PとUSA（高卒ニートの奮闘記）

第2話 ヤンキー

小学校卒業後、地元の中学校に進学することになった。

その中学校には、兄が在学していた。

兄は親や教師に反抗的な人間でヤンチャな友達や先輩たちとつるんでいた。

髪の毛をワックスでバッチリと整え、D＆Gの香水の匂いを漂わせながら、派手な服装で遊びまわっていた。

そんな自由気ままな兄に比べて、親や教師の言うことに従順であった自分の目にはその姿がとてもかっこよく映り、そんな自分がどこか窮屈に思えた。

だから入学前、「中学では、今までの自分を変えてやろう」「ヤンキーになって自由気ままに生きてやろう」と心に決めていた。

だが、進学した中学校は自分が思い描いていた環境とは全く違っていた。

私の進学した中学校は、公立ではあるが県下トップの進学率を誇っており、学区を越えて進学してくる生徒がいるような学校だった。

そのため真面目な生徒が多く、ヤンキーは絶滅危惧種に等しかった。

そんな中、自分が何か目立つことをすれば、それはすぐに教師や周囲の目にとまる。いわば悪目立ちするためには絶好の環境だった。

とりあえず目立とうと校則に反する服装にするなどして教師に注意されることから始めた。

ただ、金銭に関する考え方が厳しい家庭だったことと親と不仲になっていたことが重なり、自分で自由に使えるお金は手元になく、大体兄の服をくすねて着ていたが、寄せ集めの服だったので不恰好でダサかったと思う。

自分は兄が在校していたことで、入学後に先輩方から「お前、雅人の弟やろ？」と言った感じで話かけてもらうことが多かった。

そのため数少ないヤンチャな先輩たちと打ち解けるには時間が掛からなかった。

しばらくして私は柔道部に入部した。

父親が武道や格闘技をしていたこともあり、自分たちも幼いころから武道を習っていた。

その流れもあって、中学でも武道という選択肢で柔道部を選んだ。

また、兄が大会でよく入賞をしており、兄に出来るなら私にも出来るだろうと思っていた。

その柔道部で私のヤンキー志向を加速させる人物に出会った。

その人は、主将を務めていた「ヒロさん」だ。

彼は、他学区から通学して来ている先輩で、彼の地元にはヤンキーが多く、彼もまたヤンキーだった。

私は、この人に可愛がってもらうようになった。(ただ後ろに付いて行っていただけかもしれないが)

彼は自分が憧れていたヤンキーの王道のような人で、今まで出会ったことがないタイプの人だった。

そのため、ヒロさんと過ごす時間は新鮮で、非日常的な体験を与えてくれた。

他中に連れて行ってもらい彼の紹介で他校のヤンキーたちと交流を深め、河川敷や空き地でたむろしたり、タイマンの観戦をしたりと、ヤンキー漫画で見るような日常を送るようになっていった。

そんな生活を送るようになってからは、親や教師の言うことを聞くことが馬鹿らく思え、勉強など一切しないようになった。

冷静に考えると親や教師、社会に反抗することがかっこいいという思春期特有のだっさい奴になっていた。

中１の冬、事件が起きる。

私は暴行事件を起こした。

複数人の教師に囲まれてこっぴどく説教を受け、帰宅後には親からも叱責された。

「そもそも喧嘩ふっかけてきたの相手だから関係ねぇだろ」「なんでこんなに叱られんといけんのんや。くそだりぃな」と反抗的な態度で不貞腐れていた。

しかし、相手の家に謝罪に行くことになり、その態度を改めることになった。

母が相手の親に何度も頭を下げ、自分のために謝罪する姿が頭に残っている。

自分のせいでこんなにも母親に迷惑を掛けてしまい「本当に申し訳ない」と思った。

ただ、言葉にするのは難しく、母にもその時は素直に謝ることができなかったが、心の奥底で「もうこんなことはやめよう」と心に誓った。

それから大事になることは控えるようになったが、生活は変わるどころか悪化の一途を辿った。

授業を聞かず宿題をしなくなっていたせいで授業内容が全く分からなくなっており、学校に行くのが億劫になった。

同学年は半数が同じ小学校から進学してきている人で構成されており、非行に走る私を見限ってか小学校まで仲良かった友達たちとの間に壁を感じるようになった。

そういった色々なことが積み重なり学校をサボりがちになった。

また、ヒロさんが卒業し、他校のヤンキーとの交流も少なくなり、次第にヤンキーに対する興味も薄れ、非行をするのが面倒くさく馬鹿らしく感じるようになった。

そして自分が何をしたいのかもわからないまま、ただ時間を持て余すようになった。

そんな生活の穴を埋めるようになったのがゲームだった。

我が家は、ゲームをすることに反対の家庭でゲームは中々買ってもらえなかった。

買ってもらえるようになった後も1日30分までという厳しい制約があった。

だが、中学に入ると親のいうことを聞かず不仲になっていたため、当然そんな制約を守るはずもなくオンラインゲームにはまる様になった。

一番ハマっていたのは某有名FPSゲームである。