第3話 12/25 ②
いつの間にか届いていた、なみえからの友達申請を許可して、投稿を遡る。
「少なくとも雪だるまのクッキーから後を調べろ。
前は関係ない。」
雪だるま、帰り際に撮っていたイルミネーション、クリスマス市の露店、地下鉄…。
地下鉄…違う。
この路線は見送った改札の物とは違う。
なみえの写真の路線は東西に通る路線だ。
これは違和感がある写真だ。
「んー、これはヒントになりそうな気がする。
あの時南北線に乗って行ったんだ、乗り換えられないから、別のタイミングで撮った物だ。」
「つっても東と西で別れるな…次の写真は…。
レンガの建物?
喫茶店とかでたまにあるヤツだが、そこら中にあるぞ?」
「あー、これ知ってます。
喫茶店じゃなくって、劇場ですね。
小さな劇場です。
市民団体が劇をやる時とか、そんなに大規模じゃない演劇をやる時に使うところですね。」
「何処だ?」
「ここっすね。」
ユウタが指差した路線図は、西側の後ろから3番目の駅だ。
「うし、先に行け。
俺は店長に事情を話してから向かうから。」
「店は大丈夫ですか?」
「店長なら一人でもお釣りが来る、大丈夫だ。」
なんか、ショウ君はたまに異常に店長に信頼を置く時があるなぁ。
俺とユウタは喫茶店の制服の上からコートを羽織り、店を飛び出した。
とりあえず地下鉄に乗り、当該駅まで行かなくては。
駅に到着して、歩いて小劇場へと向かう。
「シンゴ君、こっから先の心当たりなんかある?」
SNSのアカウントを確認するが、最後の写真はただの白い壁がブレて写っているだけだ。
端に何かのプレートがあるのがかろうじて分かるが、なんて書いてあるかは読めない。
「写真の情報はこれくらいだな。
…助けての中身はなんなんだろうな。
例えばさ、ユニフォームが先走って、タクミ君の妹だからさらったとか、そういうパターンもあるだろ?
でもなんかしっくりこないじゃん。」
「そこまでする人達ではないですもんね。
…あとは、タクミ君が来たとか?」
「なんでだよ。
兄妹だぞ?」
「いや、それはそうだけど、タクミ君、ユニフォームを怪我させてまで逃げ回っているんでしょ?
本来は仲間同士なんだから理由を話せばわかってくれるはずじゃないですか。
そんな、怪我させるほどの事って相当でしょ?」
「確かに。
変な事になってんなぁ…。
あ。
どちらにしろ人目につきにくいところを選ぶって事だよな?」
「まぁ、可能性は大きいですね。」
「なら心当たりあるわ。
小劇場からさらに奥に進んだところ。
ユウタは2つ下だっけか、世代的に知ってるかな。
有名な心霊スポットがあんのよ。
本当に目と鼻の先に。」
「…あ!
知ってます!
幽霊団地でしょ?」
「幽霊団地?
あぁ、ユウタの世代ではそう呼ばれているのね。
俺らの世代は殺人団地って呼ばれてたよ。
でもそこだ。
本当すぐそこ。
歩いて5分くらいのところだから。」
◆
「あぁ、確実にここだわ。
ブレた写真に写ったプレートと西団地ってプレートがおんなじ色だ。
ほら、なんつーの?
青銅色?」
「そうですね。
…いや、でもここ相当広いですよ?」
コイツ友達が居なかったのか?
この殺人団地。
噂が山ほどあるが、どれも一つの棟についてだ。
3-A棟。
ここで事件があった。
簡単にいうと殺人事件があった。
ここは元々警察の寮で、沢山の家族が暮らしていたらしい。
しかし3-A棟にほぼ生き残りが居ないほどの大量殺人が起きた。
当時の新聞によると、精神異常者が入り込み6階から順にほぼ全員を殺して回ったらしい。
生き残りは当時4階に住んでいた男の子一人。
押し入れに隠れていて命が助かったとのことだった。
ワンフロア2部屋の作りで、1階はポストと集合玄関になっているので10部屋、10家族。
3〜5人家族が住んでいたとして大体40人が亡くなった事件は、その凄惨さから逆に報道は少なかった。
犯人を捕まえたはいいものの、容疑者自殺で終わった後味の悪さといい、その人数といい、心霊スポットになるのも当然の話だ。
国の箱物の一種なのとそこまで古くはないからか、取り壊されることもなく、誰も住まずに残ってしまっているのだ。
「つーわけで3-A棟に行こう!」
「え、誰も住んでないならどの棟でも良いじゃないですか。」
…確かに。
誰も近づかないし、12棟もある団地だ。
そのどれかに人がいたって誰も気にしない。
また心霊スポット巡りの若者がやって来たのだろうと思うだけだ。
「じゃあ二手に別れましょう。
シンゴ君はその3-Aを見て来てください。」
コイツは正気か?
人助けの為とはいえ、クリスマスに心霊スポットに来ているだけでも本当は心から嫌なのに、二手に別れましょうだ?
怖いだろうが!
「だからさ、沢山死んでるんだって…。」
「…え?過去の話ですよね?」
コイツ…店長くらい話が噛み合わないじゃないか。
イカれてんのか?
地域最強の心霊スポットだっつってんのに。
「あ、シンゴ君、怖いんすね?
良いですよ、二人でまわりましょ、危ないかも知れませんしね。」
「怖くないし!」
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