第ニ夜 陽だまりの恋心
今日は七月二十二日の登校日、朝焼けに染まる雲。俺はダッシュで走っていた。これじゃ完全に遅刻だろう。ヤバイな。引き戸をがらっと開けた。いつものメンツだった。竜馬さんが困り果てて、逆に結城先生が険しい顔で迫った来た。
「佐伯。今日は日本史の小テストだぞ。何考えてるんだ」
「結城先生。ごめんなさい」
「着席しろ。日本史の小テストだ。貴様ら。分かったか?もし赤点を取ったら俺の家まで勉強会だぞ」
結城先生は格好いい。そして冗談が通じない、厳格で有名だった。確かに日本の武士みたいだろうなと思う。昨日夜遅くまでバイオハザードのゲームしていたので結局寝たのは3時だった眠気を覚ましていた。今日もハルちゃんの隣の席に座れなかったとしゅんと項垂れる。ハルちゃんは俺にとってとても可愛らしい女の子だった。彼女に好意を持ってるとは知られたくない。相変わらずとても可愛い。長い黒髪は綺麗だ。最近やけに可愛くなっていた。本人に聞いたら。メイクするようなったと言っていた。小テストは簡単に解けた。ふて眠っていたら手紙が回ってきた。正広が手紙を書いていた。変わらない日々。続くといいな。俺のところにもその手紙が回ってきた。広げると絶句した。
”中条が告白されたぞ。本城は中条に気があるみたいだ”
───本城景吾。友人とで伝で訊いたことはある。星谷学園付属高校の皇帝と呼ばれる人だ。勿論俺とは何も接点がない。でもハルちゃんが盗られたりでもしたら。今までの関係は何だった? 焦り始める俺はどうしようもない。小テストがいつの間にか終わり回収された。すると結城先生が眉をひそめ。
「おい。誰だ。こんな落書き書いた奴」
ガバッと起きて友介は冷や汗をかく。不味い。手紙がバレたか。正広が舌打ちしたら。
「今日の俺のパンツはイチゴブリーフだよ。やだあエッチ★もし触りたいならばイチゴパンツも制服にして下さい。以上」
誰だよ。こんなの描いたの。小テストの紙にイチゴパンツのブリーフが描かれていた。しかもイラスト付き。
「結城先生。俺です!」
「やはり深田。おまえか、おまえへの宣戦書を書いたるか? 正直者はバカを見るというが本当だな」
こそっと深田は結城先生を見てニヤニヤしている。深田は嫌がらせと悪戯を好む。俺の親友だがこれでは彼女出来ないぞ。すると怒った結城先生が教壇にたった。結城の立つ位置に正広が購買部で買ったバナナの皮で足を滑らそうと魂胆だ。すると結城先生は思いっきりバナナで滑った。くるくるになった。竜馬さんは顔に青筋が走ってる。するとどうやら。深田は席をたとうした瞬間。ズボンがベリベリと外れてトランクスの下半身パンツ一丁になった。椅子にペンキが塗ってあった。黒板に書いてあったあったのは”結城正敏の因縁の深田への復讐だ。ざまあみろ”と書いてあった。チャイムが鳴って昼休みになった。深田は下半身パンツ一丁になったのも恥じらいもせず。そのまま購買部へ焼きそばパンを買いにいった。
「深田ってやはり変わっているな」
クラスの男子たちが嬉々としている。あの結城先生を倒した勇者だと言っていた。竜馬さんは帰って来た深田にこう言った。
「正広、今日は昼飯食べたら、職員室に来い」
今日は屋上に弁当を食べに行こうと思っていたのに。深田が自爆した。親友としてどう接していけばいいかわからない。溜め息を吐いたら。目があった。
「今日は俺の建国記念日だ。深田ワールド・イズ・マイン」
「格好良いよ。深田!」
「おまえはすげえよ!」
本城景吾は黒髪の爽やかなイケメンと訊いたが。俺は深田とよくつるんでいるがいまの一件があり呼び出されている。確か本城はカリスマ性がある男だと訊いた。そして女子によくモテるらしい。
「ハルちゃん?」
「今日どうしても一緒にいたいんだ。午後集合だね。浴衣を着てくる」
可愛い。キスしたくなる。髪の毛の寝ぐせを直したらもっと可愛い。しかし、この太ももたまらんな。エロい。俺はエロ本とかには手を出してなかったが。正広のすすめで買ってみた。けど。一分持たなかった。こんな俺だって性経験は一応ある。だが遥じゃなければ。あれも勃たず、そんな恋愛なんてしたくない。もし遥に振られたら一生独身でいよう。そんな感じだ。正広のトランクスは英国柄だった。俺は教室で叔父が作ってくれた弁当を食べていた。すると高校三年生の桶川の兄貴が弁当を持参していた。
「よう。友介」
「こんにちは。翔さん」
翔さんは美形な部類で中性的である。そんなイケメンが何故女を作らないかは暗黙のルールである。桶川は自慢の豊かな栗毛を揺らし、遥と購買部まで買いに行っていたようだった。正広は見事に制服のスラックスに着替えていた。遥はお握りを買っていた。いつもと違う桶川は異質なん感じだった。
「桶川どうしたの?」
「ああ、あんたさっき渡り廊下で男子から爽やかなゲイボーイって言われていたよ。佐伯」
「あのね。俺はノンケでストレートです。単に女子が苦手なだけだよ」
「だってあんた女子に興味ないんでしょ?」
「……恋愛に興味がないからって勝手にゲイ扱いされても困る」
「枯れてるわね。あんた」
俺は髪を黒染めしている。高校一年生はたしか茶髪だった。失恋した慰めに黒にしたんだっけ。確かハルちゃんには男が居るとクラスメイトの噂で聞いていた。真相を調べて本当に彼氏が居るのか。聞きたいところだった。屋上に上がると、遥が居た。
「ハルちゃん。飯食おうぜ」
キョトンとした遥はすぐさま笑顔を見せた。
「うん」
フェンスから遠くの高校を見ている。しかし、あの太ももはたまらん。俺は大して頭もよくない。ただ言えるのは俺の家は結構な富豪だった。俺の父親は有名な学者で大学の助教授だった。医学部に入りたいと言った。友介は遥花学園付属高校に推薦入試で受かった。星谷学園付属高校は高等な学校だ。やはり国立の高校だからか。友介は友人にも先生にも恵まれていた。机に付して携帯を見ていると正広から卑猥な映像が届いた。友介は思う。消したいくらい恥ずかしい。友介は恋愛は不得手だし、このような友介には遥は振り向いてくれないだろう。
「今日ふたりきりだね」
遥は、にっこり微笑んだ。一緒にお昼ごはんを食べていた。
「ハルちゃんは今日俺以外の男とは食べないの?」
「友介くん以外の男性が苦手でして……。友介くんと深田くんはいい人だと思うけど男子が苦手なんだ」
「ああ、そうなんだ」
「今日の友介くんとの花火大会楽しみにしてるね。友介くんは
二人は遠くの砲塔を眺めていた。遥はふんわりとしている豊かな栗毛を揺らした。友介は思う。今日の夜に花火大会か。友介は今宵が楽しみだな、と思った。
日向に手を染めている。ふと、友介は剣道部の連中をしげしげと眺めた。確か、全国大会まで登りつめた強豪と訊いたことがある。ふと友介は本城と目が合った。本城景吾と主将の青年でカリスマ性があるとか訊いた。俺も時々参加する幽霊部員だが、本城と会うのは、はじめてだった。
「……本城ね」
「知り合い?」
「いや? 女子ファンが多いってよく聞く。全国大会まで剣道部を引っ張っているって有名だよね」
「けいちゃんは有名だよね」
「けいちゃん?」
「本城景吾くんとは幼なじみでよく昔は遊んでいたけど縁が切られてしまって」
「幼なじみなんだ。つーことはハルちゃんは昔交流が合ったんだね」
「本城くんは小学生の時、毎日リムジンで登校していたよ」
「……リ、リムジン?」
「あの、私より、本城くんのほうがいいの?」
友介は思う。今の言葉はなんだろうか。
「ごめん。焼きもちやいていたんだ。だって友介くんは優しいし」
嬉しい言葉だった。ただ言えるのは本城を程度が過ぎるほど怖がっている。だが、遥が本城を見る目は異性としてだった。友介には報いいる事はあるのだろうか。
「ハルちゃんはどんな奴が好き?」
「友介くんみたいな人。優しくて格好いくて男らしくて頼れる性格の人」
ドキッとしてしまった。不覚にも遥は男子のツボを抑えていた。フェンスを眺めている。俺は制服のスラックスの丈が短い、と足元を眺めていた。俺は高校で身長がかなり伸びたからだ。身長は中学生ころは百六十五センチだったがそれから高校では身長は十センチは伸びている。
「友介くんはどんなことが好きなんですか?」
「囲碁だよ。ハルちゃんは?」
「友介くんが趣味かな」
ここまで言われては困る。妙にいづらくなって、手が触れて、重ねると、後ろを振り返るとシャッター音が鳴った。
「古沢?」
「友介の彼女? ハハーン。もしかしてエッチまでいってるの? 怒らないでよ! 生憎俺は二人を見に来たわけじゃない。正広から伝言だよ。あら、噂の中条。俺の予想以上に可愛いのね」
「あのさ。剣道部の副将の千尋。本城ってどんな奴?」
「あ、景吾でしょ? 女子からかなりモテるね。サラサラの黒髪のイケメン君主の佐伯友介と比較される。だが、景吾は女遊びが激しい。でも友介は友達思いで後輩への面倒見もいい、だが、景吾は、はっきり一言で言うと女に関して酷い奴だな」
「金で女が買えるって言ったし、でも友介と比較しちゃいけないけどな。でも昔本城は初恋の女の子が忘れられないって言ってた。ワリーな。中条。ちょっと友介を借りるね」
黒髪の古沢はこう言っていた。
「それでもカリスマ性はあるけどよ。あれでは今年全国大会は無理だわな。友介」
「どういうこと?」
「おまえの女友達を食おうとしているんだ」
「え?」
「知らかなかったのか。話さないといけねーな。ま。要は景吾は練習の合間を折りぬって中条に会いに行っているらしい。そして友介と中条が離れるような策略を練っている。甘いマスクの反面かなり狡猾だから。気をつけろよ。株でも落としかねないからよ」
「株ってなんだよ?」
「……知らんかったんか。言っておくけど。本城の手下、花木十郎がおまえの法螺話を吹聴してる。そして中条遥を自分の掌中に入れるため」
「本題だけど、俺達はおまえが友人として好きだぜ? でも、泥沼の叶わない恋愛ごっこをしても辛くなるだけだ。医学部を志している、お前がよく知っているだろ。心臓の病気と二つの病気を持っている」
「ああ、なんとくなそうとは思ってた」
「もし中条を支えきれる強靭な精神力があれば別の話だよ? 辛い思いをするのは中条が死んで、それからこの世に残された友介だ。だから諦めてくれないか?」
「……」
「ただ付き合ってるうちはいいけどさ。お前が辛い思いをするのは見たくねぇからさ。別に俺は中条が嫌いではない。俺はそういう恋愛で失敗した過去があるからだよ」
「結村桜ちゃんか」
「そう。俺が高校一年生のときのような気持ちを友達の友介にさせたくないんだよ……。相手に死なれて終わった恋愛は辛いぜ? 立ち直るのも、自分から立ち上がっていくことも出来ない」
「……」
「思い出すと胸の奥が苦しくなる。想い出の場所に行けば。傷口をえぐられるような気持ちになる」
「……知ってるよ。俺はそれくらい」
「だったら!本当なんだったら。友達の関係でも縁を切って別れてくれ。そのほうがお前にとっても彼女のためにもなる。華の二十五歳で死んじまう女の子を……恋い焦がれて好きなったって辛いだけじゃねーか。俺は相手に死なれて終わった恋愛も、経験がある。忠告しておく。苦しいだけだぞ」
「……」
「俺が犠牲になるのは……たしかにそうだと思っている。金なんか関係ない。例え金が無くなっても」
ぎゅっと拳を握りしめた。
「ごめん。俺は時間になったから帰るな」
屋上での一件は終わった。するとハルちゃんは可愛らしい声で擦り寄ってきた。俺と古沢の話で二十分待っていた。
「ごめん。中条」
「……え?どうしたの?」
「いや、大丈夫だよ。俺は教室に帰ってるな」
これくらいでビビってるんじゃねーよと俺の心臓が言っている。ハルちゃんはふんわりした髪を触っていた。ハルちゃんが屋上で泣いているのも分かってる。俺は弱虫だった。
「佐伯くんも、私から離れていくの?」
「違う」
「……」
「俺自身の問題だよ。話していたのも、今日の花火のことだよ」
「本当に?嘘を吐いていないよね?」
「そんな訳ない。違うよ。だって俺とハルちゃんは友達だろ?」
「逃げちゃうの?」
「だから。違うよ。花火のことだよ」
「……うん。分かった。今日の夏祭りは楽しみしてるね」
泣き声だった。抱きしめたかった。もし今いつも通りに慰めたら俺とハルちゃんは優しい友達の関係に戻れない。俺は怖いのだろうか。チャイムが鳴った。
「じゃあ、教室に戻ろう」
「そっか、そうだね。疑ってしまってごめんね」
そのまま古沢の声がリフレインする。相容れぬ恋心。本城が来たら。俺はどうなってしまうんだろう。
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