丸山令さんの「そして おとぎ話が始まる」は、魔法の鏡を巡る試験という幻想的な舞台で、人間の価値観や策略が緻密に描かれた作品です。この物語の魅力は、ただ美しさや真実という普遍的なテーマを扱うだけやなく、その背後にある人間関係の機微や国同士の微妙な力学を織り込んでいるところにあります。
主人公である鏡の一人称視点で進む物語は、冷静な語り口ながら、どこか孤独や切なさを伴う情感があり、読者を独特の世界観へと引き込んでくれます。特に、宰相の冷徹な策略やヴァルディマーの孤高の錬金術師としての矜持が印象的で、それぞれのキャラクターが抱える苦悩や信念が胸に迫ります。
また、「おとぎ話が始まる」という一文は、まるで未来への静かな警告のようで、読後に深い余韻を残します。物語は単なる試験の結末で終わらず、読者にさまざまな問いを投げかけるんです。「美」とは何か、「真実」とは何か、そしてそれを扱う人間の責任とは何か。どれも深く考えさせられるテーマです。
文章は非常に洗練されていて読みやすく、ファンタジーでありながら哲学的な問いも織り交ぜられているため、幅広い読者層におすすめできます。「心に残るファンタジーを読みたい」「感動だけでなく考えさせられる物語が好き」という方には、ぜひ読んでいただきたい一作です!
丸山令さんの次回作にも大いに期待しながら、まずはこの物語の深みを存分に楽しんでみてください。ほんまにおすすめやで!
ユキナ(ほろ苦)☕