよな。
おめでとうくらい言ってくれてもいいじゃねぇか。
愛する娘が選んだ男なんだぞ?
私はヤリマンでもねぇ。
なんなら処女だよ。
見定めてやるから連れてこいくらい言ってくれてもいいじゃんかよ。
「ヤる時は、ゴムつけろよ…」
それだけ言って背を向けたお父さんの顔は、私には見えなかったし、その胸の内も分からなかった。
なかなかロックじゃねぇかよ。
さすが私のお父さんだよ。
それが私の率直な感想だった。
でも悪いけど私のほうがロックだ。
そんなつまんないオブラートはいらねぇ。
私が心に決めた男とヤる時は、そんなモンしねぇよ。
そんなモン付けさせるくらいなら、ヤる意味がねぇ。
私の最初は最後なんだよ。
最後の人と最初になるんだよ。
つまんないこだわりだけど、これは譲れねぇ。
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