4話 ライラ

ーライラー


 私はライラ。

 とある田舎の村で育った普通の女の子。

 そんな私ですが、今は冒険者をしています。

 理由は、お友達と村近くにある森で山菜を採っていた時に大きなモンスターに出くわしてしまって絶体絶命になった時にある冒険者さんに助けてもらいました。

 その姿はとってもカッコよくて私も冒険者になりたいと思いました。

 お母さん、お父さんにはすごく反対されたけど、私はどうしても冒険者になりたいと説得する事が出来ました。

 説得する時に私は、2人に嘘を付いてしましました。

 冒険者に憧れたのは本当です。

 でも本当は、モンスターに殺されそうになった時、私はーーーーー凄く興奮してしまったのです。



 

 冒険者になるために私は、この世界で最も栄えてると言われているレキオン帝国を目指して旅をしていました。

 道中、親切な商人さんに出会い馬車に乗せてもらえたのは幸運だ。

 商人さんもレキオン帝国に商売をしに行く最中だったみたいで、馬車での旅が続きレキオン帝国について色々な事を教えてもらいました。


 ダンジョンのある大地に国を築き、ダンジョンでの資源を元に、多大な利益、発展、軍事力を持つ大国。

 ダンジョンでの資源が枯渇する事は無く、発明での素材に困る事はなかった。

 またモンスター蔓延るダンジョンでは、日々戦いに明け暮れてる者が多く、命を落とすものも多いが生き残ってきた者達はもれなく強い冒険者達で、その人達を帝国の人達は軍隊や騎士にスカウトすることが多く、結果強大な軍事力につながるようです。


 レキオン帝国の事について聞いていた私は、その中でもとりわけ気になるものがありました。

 帝国に存在する7人の伝説剣鬼《魔女》《超人》《機神》《金塊》《群体》《癒し手》と呼ばれる人達。

 田舎の村にいる私でも知っている有名な人達です。

 一人一人が御伽話に出てくるような凄い人達で、幼かった時の私もその人達が築き上げてきた伝説お話が大好きでした。


「なっははは。お嬢ちゃんも伝説のお方達を知っているみたいだな」

「当たり前ですよ!この世界であの人達を知らない人はいませんよ!」

「その通りだったな。なら冒険者になるお嬢ちゃんに良い事を教えてやる」

「なんですか?」

「レキオン帝国でランク6になると帝国の皇帝陛下に謁見することになるんだが、何とそこには皇帝陛下だけじゃなくその伝説の7人が迎え入れてくれて祝福してくれるんだ」

「本当ですか!!!??」

「おっ、おお、おおう」


 興奮のあまり商人さんに掴み掛かったことを謝り、先程の話を思い浮かべます。


(ランク6になれば伝説の人達に、何より《癒し手》様に会える!)


 聞き伝えられる話からでも分かる偉人。

 あらゆる者達の傷を癒し、心を救い、世界の破滅を止めた偉大なるお方。

 世界の象徴たる世界樹を再生させた伝説に止まらず、一つの種族を復活させた話まである。


「私はそんな《癒し手》様の大ファンなんです!」

「熱意は伝わったが、ランク6ってのはそんな簡単な話じゃないぞ」

「わっ、分かってますよそれぐらい」


 ランク6はレキオン帝国でもほんの一部しかいなくて、一人一人が信じられない力を宿していて、レキオン帝国意外の国に行こうものなら間違いなくその国の将軍になるほどと言われており、事実何人かの人達が将軍や重鎮になったりしているようです。


「俺も商売柄ランク6の冒険者と関わった事があるが、ありゃ同じ人間とは思えない程に別格の存在だったな」

「そんなになんですか?」

「ああそんなにさ。それこそ話す際は、有名なお方や、貴族様より緊張するほどさ」


 佇まい、品格、覇気、風格、装い、どれをとっても普通の人にはない何かを持ち合わせてるランク6はまさに雲の上の存在であるのだ。

 

「ランク6ってのは、言わば現・代・のレキオン帝国・・・・・・いや、世界の最高戦力なんだよ」



 レキオン帝国に着くまでの間に商人の人と話した事を思い出していたライラは、目の前の光景を見て思う。


ーーーー商人さんが言っていたことはこの事だったんだ


 爆散したスパイダークの事は忘れ、ただただユウの後ろ姿に見惚れながらライラは思うのだった。




 レキオン帝国に着き冒険者になった私は、そこで一緒に冒険者登録を行ったナルミ君とレキ君と一緒のパーティーになった。

 盾の私が前に、槍のナルミ君が真ん中に、魔法使いウィザードのレキ君が後ろに陣形をとっての戦法は上手くいき、自分で言うのもあれなんだけど良いパーティーなんじゃないかなと思います。

 ダンジョンでの進める階層も増えていったある日、冒険者ギルドから引率の方が付くという知らせがありました。

 なんでも、ここ最近冒険者の死亡率が増えてるとの事で、新人冒険の育成に励もうとの事だ。

 

 引率の人達は、冒険者の経験が豊富な方達で一緒にダンジョンに潜る際、ダンジョンでの役立つ事や、注意事項などを教えてくれてとても充実した時間だったけど、何故か次の日には引率の方は現れなくなりました。

 何故なんでしょう?


「貴方達に新しい引率の冒険者を紹介するわ」


 冒険者の中でも一際人気の受付嬢であるエレンさん。

 綺麗な青髪に、切れ長な目は意志の強さを感じます。

 私もこんなカッコいい女性になりたいと思い、心の中でお姉様と呼ぶようになりました。


「フン、僕達に引率はいらないと言ってるだろう。仮に入れるとしても僕並みに美しい人じゃなければ許さない」

「そんなこと言わない」


 呆れを交えた溜め息を吐くお姉様の気持ちはよく分かります。

 ナルミ君何であんなに自分の事を美しいとかカッコいいとか思ってるんだろう?

 悪いとは思うけどナルミ君はお世辞にもカッコいいとは程遠い見た目だと思う。

 顔が悪いってわけじゃないけど、特別カッコいいわけじゃない普通の顔だ。

 なんなら、レキ君の方が断然カッコいいと思う。

 いやあれは、美しいって表現が正しいなかな?中性的な見た目だし。

 そう言えばレキ君って男の子?女の子?

 とにかく私は今のナルミ君をなんて言うのか知っています。



ーーーーナルシスト痛い人です




「貴方達を引率する人の名前はユウよ」

「ユウ?」


 何処かで聞いたことがある名前です。


「そうね。貴方達も聞いたことないかしら『クロのヒモ』とも言われてるわ」 

  

 噂で聞いたことがあります。

 高位冒険者のヒモがいて、その人は色々な問題事を起こすと、特に女性関係で。


「言っておくけど実力は確かだし、経験も豊富よ。噂でよくない話を聞くかも知れないけど信頼もできる冒険者よ・・・・・・まぁ噂の方は自業自得な所もあるけれど」


 ユウさんを語るお姉様の目は確かにその人の事を信用している優しい眼差しだった。

 私もそんなお姉様を見てユウさんって冒険者のことが気になりました。




 最初に見たユウさんの印象は真っ白な人という表現の人でした。

 色素を感じない真っ白な髪に、透明感のある瞳、病人のように青白い肌、気怠げな雰囲気に似合わない優しげな顔立ちは確かに女性にモテそうな顔付きでした。


 こう言っては失礼かもしれませんが、私達よりも弱そうな印象を受けてしまい、本当にお姉様が言う実力のある冒険者に見えません。


 ダンジョンの3階層まで降りてみて、ユウさんが経験豊富だという事が十分に分かりました。

 モンスター遭遇時に私達の邪魔にならない位置取り、モンスターに対する対処、戦闘時のアドバイス、ダンジョンに対する知識などは、今まで引率してくれたどの冒険者より分かりやすく参考になるんものばかりだ。

 

 だからこそ気になった。

 ユウさんの実力がランクがどれ程なのか。




「俺のランクは6だ」


 ランク6

 目標でもある冒険者の最高峰。

 私達の目の前にはその高みにいる冒険者が佇んでいる。

 

(ユウさん) 


ーーー貴方は一体何者なんですか?

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