第2話 禁じられた外の世界
「え?」
翌朝、僕はママから当然とばかりに告げられた一言に愕然としてしまった。
そんな僕を見て、ママはもう一度「当然でしょ」と言わんばかりの顔で繰り返す。
「貴方は不死身になったのだから、外に行くのは駄目よ。誰かに不死身だと言うのが知られたら、悍ましい事件に繋がってしまうわ。だからノア、貴方はこれからずっとお家で過ごすのよ」
「そ、そんな」
もう一度ハッキリと告げられた言葉に、僕はがっくりと肩を落としたけれど。「あ!」とある事を……パッと光った希望を抱いて、口を開いた。
「でも、ママ。スクールは」
「駄目よ。これからはママとパパが買ってくる教材で、お勉強をしていきましょうね」
行ってもいいよね? と、最後まで言えずに、僕の問いはピシャリと叩き落とされてしまった。
僕のショックが、また一段と強くなり、また一段と沈む。
するとママがスッと立ち上がって「あぁ、ハニー」と優しい声音と抱擁で僕を温かく包み込んだ。
「分かってちょうだい、これは全部貴方の為なのよ。貴方が不死身になったと分かれば、お友達は皆どうなると思うの? 今まで通りじゃなくなって、貴方を傷つけながら離れて行くのよ。そういう子だけじゃないわ。不死身なんて気持ち悪い、気味が悪い。学校に来ないでって酷い言葉ばかりをぶつけて、貴方を虐める子も居るでしょう。それはね、ノア。貴方が不死身な限り、ずっと続くのよ」
ママは辛そうに告げると、ゆっくりと身体を離した。そして「ノア」と僕の名前を優しく囁き、そっと少し乱れた前髪を整えながら言う。
「貴方が帰ってきてくれて幸せだって思うのは、もうママとパパだけなのよ。そんな酷い事実を実感して欲しくないから、ママとパパはノアにお家に居て欲しいの」
あんまりにも辛い未来の現実に、僕の頭はずうんと項垂れた。
……そんなの違うもんって言えない。
全部「嗚呼、そうだ。ママの言う通りだよ」って、心がうんうんと頷いているから。
「……分かったよ、ママ。僕、ずっと家で過ごすよ」
「良い子ね」
ママは僕の額に唇を落とし、チュッとリップ音が小さく弾けた。
けれどやっぱり、ずうんと暗いものがのしかかり、ぶわりと真黒の靄が胸いっぱいに広がっている。
僕の中では、軽やかに弾けるものは何一つなかったのだった。
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