第3話 答え
もう充分に女たらしか。
彼女いたことあるって言ってたもんな。
そんな自分に素直で羨ましいよ。
私も負けてられねぇ!
「誠といると、私も楽しいよ」
「うん。だから僕、薫のこと好きだよ」
頭から湯気でも出てそうだ。
なんて返事をしたらいいか分からねぇ。
いや…別に考えなくていいんだ。
感じたことをそのまま言葉にすればいい。
思い出したよ。
BOOWYを初めて聴いた時と同じだよ。
同級生が誰も知らなくても、昔の古いバンドでも、私はカッコイイって思ったんだ。
こんなガキしか友達がいなくても、そんなのに惚れているのも、事実じゃねぇか。
ロックってのは素直なんだ。
思ったことを正直に言わなきゃロックじゃねぇ。
つまんないことにこだわってちゃ…ロックじゃねえよな!
「私も誠のこと、好きだよ」
「薫って素直だね」
ちげぇよ、バカ野郎。
おまえが教えてくれたんだよ。
私が知ってたことを。
いつの間にか忘れかけてたことを。
おまえが思い出させてくれたんだよ。
「今、すごい可愛い顔してたよ?」
「うるせえな。クラスで3番目くらいには可愛いからな。ありがとよ…」
「学校で一番可愛いとかじゃないの?」
「JKなめんなよ。私が一番なわけねぇだろ。オタクアニメじゃねぇんだから」
誠の目には私がそんなに可愛く見えてんのか。
嬉しいけど、やっぱり照れる。
中学でも高校でも、別に告白されたことくらいはあるからな。
私はそれくらいには可愛いだろうよ。
でもよ、そうじゃねぇんだよ…
ロックだから、ぶりっ子になれねぇんだよ。
「何のアルバム聴いてたんだよ?」
「聴けば分かるよ」
さも同等かのように笑い、誠が差し出してきたイヤホンの片側を私は乱暴に受け取った。
何のアルバムの何の曲かは分かる。
ベスト盤だと分からないけどな。
ビートもクソもねぇ。
LもRも取るに足りねぇよ。
ただ、ガードレールに2人座って、安っぽい有線のイヤホンで繋がってる、その瞬間に意味があるんだ。
つまんない幸せな時間と共に曲は流れていく。
永久の時間を感じていたくても、夕暮れがそれの終わりを告げる。
「お母さんに怒られちゃう。もう帰るね」
「うん。またな。悪いお姉さんに絡まれたとか言うんじゃねぇぞ?」
「大丈夫だよ。彼女ができたってしか言わないから」
誠は冗談めかして笑う私の唇にそっと口付け、そう言って子供のように大きく手を振って帰っていった。
また私の頭から湯気でも出てそうだ。
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